〇〇と僕『お』~音楽と僕~
オギャーっと生まれて12年。
僕、中学1年生。
やっと右と左がわかるようになり、まだキャベツとレタスの違いがわからなかった頃、僕は音楽と出会った。
ある日父ちゃんがラジカセを持って帰宅。
「なにそれ?」
「ラジカセ。貰った。やる。」
「いいの?やったー!」
ってな具合で、ベッドと学習机とDr.スランプの漫画本しかなかった僕の部屋にラジカセがやってきた。
文明開化の鐘の音。
ゴォォーン。
ラジオ・CDに加え、カセットテープのデッキが2つある横長のやつ。
説明書はなし。
とりあえず、唯一持っていた河村隆一のCDをかけたり、河村隆一のCDをテープにダビングしたり、河村隆一のテープを複製したりして、ある程度使い方をマスター。
しかし、今のところラジカセが奏でたのは河村隆一。
そして、これからもラジカセが奏でるのは河村隆一。
「河村隆一だけを奏でるために、生まれた訳じゃあないんだよ。」
なんて涙ながらに訴えられても、CDなんて高価な物を買う金なんぞどこにもない。
こりゃあ困った。
いや、待てよ。
そうだ、ラジオがあるじゃない。
よし聞いてみようってことで、新聞のラジオ番組表を見ながらチューニング。
流れてきたのは、ルー大柴よろしく横文字を巧みに織り交ぜながらトークをするイカしたDJの声。
なんだか背筋にむず痒さを感じながらも、初めてのラジオにかぶりつく。
そして、イカしたトークも終わり、いよいよ曲の時間。
『おふすぷりんぐ』が何処の誰かは知らないが、とりあえず聞いてみましょ。
ついに河村隆一以外が流れるラジカセ。
おめでとう、ラジカセ。
ありがとう、隆一。
そんでイントロが流れ始めた瞬間、脳天に稲妻が直撃したような衝撃が。
ゴォォーン。
な、な、なんだこれ……。
こ、こ、この曲……、カッコ良い!
僕はブルブルっと正気を取り戻し、慌ててテープの録音ボタンをポチッ。
ガチャコンとテープが回り始めた。
赤いランプが点灯しているため、録音成功。
上書きされて消えてゆく河村隆一。
曲はあっという間にお終い。
初めての衝撃。脳みそを掻き回された感覚。
そして浮遊感。
こ、これが、ロックなのか……。
た、た、たまらねぇぜぇー!!
その日から僕はラジカセにかじりつき、ラジオから流れる曲を録音。
そんで、お気に入りだけを集めたテープを作り続けた。
この頃ハマったのはメロコアと呼ばれる音楽。
The Offspring、GREEN DAY、blink 182、NOFX、Unwritten Low、Hi-standard、SNAIL RAMP。
その後もラジカセにかじりつき、様々な音楽と出会った。
そして4年後、当時1番好きだった『SUM 41』というバンドのライブで眼鏡を破壊。
帰宅するやいなや、ひんね曲がった眼鏡を見て激怒する母ちゃん。
わかりかけていたキャベツとレタスの違いも再びわからなくなるほどのメガトンげんこつが脳天を直撃。
ゴォォーン!!!
冬の澄み切った空に鳴り響く音。
耳から迸る閃光。空気をも揺らす衝撃。
その音は文明開化の鐘よりも遥かに大きな音で鳴り響き、北海道から遠く離れた沖縄でも聞こえたとか聞こえなかったとか。
しかし、げんこつくらいで僕の音楽への熱が冷めることはなかった。
むしろぐんぐん加速。
ものすごい勢いで音楽にのめり込んでいった。
そしてその数年後、音楽が原因で母ちゃんの怒りが大爆発することを、僕はまだ知らない。
『The Offspring / Original Prankster』を聞きながら
FJALLRAVEN by 3NITY TOKYO 池守
『〇〇と僕』←過去の記事はこちらからお読みいただけます!是非!
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