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宮沢賢治の2つのお話 黒ぶどう・みじかい木ぺん

ここ最近は自然科学に関する絵本ばかりを読んでいましたが、今回は自分で選んだ絵本を紹介します。

私は、本を読むきっかけとなる背景として
・目的がある時
・人から勧められた時
・直感、何となく
主に上記3つを挙げるのですが、この絵本は何となくで選びました。
近頃は直感で生き過ぎた故に動物化してしまい、人間社会で大変な失敗をしたのですがやっぱり侮れないですね、直感。
本を選ぶ際、きちんとした目的がある時(何かについて知りたい、学びたい時)は殆ど失敗しないし、人から勧められた時もまあ面白いことが多い。
直感に従うと大コケする時もあるのですが、想像以上に当たりの時もあるから面白いんですよね。
まあ、宮沢賢治って言わずと知れた日本を代表する超有名童話作家なんで、間違いないと思うんですけどw直感と言いつつ保守的ですね。



本の紹介

タイトル:宮沢賢治の2つのお話 黒ぶどう・みじかい木ぺん
作:宮沢賢治
絵:浅野 薫
出版社:文芸社
2021年10月15日 発行

優しい色使いと柔らかい輪郭で描かれた絵に癒されました。

あらすじ

黒ぶどうの方は、家畜として飼われているっぽい仔牛と野生っぽい小狐が公爵の住むお屋敷に忍び込むお話。
みじかい木ぺんは、うだつの上がらなさそうな田舎坊主キッコが、大事にしていた鉛筆をなくしてしまって凹んでいたところに魔法の鉛筆を見知らぬおじいさんに与えられて人生が一転するお話。
どちらも短いストーリーで、両方合わせて10分くらいで読めるような内容です。
見開きの右側に文章、左側に挿絵が描かれていて、文章と照らし合わせて読めます。

感想

やっぱり宮沢賢治の独特の言い回し、表現は個性的で面白い。
凡小な自分には到底浮かんで来ないような比喩表現に、たかだが数十ページの絵本を読んで驚かされました。

具体的には、
煙突から出ている煙に関して「コルク抜きのような煙」と表現したり、
ぶどうの香りを「蜂蜜の匂い、そばの花の匂い」と表したり、
学校の教室を「水車小屋みたいな古臭い寒天のような」と描写したり…

古臭い寒天のような、って何…みたいな。
でも分かるかも…みたいな。そんな感覚を抱かせるのだから凄い。

時代を超えてもなお人々に愛される理由が分かるわ〜、と、そんなに分かってない人間が言う。
宮沢賢治といえば、「注文の多い料理店」「やまなし」「銀河鉄道の夜」が有名どころでしょうか。

子供時代、特に印象的だったのが、やまなしの有名な冒頭の文

『クラムボンはわらったよ。』

『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』

『クラムボンは跳はねてわらったよ。』

『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』

宮沢賢治作 やまなし

かぷかぷ笑うって何だろう。
でもなんか想像すると楽しい。きっと楽しそうに笑っているんだ、ってちゃんと伝わる。
それが不思議だし、彼の世界にたくさんの人が魅了される所以の一つだと思った。

黒ぶどうは、仔牛と小狐の対比が面白いです。
小狐の言う通りに後ろをついて歩きながらも気が進まないことを心の中で呟きながらマイペースでいる仔牛。
仔牛に指示して、淡々とお屋敷の中に進んでいきながらも仔牛を同行させないと本当は不安な小心者の狐。どちらもキャラが立っていて魅力的です。

読まないと伝わらない雰囲気なのですが、絵柄もストーリーも何処となく不気味で続きがどうなるか想像出来ないそわそわした心境で読み進めることができます。
短い木ぺんは、原稿がなくて未完の作品なのですがオチが想像できる内容です。
こちらの方が深く考えさせられる内容なのですが、ネタバレになってしまうので控えておきましょう。

宮沢賢治、もう少し読みたくなって来たから、青空文庫読み漁ろうかな。。。

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