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包括的並行世界の真実【短編集:創作1000ピース,56】

【はじめに】
これはオリジナル短編小説です。創作1000ピース 第56作品目。

 神聖なる領邦国家の皇帝ポールは臣下の儀礼を拒否した公爵を斬首に処す。

 楯突く敵は居なくなったと満足する皇帝ポールの背後に隣国の絶対君主ルイが銃を構えている。
 ルイは今か今かとポールの命を狙っている。皇帝の権力がこれ以上大きくなるのは厄介で早く排除したいと考えている。

 絶対君主ルイの背後には暴徒化した民衆が押し寄せている。すでに守備兵は皆殺し。民衆はギロチンで王を処刑するつもりだ。
 民は重税によりパンも食べられず、空腹で命を脅かされる日々を過ごしていたのだ。

 神に祈る民衆の周囲には死神がいて、飢えで力尽きた人間を死の世界へと連れていく。
 信者の祈りは神には届くが、神はそれを聞いてやるだけで何もしない。天にいる神はそっと微笑むだけだった。

 死の世界では死神がチェスをしながら、今日死ぬ人間を無作為に選んでいく。

 死神のチェスを天から見ていた神はときどきゲームの邪魔をして、死ぬはずだった人間を生き長らせたりする。
 だがそれらも気まぐれで、王も貧しい民も聖職者も学者も、等しく死神のチェスの盤上にある。生きるか死ぬかは神と死神の采配次第なのだ。

 神と死神が棲む領域の外側にはさらに人智を超越した空間が広がっている。宇宙という空間だ。
 宇宙はいくつもあり、水面に浮かぶ気泡のように大小様々な形をなしている。

 人間と神と死神を包括する宇宙には今、消滅の危機が訪れようとしていた。他の宇宙とぶつかって消滅する運命がやってきたのだ。仕方がない。これは宇宙の摂理だ。この瞬間も宇宙が生まれ、死んでいく。

 宇宙の摂理で地球が滅ぶとき、地上では火山噴火や地震や津波など大災害が連鎖する。惑星レベルでは隕石衝突や軌道の捻れによる惑星同士の衝突や恒星に飲み込まれる終末を迎える。

 地球が消滅し、生き物は死に絶えた。
 一方で宇宙は泡が消えるようにむなしく消滅し、そこにいた神と死神は人間のくしゃみで破裂するシャボン玉のように、一瞬で消し飛んだ。

 そして、

 ここまでの物語の連鎖はカフェで読書する我々の娯楽であったり、映画で上映される映画の断片に過ぎない。

 誰かの人生、壮大な歴史の物語、神の存在、死後の世界、それらを包括する宇宙と言う名の空間。

 小さいものも大きなものもすべて、人間が過去にしてきたこと、人間が己の頭で考えたこと、それを紡いだScriptは、日常を生きる人間の単なる娯楽になってしまう。

 これが包括的並行世界の真相だ。

<了>


*** 「創作1000ピースの取り組みについて取り組みについて ***

 たくさん書いて書く練習をするためにまずは1000の物語を書く目標を立てました。形式は問わず、質も問わず、とにかく書いて書いて、自信と力をつけるための取り組みです。

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