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2020.5.7 地方の成功モデルは4つしかない。~リクルートの人材育成の仕組みで地方創生しようとして失敗した話~

おはようございます。佐久間一己です。
このコロナ禍で大きくストレスを感じ、なかなか動けなくなっていましたが、1つだけ光明がありました。
「元々失敗していたが、自分にも周りにもバレていなかったこと」を気づけたことです。
その内容を明らかにして、次に進んでいきたいと思います。

ぼくが描く夢の世界と、成功の定義について

 ぼくの夢は「生まれた環境や地域に左右されず、人の可能性を発揮できる世界をつくる」ことです。
福井県小浜市に生まれた僕は、高校まで地方の閉塞感や将来の選択肢の少なさに絶望していましたが、京都の大学に行って同級生たちの夢の自由さに衝撃を受け、本当に救われた気分になりました。お笑い芸人になったゴンや弁護士になったじゅんやを特に思い浮かべます。
 ここで、地方に生まれて、仮に地方就職のまま、または散髪屋の修行だけで人生を終えていたら、数個の選択肢の中から職業を選んでいて、大学就職活動時の数百個数千個の職業イメージの中から進路を選ぶということは出来ていなかったと思います。これは、職業差別の意図ではなく、「数多くの中から、自分の好きなことを見つけて、人生の中で取り組めるとよい」という話で、例えば逆に、仕事は適当にお金を稼いでおいて趣味・特技に没頭する世界もとても素晴らしいものだと思っています。その仕事・趣味・特技について、いかに多くの選択肢を体験し、なるべく自分の好きな世界を作り上げられるかという話です。
 次に、ぼくはリクルートに就職し、夜中まで働いたり、自分の能力の低さに悩まされたり、器の小ささに苦しんだりしながら、入社当初からは考えられない成長をさせてもらい、役職を預かり、高い年収をもらえるようになりました。その際に、こんな能力の低い人間が、管理職まで育てられるリクルートのシステムは心底凄いなと思って、リクルートの育成システムを地方の環境に落とし込めば、もっと地方で働く人の可能性を増やせるのではと思ったのです。地方の可能性に関しては、例えば僕は最初東京の町田で働いていて、次に神戸三宮で仕事をして、姫路加古川明石に移りましたが、同じ飲食店のオーナー様でも町田神戸のオーナーの知っている情報やインターネット広告に対する理解度と、姫路加古川明石での情報量・理解度では大きな差がありました。無料で転がっているネット情報でさえです。それは同業者の仲間から話を聞くことがなかったり、同業他社との競争のなかで新しい事を取り入れて勝っていく、という風土がなかったりするためです。使えるツールがたくさんあるのに「もったいない」という気持ちに、共感してもらえると幸いです。
  また人のキャリアには、残酷ながら不可逆性があります。おおまかな方向として、200人までのマネジメントを経験した人の20人のマネジメントの理解度に対し、20人のマネジメント経験しかない人がいきなり200人のマネジメントの仕組みが理解できる割合は少ないという事です。もっと直接的に言えば、同じ職種(例えば営業)に対して、年収2000万の営業の仕事を出来ていた人は年収500万で地方で営業しようという選択はできますが、年収500万の人が年収2000万の仕事を選択しようと思っても難易度が高いのです。都会→地方に対する矢印は大きくても、地方→都会への矢印は大学入学時と新卒入社時以外ではとても小さいというのが現実なのです。
 これは、世界の状況でも同じことが言えると思います。先進国から開発途上国への選択は勇気や興味さえあれば行けますが、開発途上国から先進国への移動の流れはとても大きな努力をしないといけないことは想像できると思います。
 まとめると、ぼくの夢は、「生まれた環境や地域に左右されず、人の可能性を発揮できる世界をつくる」であり、それはつまり、「移動の不可逆性を極端に減らしたい」ということです。ここでいう成功の定義とは、「地方や開発途上国において、個人・企業に、スキルや資産両面での資本が充分に身について、どこで生まれ育とうが選択肢を増やし自由に生きられること」であります。

リクルートの人材育成の仕組みで地方創生しようとして失敗した話

 リクルートの人材育成の仕組みはとても素晴らしく、小浜に生まれ、高卒の両親に育ててもらった僕が28歳でマネージャーにまでならせてもらえました。偉人の「昔から凄かった」なんていうのはほとんど嘘だと思っていて、本当に奇跡の連続で良い環境に居させてもらえて、たくさんの叱咤激励をうけ、ゲタをはかせてもらって、役職や高年収を頂いていたと思います。京都の大学に行かせてもらったことや、大モメして就職をさせてもらったことは大変ありがたいと思っています。
 話を戻すと、リクルートにおいて管理職になり、約30人の部下を持ち、その90%が契約社員・派遣社員の中途採用の中で、リクルートのシステムで育成し、正社員登用したり、輝かしい転職をしてくれたりしました。リクルートの地方営業所は、ピカピカの一流大学新卒はほとんどおらず、地元で生きてその中で営業バリバリ頑張りたいという人たちを採用・育成して成り立っています。その中でバンバンと才能が花開く人がいて、約3年で契約終了して、次から次へと新人を採用し、業績を上げ続けるリクルートなので、いかに育成システムが凄いか、ということがわかると思います。
 僕が地元の小浜市に持ち帰った、ビジネスのお作法でいうと、タスク管理シートの見える化とか、KPI管理とか、無料インターネットツールの運用徹底とか、営業のPDCAまわすとか、一般的なものばかりですが、特に組織づくりの人材育成のポイントはリクルートが異彩を放っていると思い4つの仕組みを地方の事業者に落とし込めないか模索することにしました。

 1、ビジョン・ミッション
 2、評価基準
 3、給与テーブル
 4、退職金制度による人材流動性の確保

 「ビジョン・ミッション」については、目指す方向を共通の言葉にして自律して仕事の進めてもらう上での方向を示したり通り道を示すものです。
 「評価基準」については、半期毎に自分の何が評価され、給与や賞与に反映されるのか、何を達成すると次の役職と昇給が約束されるか、また自分が何に取り組みたいか決め上司からの支援を受けるのか、明確にするものです。
 「給与テーブル」については、上記の評価基準や昇進の基準の中で、従業員に求めているスキルと、それに伴う報酬が明示されていることで、何を目指したり身に着けたりすればよいのかわかりやすくするものです。
 「退職金制度による人材流動性の確保」については、早期退職金を約30歳ごろから設けることで、早期にポストをあけ、若い人材がチャレンジする環境を確保し、可処分所得が多かったりライフイベントの多いF1M1層のターゲットに対して、同世代かつ最新のテクノロジーに強い若い人材でのビジネスモデルを構築し続ける仕組みのことです。
 これらの仕組みを、企業様にプレゼンしたり、導入に取り組んだりするなかで、もちろん良い結果ばかりが出ているのですが、前章における成功「個人のキャリア選択の不可逆性が解消される状態、スキル・資本が都会に劣らず自由に選択できる状態」には、とても到達スピードが遅いことにぶつかりました。
 その原因は、
 ①高利益率のビジネスモデル(人材投資予算がある)
 ②企業や市場の成長性を見越して人材投資を積極的に行える
 という2点がリクルートにあって、地方の企業には乏しいからでした。凄く当たり前のことなのですが、3年前の自分には、どれだけ企業の利益率が重要かを理解できていませんでした。
 高利益率のビジネスモデルについては、中間市場が大きく影響すると考えています。中間市場は、約20~30万人以上の商圏がないと生まれづらく、商圏人口に比例して指数関数的に伸びていくものです。例えば、都会では人材紹介というビジネスが流行っており、優秀な人材を事前に面接してくれており、自社の求人に対して紹介してくれ、採用できたら年収の約30~35%(年収500万なら、報酬150万円)という世界です。地方の方は、一人の人間を紹介して採用されたら約150万入ってくる世界を想像してください。考えられないと思います。これが、中間市場が沢山生まれている都会の仕組みになります。もちろん、1件の仕事の単価が上がり利益があがれば、例えば接待で数十万円のレストランや夜の店が流行り、その場で着るブランドの洋服が売れ、お金はまわっていきます。中間市場が生まれる人口規模がとても大事で、すると高利益率のビジネスが生まれ、商品の原価は地方と大きく変わらないため「人」の部分に、他社との差別化要因が生まれ、「人材投資」「良い人材の採用」に予算が動いていきます。そこで育った人材は、多大な勉強機会や経験の場が増え、スキル・知識・教養・経験を、企業から受けとる形になります。
 企業や市場の成長性を見越している点については、もちろん地方でも成長している分野や企業があり、その割合の問題です。前述のとおり、人口規模と中間市場が大きい都会では、必要となるサービスが多く、動いているお金も大きいため、たくさんの成長ストーリーを描くことができます。もちろんそこにはライバルが多く、同じことを考えている人が何百人もいて、競争が激しいため、実際に成長できるかどうかは、その人の努力・運次第だと言えます。
 そのうえで、地方で成功(=スキル・資本が都会に劣らず自由に選択できる状態)を作るためには、どう戦っていけばよいのでしょうか。

地方の成功モデルは4つしかない

 前章の失敗を鑑み、今のところ4つの成功モデルしかないと考えました。ここでいう成功は、何度も繰り返しになりますが、「スキル・資本の獲得によるキャリア選択の自由」のことです。各個人の人生の成功の定義は、人間全員が自分の好きに決めてよいと思います。
 特に、このモデルは、資本の獲得のモデルを書いていて、
資本の獲得ができる→
高付加価値サービスにおける人材の重要性が高まる→
人材投資にお金がまわる→
地方の人材のスキル・経験の資本が高まりキャリア選択の自由度が高まる
、というロジックで描いています。

① 原価率30%以下でつくれるヒット商品を開発してD2C(メーカー直売)で売る
② 都会の富裕層、インバウンドをターゲットした高単価のリゾート観光
③ インターネットサービス拠点を置き世界中で売る(この中にYouTuberなどインフルエンサービジネスを含む)
④ 低コスト高パフォーマンスの田舎暮らし路線

 ①のメーカーの直売路線は、豊かな資源や文化、低コストの土地などを活かした、地方産品の高利益率路線。商社の中間マージンを、インターネットを使いなるべく利益に変える。しかし、提携事業者の数やインフルエンサーの活用、フラッグシップ店舗など、結局都会での一部広告コストをうまく運用する必要が出てくると思います。
 ②の観光産業は、すでに各地方が伸ばしており競争が激化した上に、このコロナショックによって市場が大きく停滞してしまいました。しかし長期的なマクロ視点でみると、富の再分配(富裕層から田舎の貧困地域にお金をまわしていく仕組み)の側面が強い観光産業は、引き続き地方の大事な生きる道だと思います。四国の瀬戸内青凪リトリートさんなんかは、まさしくその典型だと思います。(とはいえ、松山から近い商圏ですが)
 ③のインターネットサービス。これは究極、地方の商圏を相手にせず、あくまで世界からお金を獲得することで富をなしていて、住環境や生活コストによってのみ、地方の必要性が出てくるものです。より安くて便利な、例えば東南アジアの国が出てきたり、他の地方自治体が出てくると、とって代わられやすい価値となります。インフルエンサーが、その土地の特異性をもって、フォロワーを獲得していると、地方との親和性が出てきますが、非常に難しいテーマだと思います。
 ④低コスト高パフォーマンスの田舎暮らし。これは、実は、地方住民のほとんどが獲得している価値で、つまり、僕の描いていた成功の定義をやめて、全世界と比較したスキル・資本の獲得度合いを気にせずに、人生を楽しくいきていこうというものです。人口減の社会、おそらく仕事を選ばなければ、人間が食うだけの仕事と給料はもらえるので、その中で生活コストが低く住環境が豊かな地方で生きていこうという考え方です。

さいごに

 上記の4つの成功モデルの中で、④はすでに獲得している価値で、あとは①②③のどれかにこだわって、ぼくの夢である「生まれた環境や地域に左右されず、人の可能性を発揮できる世界をつくる」「移動の不可逆性を極端に減らしたい」を目指し、「地方や開発途上国において、個人・企業に、スキルや資産両面での資本が充分に身について、どこで生まれ育とうが選択肢を増やし自由に生きられること」という成功にこだわるかどうかです。
 今のところ②で戦っていますが、①③も視野にいれなければいけないかもしれません。
 地方で仕事をしていた30歳がなんの躊躇もなく東京の中途採用に合格し、開発途上国の40歳マネージャーが世界各地のヘッドハンティングを受けるような、「地方や開発途上国の環境でいても、人材投資にお金がまわり、キャリアの自由度が高い世界」を目指して、もう少し頭をひねって頑張ってみたいなと思います。

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