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#70 深海生物研究博士Cedric(セドリック)

「あの…Cedricさんですか?
私、Oliviaに頼まれて…」

サッと近付いてCedricに声をかけると、
彼は私をじっと見て
不思議そうな表情になったかと思うと
ハッと閃いた表情に変わった。

「君、もしかしてM.ちゃん?
Oliviaから話は聞いていたよ。
やっぱりOliviaは来られなかったみたいだね。」

苦笑いしながら答えたCedricは
Oliviaにお似合いのモデルのようなスタイルで
深い青い瞳が印象的だった。

Oliviaが青いバラを選んだのは
きっとこの瞳からだろうな、と思った。


「そうなんです。今、街を出られないみたいで。
でも、あなたの誕生日が近いから
渡したいものがあるって。
こちら、Oliviaからです。」

私はOliviaから預かったものを渡した。

「ありがとう。
Oliviaは外出禁止の罰なはずなのに
こっちに来るような話をしていたから
まさかと思ってたんだけど
やっぱりお父さんが見張りを付けたんだね?」

「あ、そうそう!そうなんです。
半透明みたいなトンボが飛んできて…」

「そっか。まぁ、それで良かったと思う。
もちろんOliviaには会いたいが、
お父さんと…あのお母さん
僕が呼んだって言って恨まれると怖いからね…」

Cedricは怯えた表情で肩を震わせた。

「わかる気がします…」

Oliviaのお母さんは勿論好きだが
恨まれると怖いということは容易に想像できた。

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Cedricは私が座っていたベンチに座り
渡したOliviaからのプレゼントを開けた。

「おぉ、綺麗な青いバラ!
それと…カップケーキ。
これはお店のカップケーキでしょ?」

お店のカップケーキであることはわかっていたが
私はOliviaに口止めされていた。

「えっ?いやぁ…
Oliviaが作ったんじゃないかなぁ…」

「あはは。Oliviaにそう言うように
頼まれたんでしょ?
いや、大丈夫。
お店で食べたことはないけど
カウンターに並んでるのを見たことあるんだ。
クリームで飾りつけたのはOliviaっぽいけど。」

少し傾いたクリームの塗り方を見て
Cedricは笑ってそう言った。


「あ、わかってたんですね。さすがです。」

「ここに君を連れてこようとしたのも、
君と一緒なら街を出ても許されると
思っていたんだろうな。
ごめんね、付き合わせて。」

「あはは。ホントよくわかってらっしゃる!
でも、私は私でOliviaが色々教えてくれて
この世界を見せてくれて本当に助かってます。

あの街に初めて足を踏み入れたあの日、
Oliviaが声をかけてくれなかったら
私はほとんど何も知らないまま日常に戻って
よくわからないまま忘れていっていたかもしれない。

「そっか。彼女のいいところが
しっかり役に立ってるんだな、良かった。」

Cedricはどこか誇らしげな顔をしていた。


「おっと、すまないね…
そろそろ、研究室に戻らないといけない…
本当はこの街を案内してあげたかったんだけど。」

Cedricは立ち上がりながら残念そうに言った。

「いえいえ!
私もあんまり長くもいられないし、
また今度、Oliviaと来た時にお願いします!」

「そうだね。
まぁ、この街は
そんなに見るところもないんだけど。

ねぇ、Charlotte(シャーロット)
ちょっといい?」

そう言って、カウンターの女性を呼んだ。

女性は顔を上げてなに?と返事をした。

「確か、君の友達のお店がすぐそこにあったよね?
良かったら、案内してあげてくれない?」

「えぇ、もちろん、いいわよ。
どうせ誰も来やしないものね。」

女性は私の方へ笑いかけながら
カウンターから出てきた。

彼女の下半身はとても大きな尾びれだった。



これが深海生物研究博士Cedric(セドリック)
会った時のおはなし。
続きはまた次回に。


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