[創作1000ピース]15,狂犬彼女を飼い慣らす僕(3)(ショートショート)
休日の朝。
僕は出勤する時と変わらない時間に起き、のんびりと味噌汁を作る。
普段、キッチンは彼女の居場所だけど、早起きした朝は間借りしても許される。
昆布と鰹。水から火をかけ、沸騰したら追い鰹を入れる。より香りが強くなり、部屋中に広がった。
「……はよ」
味噌汁が完成すると、匂いにつられて彼女が起きてきた。あくびをしながら頭をかいている。
無言でダイニングテーブルに腰掛けた彼女は寝ぼけ眼のまま、じっと僕の顔を見た。食事を出せと無言の圧を放っている。
「はいはい。ご飯だよね。わかってますよ」
彼女が怒り出す前に手際良く配膳していく。ご飯と味噌汁、焼き鮭、甘い卵焼き、漬物に納豆、昨日の残り物の副菜を順に並べた。
これさえあれば彼女は満足だろう。主菜はこだわりの大辛塩鮭だ。
「どうぞ召し上がれ」
彼女は味噌汁を睨みつけまずはひとくち。
「これ、昨日の昆布と鰹使った?」
味噌汁の出汁は彼女が佃煮にしようと取っておいた一番出汁の出がらしだ。
「そう。二番出汁だよ」
「今度は佃煮にしたいから取っておいて」
また味噌汁に口をつけ、ずるずるとすすり続けた。絶対に美味しいとは口にしないが気に入ったみたいだ。
「おかわり」
「……はいはい」
僕はほくそ笑みながらお椀を受け取る。
「口に合ったみたいで良かったよ」
今朝の彼女の様子は二番出汁のようにまろやかだった。
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続きものです。前回のお話はこちら。
*** 創作1000ピース ***
たくさん書いて書く練習をするためにまずは1000の物語を書く目標を立てました。形式は問わず、質も問わず、とにかく書いて書いて、自信と力をつけるための取り組みです。
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