見出し画像

アフター・コロナの社会哲学(6)-不確実性に対処する方法-

おさらい

前回、リスクと不確実性はそれぞれ独立しているものではなく、連続している(らしい)、という話をしました。さて、ここで話を一歩進めます。

不確実性に対処する方法は本当に、ないのか?

社会科学の通念(ガルブレイス)によると、リスクは、計量可能ゆえに対処が可能です。それに対して不確実性は、計量不可能ゆえに対処が不可能です。しかし、本当にそうでしょうか。不確実性に対処する方法は、ないのでしょうか。これを考えていきます。

不確実性をリスクに転化すれば対処可能になる

答えを先に言うと、不確実性をリスクに転化すればいい。リスクに転化すれば、対処可能になります。それでは具体的に、どうすれば、不確実性をリスクに転化できるでしょうか。

シナリオ・プランニング

経営学(経営戦略論)に、「シナリオ・プランニング」という技法があります。これは、見方によっては、不確実性をリスクに転化する方法であると解釈できます。このような解釈をする人はあまり見かけません。しかしこれの方法論をよくよく読んでみると、不確実性をリスクに転化する方法だということが、よくわかります。それはともあれ、その方法は次のとおりです。

その具体的方法

①4次元座標を書きます。②自分にとって不確実な要素を2つ取り上げます。③それぞれが「良い方向」に動く場合、「悪い方向」に動く場合の2方向を考えます。④すると、下図のとおり、シナリオが4つ描けます。

シナリオプランニング

シナリオ・プランニングの効用

こうしておけば、不確実な要素が起きた場合、前もって用意したシナリオどうりに、対処できます。言いかえると、行動できます。シナリオどうりに行動できるようにすること。これが、シナリオ・プランニングです。

前回、「人はなぜ行動できなくなるのか」についてお話ししました。その問題をクリアするための具体的な方法が、シナリオ・プランニングです。

ドイツの感染症対策チームの例

今回の新型コロナウイルス拡散について、ドイツの保健当局の対策が、評判を得ました。「まるで未来から、今回の事態を見通したようだ」と言われました。これはまさしく、シナリオ・プランニングの好例でしょう。ドイツの保健当局の場合は、おそらく、感染症対策として複数のシナリオを用意しておく。それらを時間の経過と現状に応じて組み合わせながら、今回の事態に対処したものと想定されます。

自分にとって不確実な事態をどうやって決めるか

今回の話をまとめると、次のとおりです。不確実性はリスクに転化することができます。そして、リスクに対しては人間は対処ができます。不確実性をリスクに転化する具体的な方法が、経営学のシナリオ・プランニングである。このような話をしてきました。

「それは自分で決めてください」⇒どうやって?

ところで、「自分にとって不確実な事態」を、どうやってピック・アップすればよいでしょうか。結論をいうと、「それを自分で決めていいところが、シナリオ・プランニングのいいところ」「だから、自分で決めてください」ということになります。しかしそれでは、循環論法です。具体的にどうしたらいいのか、まったく何の示唆も与えてくれません。そこで次回は、このことを考えてみたいと思います。


親愛なるあなた様へ あなた様のサポートを、ぜひ、お願い申し上げます。「スキ」や「サポート」は、大学院での研究の励みになります。研究成果は、論文や実務を通して、広く社会に還元したく存じます。「スキ」そしてサポートのほど、よろしくお願い申し上げます。三國雄峰 拝。