音楽の歴史、いまさら勉強してる。

3LAのミーティングの中でおすすめされていた『ストリー・オブ・ロックンロール』のDVDを購入して少しずつ履修している。

1995年に制作された本作は「ロックファン必見!ロックが誕生した50年代から90年代までの ”ロック音楽の歴史” をまとめたドキュメンタリー。」と謳っており、90年代のまだ音楽産業が元気だった時代に制作されただけあり非常に豪華なゲストが登場して音楽を語りながら、その歴史を簡単にだが紐解いていく内容。


当時はこういったドキュメンタリーを普通のものとして受け止めていたが、今思うと本当にこういったことが実現できていたのが特殊な状況だったんだなぁと思う。いま現在音楽の歴史をこういった形でまとめようとしても、その予算をガッチリ取って、レコード会社の垣根を乗り越え、こうやって商品に落とし込むことはできないと思う。結果としてNetflixなどにその立ち位置を奪われているが、Netflixの音楽ドキュメンタリーの内容だってそれほど大きな文脈では語れない。

なにより、今ではもう亡くなってしまっている重要人物たちの肉声を記録しているという点でも大きい。し、いまの音楽シーン語ろうとすると細分化しているのでやっぱりメジャー視点で大きい文脈でまとめた資料は良い。
そしてこのDVDから完全に抜け落ちている箇所は、それぞれのジャンルを詳細に掘り下げた映像作品で履修すれば良い。

とにかくUSパンクからグランジ登場までの間のハードコアの歴史はおそらく意図的に抜け落ちているので合わせて「アメリカン・ハードコア」で補強しておく必要はある、みたいな感じ。
1995年以降がもし存在していたらグランジとRadioheadの接続とかどう捉えるかとか、インターネット以降細分化していくシーンを考えるとサブスク以降の話とか複雑に絡んでくるのだろう。

『ストリー・オブ・ロックンロール』特に気に入っているのはウッドストックの回(DVDの3巻)とパンクロックの回(DVDの5巻)で、ジャンルが好きならこれらを押さえた上で現代のシーンを思うといろいろなギャップと今でも通用する共通点に気づくことが出来る。

パンクの本質には政治もクソもなくて炎上狙いのハッタリしかなくてその意味性的なところはやはり本質ではないように思える。そして繰り返す歴史の中では音楽である以上、音のかっこよさによって人々の考え方や思想・宗教・人種などを超えていくことを考えると、いまの猫ミームすらその必然性を感じるところもある。


要するに、言語化されたメッセージはグローバルには伝わりにくい。
言語を超えていくのは猫ミーム的な「ちぴちぴちゃぱちゃぱ」なのかもしれない。

嘘です。そんな真面目に考えてません。
ただ「言語化されたもの、日本文脈に特化してしまったもの」はそのハードルを越えることは逆に難しくなってしまう。
日本のカルチャー界に評価されているアーティストのほとんどが海外では全然売れていないのはその問題が大きいと思う。
言語化されない音だけの気持ちよさやインパクトがその壁を簡単に乗り越える。
いいか悪いかは置いといて、ピコ太郎的な。


moreruのインタビューがとても良くて、彼らの語彙力の高さを感じることができる。というか、自分がインタビューでテキストやりとりした際にも、短い中で重要かつ核心をつくキーワードをきちんと繰り出すことのできるインタビュー力を確かに感じたものです。

このインタビューの一番良かったのは彼らが自分たちの立ち位置を自覚していること、届けるべき対象を明確にイメージしていること、そして現状のギャップ・課題も認識していることだった。
時に批判的にも世間に受け止められる彼らの行動は、しかしながらパンクの本質に近いところがある(大人はそれを認めようとはしないだろうが)

若者に届く前におっさんに届いてしまうという問題だけどおっさん避けの呪文としては「デジタルリリース」「深夜イベント」「長時間イベント」「簡単に読めないロゴ、受け取りにくい映像」などがあり、それらはmoreruには当てはまっている。

彼らがskramz的に受け止められてしまっている背景には3LAのせいもあるかもしれないけど、そんなジャンルに限定される存在ではないので今年くらいにフジロックにでるんじゃないか、とも思っている。

何が言いたいかというと、彼らの行動を記録映像で誰か撮っておいたほうがいいということ。

批評がmoreruやSPOILMANまで届かないのは、批評家がライブの現場にいなさすぎ問題かもしれない。moreruは最新作リリースのタイミングでついに発見されている感がある。SPOILMANはそれより更に文脈が無いがリスナーからちゃんと届いている感があるのが救いではある。いや、ライター頼み、権威頼みで活動するのには限界がある。

THA BLUEHERBのBOSSっさんも音楽ライターのいない街でやっているからリリックの中でも書いているけど、誰も書かないから自分が書いていくしか無いの精神。他力本願ではDIYは成立しない。

岡田斗司夫の「たどり着いた天国」と山田玲司の「最初から天国に生まれたらあとは失うしかない」という考え方の言語化がすごいと思ってて、後者の心象スケッチを見事に写しているのがmoreruで、彼らの全部ぶっ壊す感が未来を感じられない若者たちにとってある種の救いになっていることには説得力がある。
SPOILMANも持たざる者としての立ち位置がありその辺はまた次の機会に探りたい。

オルタナティブってなんなん、という話はあるけれど、THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT『光源』の映像は本当に全員観た方がいいと思う。
多感すぎる時期にみてしまうのも危険な気もするが、大きな文脈での音楽を学ぶのもいいが、生きる上でほんとうに大事なことはこちらの映像のほうだと確信しています。

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