仕事中の電気工事士

㉜私の評価1

新しい仕事に慣れてきた。職場の人ともだんだんと打ち解けてきた。仕事は順調だし、毎日が楽しいし、何しろ給料がいい。いきなり望んでいなかったカナダの電気工事士(見習い一年生)に成ってしまったのだから。

カナダ人、いわゆる白人系のカナダ人と握手をするとその人の家系によっては、まるで野球のグローブをしているのではないかと思うくらい手がでかい。体は巨大でなくても全体に筋肉質で丸く、手のでかさというよりも指の太さが1.5倍から2倍くらいも違う。これが何を意味するかというと細かい作業は苦手ということになる。

昨年の夏に縁あってトロントのウクライナ系のベースプレーヤーと知り合った。彼はギターを弾きたかったのだけれど手が大きすぎてギターを弾くのを諦め、その代わりにベースプレーヤーになったという経歴の持ち主だった。

私のジャーニーマンのマイクはご他聞に漏れずに手もでかい。したがって細かい作業が苦手である。無論その逆に体力を使う仕事はお茶の子さいさいで、コーラのビンくらいの太さのケーブルを片手で軽々と持ち上げてしまう。こっちは両手でも「ヒーヒー」言うくらいの重さのものなのだ。

要は向き不向き、適材適所という事なのだろう。とは言えいつでも希望する仕事が来るとは限らないため、オールマイティに出来るには越したことはない。それでも私には細かい仕事、マイクには大きな仕事が向いているという事実は変えようがない。

我が仕事場は図太い高圧電線を扱う場所でなく、ストローの半分くらいの太さの電線を使った配線がメインの職場なのだ。そしてその電線をリレーという部品に(石鹸箱の一番小さな断面くらいの面積に密集している端子の足)、多いときは10本近くもの電線を接続する仕事なのだ。端子同士が極端に狭いときなどは、電線をヘアピンのような形状にして取り付けるくらい狭い世界で戦っている。

マイクは当然ながらほぼ全ての配線にはラジオペンチを使用している。私の場合少なくとも片方の足は直接指で端子に押し込めるので、ラジオペンチを使うのはもう片側のほうだけとなる。これが何を意味するのかというと、単純計算で考えるならば作業時間が彼のほぼ半分で出来るということだ。

課長代理であり、しかもジャーニーマンで私に仕事を教える立場の彼から見れば、初心者の私が仕事を始めてから短期間に追い着いてしまっているのは面白くないだろう。

おまけに配線が密集している中にマイクの太い指が線を押し込むと、そのまわりの線が全て広がってしまうので、線が出そろって他へいく流れの見た目が悪くなってしまう。逆に私の場合は線の束の中に指が入るので仕上がりが非常に美しく、彼は決まりが悪くなったのではないかと危惧した。

しかしそこが尊敬できるジャーニーマンであるマイクだ。私の仕事ぶりをきちんと評価してくれた。無論それを課長にも報告していたに違いない。と同時に私がヘアピンのように配線を折り曲げる点について心配していたようで「線を曲げるときはラジオペンチの角で被覆を傷つけないように注意してね!」と建屋の反対側にある親会社のエンジニアから回答を得たようだった。

仕事のほとんどは上司のためにやっているのではないかと思える。もちろんやっている本人のためでもあるけれど、だから素晴らしい上司にめぐり合えると仕事の質も早さも向上するのだろう。

仕事は人のため→会社のため→上司のため→そして自分のため。
どこをとってもいい関係じゃないですか。


嬉しいなあ!㉝私の評価2へ続く、、、


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