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みちのく潮風トレイル コースガイド 1/50 八戸市/階上町 蕪島~種差海岸~階上駅

こんにちは。岩手県宮古市を中心に、みちのく潮風トレイルや三陸ジオパークのガイドをしている人です。ゲストハウス3710というゲストハウスもやっています。宿泊に限らず宮古市に来たらぜひお立ち寄りください。

この記事は、みちのく潮風トレイルの詳細なルートガイドです。全線を50セクションに区切って紹介します。
実際に全線を往復した経験と知識に基づいています。基本的には南下(SOBO)での紹介をしていきますが、分かりづらい場所などは、なるべく逆向きからの写真も織り交ぜて紹介しています。
基本的にはセクションハイクを想定した情報を提供しています。テント泊の情報は、公式のデータブックやトレイルサポーターの情報が参考になりますので、あまり掲載していません。(公式にテントを張っていいと認められている場所は紹介を入れることがあります)

2つの記事は無料記事にしていますので他の記事を購入するかどうかの参考にしてください。
・北のスタート1番目の八戸セクション
・最後の50番目の相馬セクション

それ以外の記事は有料記事となります。
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記事は一つずつ購入だと1記事あたり200円です。また、全線の50記事をセットにしたマガジン形式で一括購入も出来ます。一括購入の場合には5,000円に割引していますので、一記事あたりは約105円となります。
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みちのく潮風トレイル全線コースガイド↓

みちのく潮風トレイルの基本的な情報を知りたい場合は、先にこちらの記事をお読みください。無料記事です。

また、実際に歩く際には、必ずみちのくトレイルクラブの注意情報に目を通してからスタートしてください。工事による迂回路の最新情報などが掲載されています。

(この記事は2024年6月時点での情報で書いています。あくまで記載の情報は目安として、各自の自己責任にて充分な調査や計画のうえで行動に臨んでください。記載内容の正確性や、記載内容を参考にしたことにより生じたトラブルや事故等について、当方は一切責任を負いかねますのでご了承ください)


0. このセクションの概要

このセクションは、みちのく潮風トレイルの北端です。青森県八戸市の蕪島から階上町の階上駅までです。

大部分が舗装路で、アップダウンもほぼありません。眺めがよく、ルート上の多くの場所から海が見えます。ルート沿いに商店も点在していますので、入門コースとして最適です。
ただし、砂浜を長く歩く箇所がありますので、暑さや足の疲れには気を付けてください。

  • 距離:約20km

  • 最大の標高:約20m

  • 所要時間の目安:約5時間

  • 難易度:とても易しい

  • 公共交通機関のアクセス:容易

  • 宿泊施設:多数(本八戸駅周辺)

  • キャンプ地:あり(種差キャンプ場)

  • 飲食店:多少あり

  • 商店:多少あり

1. 蕪島(鮫駅)~大須賀海岸

みちのく潮風トレイルの北側のスタート点は八戸市の蕪島です。

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実質的にはJR八戸線の鮫駅をスタートにする人も多いと思います。
また、宿泊施設や繁華街は鮫よりもっと八戸駅寄りの本八戸周辺に集中しています。新幹線が停まる八戸駅周辺は実はあまり宿泊施設がありません。

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鮫というのも、知っていると違和感ないですが、知らない人からするとけっこう珍しい地名ですよね。
なお鮫駅(蕪島)と種差海岸を結ぶワンコインバスに乗る場合は、鮫駅のロータリーではなく蕪島側に歩き始めてからの路上にバス停があります。

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鮫駅からちょっと歩けばすぐ蕪島です。
蕪島はかつて島でしたが、砂州が埋め立てられて現在は陸続きになっています。蕪島の頂上には蕪島神社があり、島全体がウミネコの営巣地です。
ウミネコの営巣地自体は、三陸を歩くとあちこちありますが、崖や岩礁の場合が多いので、これだけ人の近くで営巣している場所は貴重です。
写真は6月、ちょうど繁殖期で、菜の花も咲いていて、一番見ごたえがある時期ですね。
ちなみに黄色いのが菜の花、白い粒がウミネコです。

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気を付けないと普通にウンが落ちてきますので、苦手な方は気を付けてください。ウン除けの貸し出しがさもあります。でも、ここではウンが付くのは運が付いて縁起がいいことともされていますよ。

気が付きにくいですが、神社への階段の途中に、過去の津波の浸水高があります。みちのく潮風トレイルは震災の教訓を学ぶ道でもあります。

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蕪島の横に、みちのく潮風トレイルのヘッドポイント。ここから福島県相馬まで1000㎞以上のスタートです(ハイキングマップブックN→S 0.00)。

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砂浜沿いをスタートして、海沿いにすぐ、水産科学館マリエント。

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館内も見ごたえがありますし、マリエントの展望所から蕪島方面の風景も素晴らしいですよ。

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マリエントを抜けてほどなく、最初のトレイル標識。舗装路から逸れて柵沿いに堤防のほうに向かっていきます(ハイキングマップブックN→S 0.72)。

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途中の神社に、くじら石。八戸太郎という鯨の神様がこの石になったという昔ばなしがあります。

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神社を抜けると恵比寿浜漁港の入り口に出ます。

ちなみにこの一角に、MOWLAS(モウラス)という地震検知システムのうち日本海溝の津波検知システムであるS-netの一端が収納されています。
S-netというのは、311の経験を踏まえて津波の迅速な検知をするために、日本海溝沖までくまなく5000㎞の海底ケーブルを施設した計画で、これによって新幹線の緊急停止や緊急地震速報の精度向上が実現されています。(あまり世の中には知られていない気がしますが…)
その海底ケーブルのうち三陸沖のケーブルが陸上に中継される個所の一つがここなんですよね。けっこうすごいことだと思います。あと、三陸沖では宮古にもあります。

トレイルは、堤防に向かうほうが「通行止め」になっていますが、すぐ横のトレイル標識からガードレール沿いを見ると、「ハイカーは通ってOK」と案内がありますので、柵の横から堤防のほうへ進みます。このような仕組みは何度か見かけることになります(ハイキングマップブックN→S 0.90)。

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堤防沿いに進むと、トレイル通行量調査のカウンターがはじめて登場します。カウンターは、通行時に一人一回だけ押してください。

また、ここからしばらく恵比寿浜の磯沿いになるため、高波時は通行できません。その場合は、車道に迂回しましょう。

恵比寿浜の岩は、枕状溶岩といいます。やや丸くて潰れたような形をしています。過去の海底火山活動で、溶岩が固まって出来た岩です。
溶岩が冷えるときに、外側が先に冷えて丸く膨らんでしまい、流れ出た次の溶岩も丸く固まることで形作られました。

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トレイルは、しばらく海沿いです。浮きに矢印が描いてあったり、漁港ならではの案内が続きます(ハイキングマップブックN→S 1.51)。

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草地はここでいったん終わり、岩場に導かれます。

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岩場を登ると、目印の浮き玉と柱があります。
この辺りを鮫角といいます。狭い意味での「三陸海岸」はここから北端だと一般的には言われます。または、北上山地の北端ともいえます。
鮫角灯台や、タイヘイ牧場という競走馬の牧場もすぐそばです。
この柱はマイルポストと言って、船の速度の性能を測るために置かれた目印です。鮫角灯台のほうにもう1本残っています(ハイキングマップブックN→S 2.13)。

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トレイルはここからしばらく県道になります。鮫角からすぐ脇に、道路からもよく見える一風変わった棒のような岩がありますが、イタコマイマイ岩といいます。海底火山の活動でマグマが冷えて固まってできた岩です。それが波などで侵食されてこの形に。かつて、イタコが岩の頂上で舞を舞ったのでこんな名前になったんだとか…。信じるかどうかはお任せします。

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県道をいくと、葦毛崎展望台です。太平洋一望です。展望台の手前にはソフトクリームが美味しいホロンバイルもあります(ハイキングマップブックN→S 2.55)。

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そして葦毛崎展望台からそのまま中須賀の遊歩道です。
この辺りはなんというか、ピクニック感覚で、「海のアルプス」な田野畑周辺や宮古周辺を歩いている感じと比べると、とにかく平和です!

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中須賀は遊歩道沿いに海やお花がきれいで心が落ち着きますね。
中須賀を終えると、今度は大須賀海岸の砂浜が広がります。トレイルはこの砂浜をずっと行きます(ハイキングマップブックN→S 3.61)。

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いかにもみちのく潮風トレイルっぽい写真を一枚。

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砂浜を歩くのは解放的で楽しいですが、ここを2㎞近く歩きますので、地味に足に堪えます。おそらく砂浜を歩く距離としては全線で一番長いかな?

ちなみに、聞き取りにくいですが、よく聞くと砂を踏むときにキュッキュッと音がする場合があります。これは、ここの砂に含まれている鉱物の成分がこすれるときの音ですね。

大須賀海岸には小川が流れ込んできますが、増水していると渡りづらいことがあります。砂浜が歩くのがしんどいときも、適宜、車道に迂回してよいと思います。

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2. 大須賀海岸~種差海岸

大須賀海岸を歩ききると、通行止めの漁港に入っていきます。

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ここ以外にもよくあるパターンの、ハイカーは通ってよい個所です。
標識を頼りに、柵の横から通り抜けて、漁港沿いを進みます(ハイキングマップブックN→S 5.67)。

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遊歩道を抜けて再び、同じパターン(ハイキングマップブックN→S 6.23)。

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ここは、なぜか建物のこちらを歩くよう指示が。まあ、どちらを歩いても迷いはしませんが。

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この辺りから、再び遊歩道で、淀の松原に入っていきます。
しょっぱなに、白岩。白く見えるのは岩そのものの色ではなく、鳥のウンの色です。

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淀の松原の遊歩道を進みます。

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途中、コウモリ穴と仙人窟への案内が出ます。歩道から数十メートル上がった先にあります。この洞窟が、風景がよすぎて仙人がここに住んでいたという場所だとか? それから、縦に走っている割れ目がコウモリ穴で、昔はここにたくさんコウモリが住んでいたのだとか。

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仙人窟を過ぎたか過ぎないかあたりの海のほうは、巨岩が連なっていますが、この辺りの巨岩の奥に、地獄穴というおどろおどろしい名前の海食洞があるのだといいます。散策路からは見えないそうです。

その地獄穴、宮古の浄土ヶ浜にある八戸穴までつながっているという言い伝えがあります。地獄を抜けると浄土? 浄土を抜けると地獄? ちょっと詩的です。
あともう一つ、かつては閉伊穴(へいあな)という穴も、階上のほう(八戸鉱山)にあったそうです。閉伊という名前の通りそれも宮古につながっていたのだとかいないのだとか。

真実はともかく、ずっと昔から八戸と宮古の間に交流があったということは確かで、ちょっとロマンですね。(当時はもちろん海上交通でしょうが)

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淀の松原を抜けると、種差キャンプ場を経て、種差海岸の天然芝地に出ます。すばらしい!(ハイキングマップブックN→S 7.74)

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ここには、種差海岸インフォメーションセンターがあります。みちのく潮風トレイルの拠点施設の一つです(ハイキングマップブックN→S 7.92)。
種差キャンプ場の利用は、種差海岸インフォメーションセンターに予約が必要です。また、開設は4月下旬~11月頃までです。


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インフォメーションセンター周辺には食事処や、キャンプ用品がある柳沢商店。種差海岸駅やバス停があります。
ここから蕪島・鮫駅まで八戸市のワンコインバスも走っているので、足慣らしとしてセクションを区切るにもいいです(ハイキングマップブックN→S 8.07)。

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また、インフォメーションセンターの裏手のほうに上がると、東北の鳥瞰図を描いていたことで有名な画家さんの邸宅の跡などもあります(柳澤商店さんが詳しいですし、三陸沿岸を歩いているとどこかで見かけることがあるかと思いますよ)

3. 種差海岸~階上駅

種差海岸からは、インフォメーションセンターからもう一度芝生に入って、観光用の駐車場下にあるお手洗いのところから砂浜に下り、向こうに見える漁港まで砂浜を進みます。
高波のときなどは、インフォメーションセンターから車道をたどっても同じ場所にいけます。あと、砂浜に注いでいる沢が増水していて渡りづらいこともあるので、そういうときも県道に迂回でよいでしょう。

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再び漁港に出ます(ハイキングマップブックN→S 8.98)。

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ここからまたちょっと藪路へ。

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早くも二つ目のカウンターがあります。

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さらに藪を進むと道が途中でT字に分岐して、県道に降りるほうがトレイルルートですが、展望所へのルートもあります。そちらに寄ってみると、高岩の展望所に出ます。なかなかここも見晴らしがいいです。

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高岩の展望所からルートに戻ると、県道に降ります。

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この先のところでまた少し横道にそれて、通行止めを超えていく区間があります(ハイキングマップブックN→S 9.86)。
この通行止めを越えていくとやがて学校の横に出るのですが、そこもちょっと分かりにくいかもしれません。
なので、結局この辺りは、あまり神経質にルートにこだわらず、インフォメーションセンターからはずっと県道を歩いてもいいかもしれません。

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漁港の横から林を上がります。

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これは、北から登ってきたところを振り向いています。

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こちらも、北から南へ進んでからの振り返り。左手は民家で、トレイルは民家の裏を通っています。

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と、このように、マップ上の本ルートは海沿いから民家の横を上がってくるのですが、わざわざ遠回りをせずに県道を歩き続けてもこの同じ場所に出ますので、あまりこだわりすぎなくても…。北行のNOBOの場合は、そもそも曲がり角を見落としてずっと車道歩きになるケースも多いのではないかと思います。

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この辺りに八戸線の大久喜駅がありますが、いわゆる何もない駅なのでセクション区切りには使いづらいと思います。大久喜駅よりは種差海岸で一回区切るか、大蛇駅や階上駅まで進むほうがいいでしょう(ハイキングマップブックN→S 10.42)。

トレイルはいったん海のほうに降ります。大きく県道から迂回して、文化遺産の浜小屋の横を通ります。…浜小屋自体は貴重なもののようですが、でも、特に、おおっぴらに見学できるような感じでもないようです。

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この浜小屋のルートを経て県道に戻ります。
ここも、南からの場合はスルーしてそのまま県道を歩いてしまうかもしれません。信号と消防団が目印ですね。下の写真は北向き方向。右手が海側です。
この辺りも、神経質に正規ルートにこだわりすぎなくていいかもしれませんね。

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それからしばらくはひたすら県道を歩きます。
階上町に入る手前に金浜駅がありますが、ルートからはちょっと外れるので、まあ、使わないかな?(ハイキングマップブックN→S 13.51)
やがて、八戸市を抜けて階上町に入ります(ハイキングマップブックN→S 14.20)。

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ちょっとした産直施設のハマの駅あるでぃーばがあります。
休憩等にはちょうどいいですね。トレイルのスタンプもあります(ハイキングマップブックN→S 14.66)。
マップ上では建物の海側を回り込む不思議なルート設定になっていますね。

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しばらくは単調にひたすら海沿いの県道を歩きます。
やがて、大蛇の磯に出ます。大蛇と書いて「おおじゃ」です。ザ・磯という感じの磯が印象的です。

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大蛇海岸前の坂下商店にもトレイルスタンプがあります。商店のもう少し北側のほうから高台に登ると八戸線の大蛇駅もあります(ハイキングマップブックN→S 15.42)。

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大蛇からもう少し進むと、榊というエリアになります。
水産施設と保育園があって、そこを過ぎると津波記念碑を示す看板が見えます。看板に沿って、海方面に折れていきます。

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ルート通りに行くなら「海鳴りライン」に入ります。

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ほどなく、昭和の津波の記念碑があります。ここのは分かりやすい場所ですが、ときどき何気ないところにあったりしますし、これからトレイルを南下するにつれて明らかに津波碑は増えていきますので、意識しておくとよいかもしれません。

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こちらの記念碑自体は、道沿いの低い丘の上にあります。

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さらに進むと、泊川神社。お社の後ろが海に開けていて、初日の出スポットなのだとか。

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確かに、遮るものがない日の出スポットですね。

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神社を過ぎたら階上駅は目前です。
分岐をV字の向きに戻って坂を上ります。
下の写真では右奥の八戸方面から来て、左に登っていきます。
階上駅から来た場合は、逆に、写真の左から右に向かいます(ハイキングマップブックN→S 17.32)。

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坂を登りきるところで、八戸線の踏切を渡ります。ちゃんとトレイルポストが道端にありますね。

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踏切が、線路の枕木を敷き詰めて作られています。ちょっと面白いですね。

踏切を渡ってすぐ最初の通りに曲がっていきます。(写真奥から来て右手のほうへ進む)
逆に階上駅からだと、この路地と踏切に入るのを見過ごさないよう…。

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駅前のレトロ感ある商店街を抜けると階上駅前です。階上駅前には、腕木信号機の展示が残っています。

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八戸線の階上駅です(ハイキングマップブックN→S 18.12)。
何台か車を置けるスペースもありますが台数は数台なので、車を使う場合は種差海岸か蕪島、あるいはこの先の階上岳方面をパーキングにするほうが無難でしょう。あてにして現地に来たら満車、というのでは目も当てられませんのでね。

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さて。この次の区間が、いきなりちょっと時間がかかる、階上岳の長い周回ルートになるので、早速、どのあたりで歩きを区切るか、悩みどころですね。

今回の南側の続きセクションはこちらの記事(有料記事)↓

コースガイド全記事の目次はこちらからです↓


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みちのく潮風トレイルを実際に往復で全線歩いた経験に基づくガイド記事です。50セクションに区切って紹介。八戸から南下(SOBO)での紹介です…

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