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みんなでヴァン・ヘイレンを聴こうの回

2020年10月6日、ギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレン(以下、エディ)がお亡くなりになりました。


エディは兄のアレックス・ヴァン・ヘイレンと結成したバンド「ヴァン・ヘイレン」のメンバーとして活動し、ロック界に数々の名曲を残してきました。
また、彼の素晴らしいギター・プレイは、世代や国境を超えて数多くのギタリストに多大な影響を与えてきました。

ここに、ご冥福をお祈りします。


まだ65歳だったということで、早すぎる別れに悲しむ音楽ファンの方々も多いことでしょう。
私からすると、ロックを聴きはじめた頃にはすでにエディは「伝説のギタリスト」でしたので、亡くなったと聞いた時には「あぁ、一つの伝説が幕を下ろしたのか……」という喪失感のようなものを覚えました。

いま私にできることといえば、彼がいかに素晴らしいミュージシャンであったかをより多くの人に伝えることだと思います。
特に、ヴァン・ヘイレンが音楽チャートでブイブイ言わせていた時代を知らない世代に、「今聴いてもめちゃくちゃかっこいいよ!」と少しでも彼の音楽を広めることができればなぁと思っています(といっても、アイドルヲタの弟や古参K-POPファンの嫁さんへの啓蒙を試みては疎まれる今日この頃ですが笑)。

そこで、本日はエディ追悼企画、「ヴァン・ヘイレンのここが凄い!」をお届けしたいと思います。
気合が入っていつもより長くなってしまうかもしれませんが、正直私の文章は流し読みで構いませんので(笑)、リンクの動画で彼の素晴らしい演奏にたくさん触れていただければと思います。


①ヴァン・ヘイレンのここが凄い!〜ライトハンド奏法!〜
エディのギター・プレイを語る上で欠かせないのが、「ライトハンド奏法」です。
海外での名称は「タッピング」(スマホの“タップ“と同じです)だそうで、私の周りのギタリストもみんな「タッピング」と言っていましたが、個人的にこういうちょいダサな和製英語って結構好きなんですよね。
なので、ここでは敢えて「ライトハンド奏法」と書きます(笑)。

通常ギターを弾く際は、「左手で弦を押さえ、右手で弦を弾く」という動作をするわけですが、ライトハンド奏法は右手でも弦を押さえる(正確には、左手と右手で弦を叩くようにして音を出す)ということをします。
活字で説明するのもあれなので、こちらの動画をご覧ください。

より若かりし日


この奏法がエディの代名詞なのです!
私の親父はヴァン・ヘイレンよりも少し前のロック世代なのですが、ヴァン・ヘイレンを初めて聴いた時は単純に「どうやって音出してるんや!?」となったそうです(笑)。
当時としてはどうやって弾いているのか分からないレベルの衝撃的な演奏だったんですね。

この技法を巧みに使いこなすことによって、エディはロック・ギターの演奏の可能性を大幅に広げました。
それが、エディが「伝説のギタリスト」たる最大の理由です。

極めていくとこんなこともできるように。



エディの演奏にはあのマイケル・ジャクソンも惚れ込み、自身の曲のギター・ソロを任せるほどでした。
それが名曲 “Beat It“ です。


ギター・ソロ以外の部分でギターを弾いているのはスティーヴ・ルカサーというこれまた素晴らしいギタリストですが、エディのソロが強烈すぎてそれ以外の部分のギターの音を改めて調整する必要があったみたいなことをインタビューか何かで話していました(笑)。
それくらい圧倒的な存在感を放つギタリストだったということでしょう。

ちなみに、一説によるのこの演奏はノーギャラで引き受けたらしいです(そこも男前かよ……)。

2人が共演してる凄く古い映像も見つけました。



②ヴァン・ヘイレンのここが凄い!〜ワクワクするイントロ!〜
ヴァン・ヘイレンの曲の特徴として、ワクワクするイントロが挙げられると思います。

例えば、ヴァン・ヘイレンの曲で一番認知度が高いであろうこの曲なんか、イントロでもう心掴まれてしまいますよね。



このイントロのキーボードを弾いているのもエディです(多才!)。

また、日本でも何かのCMに使われていたこの曲のイントロも、これから何かが始まりそうな予感を感じさせる名イントロです。


さらにさらに、個人的にヴァン・ヘイレン初体験だったこの曲も、初めて聴いて5秒でお気に入りリストに入れました(PVの陽気なワイヤー・アクションにも色んな意味で心躍ります笑)。


極めて個人的な意見で恐縮ですが、ハードロックやヘヴィメタルはイントロ命だと考えていて、イントロでグッと心掴まれなかった曲は1曲通して聴いてもピンと来ないことが多いです。

その点、ヴァン・ヘイレンはイントロからワクワクさせてくれる曲が多く、お手本のような作曲なのではないかと思います。
商業的に成功して多くのファンを獲得できたことも納得です。


③ヴァン・ヘイレンのここが凄い!〜カバー曲のアレンジセンス〜
エディのギタープレイの凄いところとして、カバー曲でのアレンジ力も挙げられると思います。
ヴァン・ヘイレンというバンドはカバー曲もたくさん演奏していて、恐らく皆さんが聴いたことのあるであろうこんな曲も演奏しています。


ハードロックやヘヴィメタルのバンドが昔の曲のカバーをする時にあるあるなのが、最新テクニックを詰め込みすぎて原曲の良さをブッ壊してしまうことなんですよね(笑)。

その点、エディは革新的テクニックのパイオニアでありながら、そのテクニックを原曲の音楽的調和の中にうまく溶け込ませるアレンジ力も大変優れていたように思います。
テクニックどうのこうの以前に、音楽家としての才能が半端じゃないです。

ジャズスタンダードもお手の物。


実は、そもそもヴァン・ヘイレンというバンドはカバー曲でデビューしているのですが(下記)、その頃からそういったアレンジセンスは抜群に光っています。


この曲はキンクスというバンドが1964年にリリースして大ヒットしたロックの名曲ですが、原曲の初期衝動はそのままに、ギターソロでは思いっきりテクニカルな技を披露しています。


ちなみに、デビュー曲にキンクスの曲を持ってくるというのもちょっと面白いんです。

というのも、ヴァン・ヘイレンはエディとアレックスという兄弟を中心に結成したバンドですが、キンクスもレイとデイヴという兄弟を中心に結成したバンドなんですよね。

なんだか、もちろん原曲への多大なリスペクトがありつつですが、「次の兄弟バンドは俺らだぜ」と世代交代を宣言しているような感じがします(笑)。

また、ヴァン・ヘイレンの1stアルバムでは、ライトハンド奏法を散々披露して当時のロックファンに衝撃を与えた“Eruption“(①でご紹介した曲)の次にこの曲が流れるんです。

ここも面白くて、“Eruption“でそれまで聴き馴染みのないテクニックに直面した当時のロックファンは、衝撃とともに「今まで聴いてきたものと違う!」という困惑も覚えたと思うんです。

そこを見越してか、その後に往年のロックの名曲“You Really Got Me“を持ってくることで、
「びっくりしただろ?でも安心してくれ!俺たちはみんなの大好きなロックの延長線上にいるんだぜ」
と言っているような気がするんですよね。

この辺りのセンスによって、当時のロックファンに「上辺のテクニックだけじゃない」ということを認めさせていったんじゃないかなと思います。


以上、「ヴァン・ヘイレンのここが凄い!」でした。
もっともっと書きたいことは沢山あったのですが、とにかくこの記事をきっかけに色んな人にヴァン・ヘイレンを知ってもらい、みんなで彼を追悼できたらと思います。