ため息

男は、ため息をついた。

「ハァ…運が悪いなぁ……ハァ…親は立て続けに死んじゃったし……ハァ…上司にミスを擦り付けられて、会社をクビなるし……ハァ…次の仕事は見つからないし……ハァ…妻は若い男と出ていったし……ハァ…貯金は底をついたし……ハァ…ァ…ァ…」

その時でした。
どこからか、ファンファーレが鳴り、紙吹雪が舞い出しました。
そして、空色のネクタイに紺のジャケットの美しい女性が現れました。

「おめでとうございます!」

「えっ?」

「貴方のため息の数をギネス世界記録に認定致します!こちらが認定証です。お受け取り下さい!」

「うわっ、ありがとうございます」

「では、失礼致します」

美しい女性は、さっさと帰って行きました。

「ハァ…賞金とかは無いのかぁ……ハァ…何も変わらないじゃん……ハァ…ァ…ァ…」

男は更に、記録を更新したのでした。