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後発医薬品使用促進の罪

私はあまりジェネリック医薬品=後発薬を使わないようにしている。
使わないように、だ。

理由は主にふたつ。

ひとつは、先発薬と後発薬では有効成分が同じでもその他の添加物や薬の製造工程は異なっており、有効性や安全性は確認されているとはいえ、それらによる効果の差は決してゼロではないこと。
よって、中には先発より評価の高い後発薬もある。そういうものは使う。

ふたつめ、これは本当は厚労省にもきちんと考えてほしいのだが、先発薬が売れなくなったら新薬開発する製薬メーカー、即ち創薬メーカーが日本から消えかねないと思うのだ。

新薬開発にはとんでもない時間と金がかかる。基礎研究で薬になる新規物質を探し、非臨床試験で効果や副作用を確認し、問題なさそうなら臨床試験(治験)に入る。臨床試験はフェーズⅢまで行い、その後申請承認を経て販売されるのが一般的な流れだ。ここまで最低でも10年程度かかる。
だから新薬は発売後一定期間(20〜25年)は特許に守られて、後発も出ないし薬価も高い。

しかし年数が経過すると段々薬価も下がって、じきに特許も切れる。それが売れる薬なら、待ってましたとばかりに後発薬がゾロゾロと出て来る(だから後発薬を「ゾロ」というらしい)。

その途端先発薬が売れなくなるなら、そりゃあ時間と金のかかる新薬開発なんかしないで売れるゾロだけ作るよね、ボランティアじゃないのだから。企業が利益を追求するのは当たり前のことだ。

海外メーカーが開発すればいいと思う人もいるかもしれないが、薬の効き方も罹りやすい病気さえも人種差や民族差がある。海外で治験が通っている薬でも、日本で出すには日本国内でまた治験を行う必要がある。
国内に新薬開発する企業がなくなるというのは大ごとなのだ。

国は医療費抑制に躍起になって後発薬を推しまくっているが、本当にそれでいいのだろうか。

また欧米諸国と比較して、日本は臨床試験に至るまでのハードルが高いという。それだけ安全性に配慮されているともいえるが、新薬の開発競争には遅れを取ることにもなる。

事実、新型コロナのワクチン開発でも、日本は後手を引いている。製薬メーカーは数多あるが創薬メーカーは少なく、しかもワクチン開発にすぐさま取り掛かれるような体制が整った、もしくは整えられる経営体力を持った企業は限られるのだ。

これを読んでいる方は、外資系メーカーと合併している製薬会社の多さに気付いているだろうか。それだけ日本の創薬が出来る製薬会社は弱っているのである。

医薬品の開発を海外に任せることは、食料自給率を下げることに等しい危険を孕んでいる。実際、今も原薬の輸入が滞り、製造・出荷の目処が立たなくなっている薬が存在する。先発薬も後発薬も、原薬の多くは中国からの輸入に頼っているのが現状だ。

個々人がそれぞれの事情に応じて、後発薬を選択する自由はある。が、国がそれを全面的に推進するのは、結果的に日本の医療を危うくすることに他ならない気がしている。

後発メーカーを優遇するよりも原薬メーカーを優遇した方が、国益に適うのではなかろうか(今、国内に原薬メーカーが存在するのかは知らないが)。
少なくとも、医療費削減のために後発メーカーを優遇することで創薬メーカーを追い込むことは、国益に反する施策だと私は思っている。

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