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ホテル・アイリスを抱える夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

東京都心に妖しい人が集まるホテルがあると聞きます。色んな部屋があって、その人に合わせた様々な遊びができるホテルらしいです。そして、その部屋を、他の人が覗いたり入ることもできるといいます。それは、そういうことらしいです。

その話を聞いて、いつも考えるのは「ホテル・アイリス」という小川洋子さんの小説です。実家のホテルで働く少女が、客として訪れていた老人とSMと屈折した愛を育んでいくお話です。

彼女は、素朴な暮らしをしていたはずなのに、その妖しい老人に惹かれ、どんどん痛めつけられたい自分に目覚めていくのです。全ては何ひとつ変わらない日常なのに、その本性だけありありと目覚めていくのです。

老人を愛してしまった故という考えもなくはないですが、私にとっては知らない自分を知っていく物語です。

東京都心のそのホテルに行こうと言われた時、私は抵抗しました。そんなホテルがあるとは何とも恐ろしいとすら思ったからです。誰かに見られながら、知らない人が私の体にキスを贈ることを想像すると、未だに鳥肌が立ちます。

でも、20代の私の体が求めなかった誰かの体温を、今は求めるようになったことを考えると、いつかはそれに目覚める日が来るのかもしれないと思うと、なんだか不思議な気分になります。

もちろん、それを知らずに一生を終えることになるかもしれません。でも、人はいつ何があるのか分かりません。それが何とも面白いとも思います。彼女にとってのあの悲しくも愛しい老人に会う日がいつか来るかもしれません。

私の「ホテル・アイリス」は、まだ始まっていない物語です。いつかその日が来るのは、怖いような愛しいような…。そんなモヤモヤ抱えながら今日は寝ることにします。おやすみなさい。

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