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草枕

私の『草枕』は、この世間普通にいふ小説とはまったく反対の意味で書いたのである。 唯一種の感じ――美しい感じが読者の頭に残りさへすればよい。 それ以外に何も特別な目的があるのではない。 さればこそ、プロツトも無ければ、事件の発展もない。

「不人情じゃありません、非人情な惚れ方をするんです」



絵描きの主人公「余」の自然と人事への態度を通し漱石の美しさを伝える事の専らを読む。書き出しが余りにも有名ですが、何処からでも読め、美しさの余韻だけを残し、漱石の云う、汽車の見える所=現実世界へ引きずりだされる最後の突然な疾走感が秀逸。

「嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ」
画だけでなく音も聴こえる。



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