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台風接近時等における鉄道の計画運休について

先日2022/3/13、日本気象予報士会関西支部の気象懇話会というイベントで、表題の話題提供をしてみました。以下、概要です。(参考資料などのリンクは後半にあります)

台風接近時等における鉄道の計画運休について、一般的なお話をします。
※ひとりの気象予報士の立場で話題提供します。勤務先の鉄道事業者を代表するものではありません。
【話題提供の目的】
防災や、混乱を小さくするために実施されている「計画運休」で混乱を生じないように、理解を深めていく
⇒「タイムライン」など防災の普及啓発、台風接近時に時差通勤・在宅勤務等に取組まれるとき、参考にしていただければ幸いです。

1. 計画運休とは?

大型台風・大雪などの自然災害による被害を未然に防ぐため、鉄道などの公共交通機関が前もって運転の休止を告知し、その告知に基いて実際に運休することを「計画運休」と呼んでいます。(日本民営鉄道協会ホームページ 鉄道用語事典)

2.なぜ実施するのか?(しなかったらどうなるのか?)

・ 風雨等が運転規制値に達した時点から運転見合わせとなる
⇒途中駅や駅間での長時間の運転見合わせ、踏切の長時間鳴動など混乱が生じる

3.過去の経緯

・長距離列車などでは従来からおこなわれていた。
・近年、大都市圏の鉄道で全面的な運休が行われるようになった。
 関西:2014年台風19号JR西日本(賛否両論あった)
    2018年台風21号JR西日本、私鉄
 首都圏:2018年台風24号JR東日本、私鉄(情報提供のリードタイムが短く混乱があった)
・2019年流行語大賞トップテンに「計画運休」
・鉄道事業者先行?~空振り・見逃しを含め、試行錯誤の経緯

4.国土交通省取りまとめ

・2018年台風24号 首都圏での計画運休の後、国土交通省が鉄道事業者をとりまとめ。その後随時更新(詳細は参考資料の国土交通省ホームページ参照)
タイムライン(モデルケース)
2日前(48時間前):可能性の情報提供
前日(24時間前):具体的な運休計画の情報提供(終電時刻の発表)
当日:具体的な運休計画は随時更新、運転再開見込みの情報提供

5.鉄道事業者の取組み(お客様への情報提供)

・Twitter(運行情報)、アプリ(運行情報、走行位置、混雑状況)、ホームページ(運行情報など)(※経路検索には反映されない場合が多い)
・計画運休前後にお出かけの際は最新の運行情報をご確認ください
・モデルケースのタイムラインの時系列による情報提供をめざすが、予報の更新、予報と実況のずれ、リードタイムが短くなってしまうケースなどあり得る

6.2019年台風19号(東日本台風)被害から車両基地浸水対策の計画も

・設備の浸水対策のほか、車両の避難(疎開)
 ⇒大きな車両基地では、計画運休、運転再開にも影響

7.有識者の調査、報道等のコメント

・当初は鉄道事業者の取組みに対して唐突感があった。⇒賛否両論
・近年は理解も進み、肯定的なコメント、調査結果がみられるようになった。

8.求められる気象予報の特徴

・正確さ、きめ細かさが求められる(いつからいつまで運転規制値を超えるのか?)
局地現象を精度高く (風:橋梁等にある風速計の瞬間風速で運転規制)
・終電を早める方向、運転再開が遅れる方向への予報更新、実況のずれは混乱を招きやすい
・ユーザーの選択肢は多くない。「確率予報をもとに本数を決める」などは行いにくい
(「間引き運転分の人流抑制」にはなりにくいので、混乱(特にコロナ禍))
・具体的な運休計画を決定する時には腹くくる

9.(質疑応答・情報交換)気象予報士として皆様の職場・学校・家庭では?

・マイタイムライン
・計画運休より前に広域避難
・在宅勤務、時差通勤、営業時間変更、旅行予定の変更など

【参考資料】

国土交通省とりまとめ・報道発表
・2019/7/2
「計画運休」、鉄道各社がタイムライン作成へ
~鉄道の計画運休のあり方について最終とりまとめ~
⇒『(参考)情報提供タイムラインのモデルケース』資料あり

・2019/10/11
台風第19号における計画運休に向けて
~鉄道の計画運休の実施についての取りまとめの更新~
⇒2019年台風15号(房総半島台風)の振り返り(成田空港アクセス路線の混乱、朝通勤時の運転再開見込みから遅れた影響の混乱等)をふまえて更新

・2019/12/24
新幹線における車両及び重要施設に関する浸水対策について
⇒車両の避難などの計画も

国土交通省 運輸防災マネジメント
・国土交通省運輸安全マネジメントのホームページ
運輸防災マネジメント指針など

有識者の調査
・2019/10/10 県立広島大学及び東京大学による共同調査の調査結果について
9 割以上が計画運休を認知し賛成 令和元年台風 15 号における計画運休に関する調査

影響を受ける企業等での対応(行政からモデル事例の提示等)
・『計画運休時の出退勤ガイドライン』
東京都防災ホームページ 2020/6/29 更新2021/6/7

・国土交通省報道発表 2020/6/30
災害に備えた鉄道の計画運休時における時差通勤・テレワーク等の企業側の取り組みを推進します
~鉄道の計画運休時における企業の優れた取り組みの具体事例を紹介~

・(ネット記事)『計画運休対策で企業を強くする』
ニュートンコンサルティング 2020/9/25

その他参考文献(鉄道防災)(計画運休については触れられていません)
・『鉄道と自然災害 列車を護る防災・減災対策』
公益財団法人鉄道総合技術研究所 防災技術研究部・鉄道地震工学研究センター
日刊工業新聞社

・『気象・地震と鉄道防災』
島村 誠
成山堂書店 気象ブックス044

その他参考文献(鉄道の運行管理)(計画運休については触れられていません)
・『鉄道ダイヤ回復の技術』
電気学会・鉄道における運行計画・運行管理業務高度化に関する調査専門委員会 編
オーム社


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