_VTuber革命_06

【考察】VTuberの歴史。概観してみた【三歩未知】

皆さんおはみちっすー
 三歩歩けば未知の世界、設定迷子の三歩未知です。

 今回は2月16日の生配信のテーマ「VTuberの歴史」のお話を、精査してまとめたnoteとなっています。
 全体の構成としては、①2018年の話、②2019年の話、③2017年末から現在までを通しての話、この3つに分けたVTuberの歴史の概観となります。
 ぜひ最後までお付き合いくださいなノシ

■2018年:VTuberの環境整備とプレイヤーの創出

プラットフォームとアバターツール

 VTuberの活動のためのプラットフォームが多く登場したのがこの年。
 IRIAMREALITYバーチャルキャストなど、VTuberやアバター配信者に特化したプラットフォームが登場した。
 また、ニコニコ動画OPENRECSHOWROOM17Liveなどのように、既存のプラットフォームにおける「バーチャル」カテゴリの新設といった動きも多く見られた。
 VTuberのスタートアップを支援するツールとして、VカツVRoidカスタムキャストなどや、2019年にはMakeAvatarも登場した。
 そのほか、VTuber活動を支援するサービスとして、「バーチャルYouTuberランキング」やVTuber番組表「VROS」、VTuber交流支援「indiVTubers」などが立ち上がった。

箱の創発

 にじさんじホロライブupd8.LIVEENTUMなどといった、箱的枠組みの創発が目立った。2019年、2020年と活動する中で、トラブルや事業撤退などもあったが、現在のVTuberシーンを盛り上げている中心はこのような”箱”のメンバーがメインだと思われる。
 2018年は主に企業ベースの箱が多く表れたが、2019年にはもちぷろ天目童心のりプロといった個人VTuberが中心に立って運営する箱も出現している。力のある個人が主体となり、スタートアップのみならず、その後も交流の続くコネクション的枠組みとしての”箱”的繋がりの運用が、VTuber界隈の新たなフェーズとなるかもしれない。

■2019年:アーティスティックな展開と海外進出

音楽とファッション

 特に音楽シーンの活躍が多く見られた。
 初ワンマンライブや1周年記念ライブといったイベントのほか、「TUBEOUT!」「VIRTUAFREAK」といったVTuberに特化した音楽イベントや、「DIVE XR FESTIVAL」というクロスオーバー型のミュージックフェスでの活躍などが見られた。
 こういったVTuberのライブシーンを作るプラットフォームには、現在は「cluster(クラスター株式会社)」「VARK(株式会社ActEvolve)」「SPWN(バルス株式会社)」「INSPIX(パルス株式会社)」が利用されている。
 また、VTuberに特化した音楽レーベルとしては、WFLEとキングレコードによる共同出資で設立した「株式会社RK Music」と、バーチャルゴリラ氏が社長を務める「VEEMusic」が活動しており、それぞれからVTuberのコンピレーションアルバム「IMAGINATIONシリーズ」と「VirtuaREALシリーズ」がリリースされている。

 ファッションシーンに関しては、アパレルブランド42(FORTYTWO)が2018年時点からVTuberとのコラボを何度も行っている。
 また、VTuberによるファッション&ライブイベント「FAVRIC」は一大イベントとして大きな話題となった。
 そのほか、Beyond the Moon(輝夜月)や電子女子(えのぐ)、EJI KOTOUGE(小峠英二)といった、バーチャル文化から創発されたブランドも出てきている。

海外展開

 海外展開も2019年から動きを見せ始めている。
 いちから株式会社は現在、海外VTuber事業として「VirtuaRealProject(中国)」「NIJISANJI ID(インドネシア)」「NIJISANJI IN(インド)」「NIJISANJI KR(韓国)」といったグループの展開を行っている。VirtuaReal Projectとにじさんじは、bilibiliにて公式コラボ番組「VRFM」を始動している。
 ホロライブは2019年1月から、bilibiliと正式契約を結んで中国展開を開始。同年の10月4日~6日に開催された「BILIBILI WORLD 2019 上海」では物販ブースを出展した。また、ホロライブ中国一期生として「夜霧」「Civia」「黒桃影」らが活動を始めている。
 Activ8は、キズナアイ生誕3周年記念イベント「A.I. Party! 2019 〜hello, how r u?〜」にて中国語版「キズナアイ」の “インストール” を発表した。こちらはプロデュースチーム「Project A.I.」の再編に伴い、現在は中国のバーチャルタレント事務所「哎咿多 (アイード) 」がプロデュース・サポートを行っている。

■2017年末~現在:そのほかの大きな流れ

企業の動向

 WFLEは様々な企業との協業や業務提携を実施しており、先のアバター社会を見据えたVTuber文化の定着に向けた活動に尽力している。
 ニトロプラスやFicty、アニプレックスらとのVTuberの共同プロデュース事業。キングレコードとの共同出資によるVTuber音楽レーベル「RK Music」の設立。バーチャルキャストやクラスターとのアバター社会に向けた連携。そしてKDDIとは5G時代の3次元キャラクター市場を見据えた戦略的提携を結んだ。また、自社開発のVTuber配信プラットフォーム「REALITY」の運用も行っている。
 BitStarもWFLEからVTuber事業の全面支援を受けており、アマリリス組は解散となってしまうが、一方で「わくわく!VTuberひろば」といったイベントの開催や、BitStar Akihabara LabによるVTuber特化ネットラジオ局「バーチャルFM」を開設するなど、現在もVTuber関連事業を展開している。
 プラットフォームにおいても、バーチャルキャストとSHOWROOMの連携や、クラスターはテレビ朝日とも業務提携をしており、VTuberは今後さらに活動の場が広がることが予想される。

テレビ進出

 VTuberのテレビ進出は2018年の中頃から拡大し始める。2018年4月には、キズナアイが「キズナアイのBEATスクランブル」、電脳少女シロが「サイキ道」をスタート。7月にはKMNZが「VIRTUAL BUZZ TALK!」を開始。10月にはAbemaTVにて「にじさんじのくじじゅうじ」がスタートした。
 2018年末と2019年始にはそれぞれ、12月に輝夜月の「LUNA TV」、1月に「バーチャルさんはみている」と、電脳少女シロが出演する「超人女子戦士 ガリベンガーV」が開始。
 2019年はさらに4月に、ときのそら・響木アオ・猿楽町双葉による「四月一日さ家の」と、キズナアイによる「月イチのてぇてぇTV」が放送を開始した。
 現在は「サイキ道」「超人女子戦士 ガリベンガーV」「てぇてぇTV」が放送を継続している。また、2020年4月より「四月一日さん家と」が放送開始予定である。

 VTuberのテレビ進出については、各テレビ局で次のように語られている。

■テレビ東京
 VTuberは立ち上がってしまえば通常TV局がかけている収録コストと比べて運用コストが低い。また、同局所属アナウンサーの相内優香/相内ユウカの事例を上げ、普段の「相内優香」とバーチャルの「相内ユウカ」とで、同一人物が多面性を持って活動できるというVTuberの可能性を示唆している。
 「四月一日さん家の」制作では、3DCG特有の技術的な制約があった半面、既存の制作ノウハウも活用できるチームとしての土壌が育まれたと話す。

■日本テレビ
 ”バーチャル空間でバーチャルタレントが活躍するバーチャルエンターテインメントが主流となる時代”が到来すると想定し、社内でノウハウの蓄積を行っている。VTuberが市民権を獲得するために、一般層にもリーチできるテレビの力は有効と語っている。
 VTuberのTV進出の障壁について、バルス社の「どこでもVTuber」のような技術の普及が今後の課題と捉えているようだ。

■テレビ朝日
 VTuberをTVに起用する際の注意点として、キャラクターの世界観を崩さずにどう番組に組み込むかが肝要で、番組の立ち上げには苦労したと語る。キャラクターの世界観とリアルの境界を整理しておかなければ、既存のVTuberファンに受け入れられないリスクがあるとしている。
 今後は、リアルイベントや動画配信事業の拡大、VR空間でのバーチャルイベントに挑戦するなど、VTuberが文化やビジネスとして定着するためにシーンの盛り上げに貢献したいと話している。

■フジテレビ
 VTuber事業は行っていないが、2012年にボーカロイドの派生でデジタルアナウンサーの立ち上げを経験しており、当時実現に至らなかったアナウンサーデジタル化構想について語った。深夜の生放送など過酷な現場を改善するというもので、バーチャル化によりメイクやや衣装などの負担を減らせる期待があるしている。
 展望として、「茨ひより」のような自治体VTuberのプロデュースがしたい。「テラスハウス」や「あいのり」のようなフォーマットをVTuberでやってみるのも面白いかもしれないと話した。

VRの進展

 まずデバイスについては、Oculus questの登場によりHMDのコードレス及びスタンドアローンが実現した。2021年に発売が予想されているPSVR2については、真偽は不明だが250$(およそ25,000円~29,800円)というリーク情報もあるという。デバイスのモバイル化や低価格化は、今後も進展があると予想される。
 VRコンテンツとしては、MyDearest株式会社からVRゲーム「東京クロノス」が登場してるほか、そのシリーズ作品として新作『ALTDEUS:Beyond Chronos』の制作が発表されている。また、VRアニメ『狼と香辛料VR』を手がけたSpicyTailsと、共同プロジェクト「AniVR Japan」を展開しており、VR市場の活性化に取り組んでいる。
 VRソーシャルとしては、HIKKYによる「バーチャルマーケット」が盛り上がりを見せている。2019年の9月21日~28日の7日間にわたって開催された「バーチャルマーケット3」では、クラウドファンディングでは目標金額2,000,000円のおよそ6.5倍となる12,510,039円が集まり、スポンサーには「セブン&アイ・ホールディングス」や「Panasonic」をはじめとした30社からの協賛が集った。
 また、VRアバター社会に向けた取り組みとして、並行する様々なVRコンテンツをシームレスに体験できるようにするために、VRMコンソーシアムによるVRMの開発とプロモーションや、バーチャルキャストによる「THE SEED ONLINE」といったプラットフォームの開発といった動きが見られる。

既存IPやTVタレントのバーチャル進出

 既存IP事業やTVタレントの方がバーチャルに進出してきている例もある。
 既存IPとしては「ハローキティ」や「ヤッターマン」、「シスタープリンセス」など。他にも様々なIPが既にVTuber化して活動している。TVタレントとしては特に大きな話題となったのが「バーチャルジャニーズ」の進出だ。SHOWROOMは株式会社ジェイ・ストームと資本業務提携を締結しており、今後の進展が予想される。
 もともと他方で人気を獲得しているコンテンツのバーチャルへの進出は、VRの技術的障壁の緩和が進むにつれて今後も進んで行くと思われる。
 また一方で、2020年5月の「Tokyo V Project」に向けた動きの中でつんく♂氏がVTuberへアプローチをかけたり、オンラインサロンを開設に際してVRやVTuberについて言及するなど、新たな気になる動きも見られている。

e-sportsの展開

 e-sportsシーンについては、CyberZが運営するOPENRECにおける「バーチャル」カテゴリの新設や、RAGEバーチャルYouTuberの開催など、展開は多数見られる。
 また、中国資本の配信プラットフォーム「Mildom」日本市場に参入を初めており、新たなゲーム配信サービスとして拡大が予想されている。
 しかし、海外と比較して、法的な問題などによる日本のe-sportsシーン全体の遅れがあるため、ひとまず将来性に期待したい分野。

■総評

 2018年は、Vtuberのスタートアップを活性化させた年だった。アバター制作ツールや配信プラットフォームの整備、そして各企業オーディションによる人材発掘。多くのVTuberが活動を始めることとなった。
 2019年の進展は主に音楽だった。これは、バーチャルとライブという文脈の発展が初音ミクの段階ですでに進んでおり、受け入れられる土壌と技術的なノウハウが積みあがっていたことが、早々に開拓が進んだ要因だと思われる。一方で音楽に並んでYouTubeで巨大なマーケットを築いているゲームについては、日本のゲームマーケットが海外に比べて遅れているため、社会全体での今後の進展に期待したいところである。
 新たなマーケット拡大については、まず海外進出への取り組みが進んでいる。既存VTuberが海外のプラットフォームで配信したり、海外のイベントに出演する展開や、海外で新たなメンバーグループを創出するといった2つの取り組みが見られている。
 もう一つの取り組みが、一般層への新規開拓である。最近のTVタレントがYouTuber活動を始める流れから、テレビ番組というステージでした共演しえなかったタレントらとのコラボレーションがYouTube上で増加するかもしれない。また、テレビ局自身がインターネットというプラットフォームに本腰を入れて進出するのではないかという見方もある。ともあれ、テレビ局はVTuberの可能性とその先のアバター社会を見据えているため、既存の強力なコンテンツプレーヤーらとのコラボレーションが展開されれば、リアルとバーチャルの垣根を越えて一般層にスケールすることが可能だろう。バーチャルとリアルの垣根を越えようとする取り組みには、にじさんじが新たな取り組みとして「SLEE」というリアルタレント事業を仕掛け始めている。「DIVE XR FESTIVAL」で既存IPやボーカロイドやVTuberが垣根を越えて共演したように、リアルという垣根も今後取り払われていくと思われる。
 予見するのは、来るアバター社会と、そこで活躍する我々VTuberという構図だ。アバター社会への足掛かりとなるプラットフォーム整備と、今活躍しているVTuberを支援する取り組みは、アバター社会が実現したときにそのままVTuberが優位なポジションを獲得するためだろう。そこに至るまでの課題はまだまだ多いが、それでもここまで進んできたのはその先に価値を見出しているからに他ならない。これからもVTuberとアバター社会の発展を期待しながら、私自身も面白い未来が作っていけるように考えていきたい。専らの課題は、継続していくことだと思う。


 今回の記事はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました!
 3POMICHI PROJECTでは、未知と未来に一歩を踏み出すきっかけになる情報発信をこれからもお届けしていきたいと思います。

 それではまた、次の散歩道で会いましょう。またね。

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