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この出逢いがもし運命だったのなら、それは偶然か必然か

不思議な出逢いをした。

毎朝決まった時間の電車に乗って通勤すると、
だいたい同じ顔ぶれになる中で、
気になる人ができた。
黒髪センター分けサラリーマン。年は同じくらい。
クールな雰囲気がちょっとだけタイプ。

この人に会うために、私は毎朝同じ電車に乗る。
別に話しかけようとかまでは思ってない。
朝、この人が見れたら今日も頑張れる。
その程度の推し活。

私が乗る2つ目の駅から乗ってきて、
同じ駅で一緒に降りる。改札を抜けると、
違う出口へ行ってしまうのだけれど
職場もかなり近いだろう。
向こうは私の存在に気づいているのか、
いないのか分からないくらいなのに
たまたま隣に座ってきたりしようものなら、
嬉しくて嬉しくて。これが恋なのか、と。
私の中で密かな楽しみになっていた。

そんな推し活が2ヶ月くらい続いたある日、
いつもより電車が混んでいて
ギリギリ座れた席のちょうど正面が
ひとつだけ空いている。
あ、今日もしあの人来たらここに座るかな?
来てくれたら嬉しいな、なんて思いながら待ってると
ちゃんと向かいに座ってくれるもんだから
思わず笑ってしまった。

そしたら、向こうも笑ってた。
だけど少しだけ気まずくて恥ずかしい。

ホームに着いた時
「さすがに…話しかけてもいいですか?」 
今でも忘れない、あの人の第一声。


この瞬間から世界は変わった。

舞い上がりそうな声を隠しながら返事をする。

まずは顔を見て笑ってしまったことを謝った。
それから、実は向こうも私のことが気になっていて
いつか話しかけようと思っていたということ、
私が観ていた動画をたまたま覗き込んでしまって
彼も偶然前の日同じ動画を観ていたことが
あったとか、改札まで歩きながら教えてくれた。

クールな見た目の割にお喋りさんで、
話すのは初めてのはずなのに
まるで昔から知り合いだったかのように
自然に話せる不思議な人。

LINEを交換することになり、登録しようとしたら
彼も私と同じ苗字だったことに驚いた。
そんな偶然があるのかと、
お互い免許証を見せ合い盛り上がった時は
ドキドキが止まらなかった。

“運命の人”を信じたくなる程の重なる偶然に
心臓が追いつけないまま、終わりが近づく。
出口で分かれるまでのいつもの何気ない3分間が
全く違う景色に色づく瞬間は
恐ろしく、美しかった。

今まで言えなかった「またね」が言える。
明日になれば「おはよう」も言える。

もう二度と、
出逢う前のふたりには戻れないだろう。

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