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白鉛筆
2021年5月2日 17:02
「君は一銭も支払わなくていい。代わりに、あの高校生から十万円巻き上げること」シノノメはそう言って、目線を斜め前、私にとっては斜め後ろのテーブルへと向けた。それとなく振り返ると、二人がけの席の一つに腰掛けた、制服姿の女学生が見える。長い黒髪にメガネをかけ、手にした文庫本に吸い寄せられるように目を向けていた。いかにも”文学少女”といった装いで、真面目で清楚な雰囲気は、およそこの大衆的なファース