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日本の家「冬は寒い」は当たり前じゃない!建築物省エネの議論はもっと加速するのか聞いてみました!

こんにちは。350 New ENEration (以下NewENE)です。

9月23日の気候危機アクションデーにあわせ、議員対談の中で、各政党がどのように気候危機対策を考えているのか意見交換を行ってきました。

対談では「私たちが求める5つのポイント」についてお話しました。

❶2030年電源構成の見直しを求めます
❷電力事業者のロードマップが国の目標やG7サミット合意と整合しているかを調査・追及すること
❸『公正な転換』の議論を進め、エネルギー転換による雇用創出や経済的効果などの機会を明らかにすること
❹気候危機時代にあわせた住宅・建築物のあり方の議論の加速
❺再生可能エネルギーおよび省エネ拡大議論の加速

ポイントごとに以下政党の違いを見ていきたいと思います!

対談したのは、公明党・輿水恵一議員、
立憲民主党・山崎誠議員、
日本維新の会・小野泰輔議員、
日本共産党・笠井亮議員、吉良よし子議員、山下芳生議員
れいわ新選組・櫛渕万里議員、社民党・福島みずほ議員
自民党の秋元真利議員はいち議員として対談致しました。
また、今回、国民民主党の議員とは対談がかないませんでした。


私たちが求めるポイント「❹気候危機時代にあわせた住宅・建築物のあり方の議論の加速」について


「気候危機時代にあわせた住宅・建築物のありかた」について、私たちは以下のように求めました。

今夏、ロシアによるウクライナ侵攻や、それ以前からのエネルギー価格高騰、地震で火力発電所が止まることなどにより、電力需要逼迫が問題となっています。これにより、国民は節電を呼びかけられました。しかし、気候危機による猛暑が深刻化し、熱中症のリスクもあり、「国民の我慢」には限界があります。その一方で、再エネや省エネの拡大による電力需要逼迫への政府の取り組みは全く不十分です。 
 例えば、2020年6月13日、改正建築物省エネ法が可決され、2025年からすべての新築建物に断熱性能などの基準を守ることが義務づけられました。しかし、本来であれば10年前に成立すべきだった法律であり、下記図に示すように基準も欧州各国にくらべて低いものにとどまっています。
 気候危機対策には省エネ・再エネは欠かせません。今後も議論を加速していただきたいと考えています。
 今回の法改正で義務付けられた「断熱の等級(受託品質確保促進法に基づく住宅性能表示の1つ。等級が高いほど住宅から外部への熱の逃げやすさが小さい)」については、「等級4」とされるものです。
 現状の新築物件は8割がこの等級4という基準をすでに超えています。そのため、国土交通省は今年4月に等級5を、そして今年10月には等級6・7を創設します。エネルギー消費の1/3は建築物分野が占めるため、等級4基準では、住宅の省エネ化を促すうえで不十分ということになります。
 
実際に、欧州各国の基準は等級6・7並みとなっています。

要望書より❹抜粋


一方、鳥取県では、県民の健康の維持・増進、省エネ化の推進及びCO₂削減を図ることを目的として、戸建住宅を新築する際に、県独自の省エネ住宅基準(とっとり健康省エネ住宅性能基準)を策定しています。この基準は欧州並みとされており、国全体では遅れているものの、日本の一部の地域ではすでに積極的な取組が進んでいます。
 
IEA(国際エネルギー機関)が昨年公表した「2050年ネットゼロに向けたロードマップ」では2030年には「全ての新築建築物がゼロ炭素仕様」が想定されています。

要望書より❹抜粋


 また、この建築物省エネ法の改正が達成された背景に、令和3年の国土交通省・経済産業省・環境省の3省による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」がありました。しかし現在は環境省を除いた、国土交通省と経済産業省での検討が行われています。そのため、気候危機対策に関して、その緊急性や国際的な取り組みとの整合性の視点が抜け落ちてしまう可能性があるのではと懸念しています。
 繰り返しになりますが、酷暑が続くなか、エアコンの設定温度などに関する国民の我慢が伴うような節電などは、極めて対症療法的なものであり、経済的な合理性もありません。一方、住宅・建築物の省エネは、CO₂削減だけでなく、健康を増進し、雇用を創出し、光熱費削減にもつながります
 今後は等級6・7を視野にいれ議論をすると同時に、等級4の基準を満たしていない8割以上の既存の建物の断熱改修などの省エネルギー化の議論を加速させてください。

要望書より❹抜粋


ちょっと長くなりましたが、「等級6・7を視野にいれ議論をすると同時に、等級4の基準を満たしていない8割以上の既存の建物の断熱改修などの省エネルギー化の議論を加速させてください。」を求めています!

では早速、各政党の考えを紹介していきたいと思います。


自由民主党の回答(環境担当よりご回答いただきました)

2025年度の省エネ基準への適合義務化の施行に向けて、市場に混乱が生じないよう、しっかりと準備を進めてまいります。
また、第6次エネルギー基本計画において、「2030年度以降の新築について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す」こととしており、この実現に向けて、(等級6・7も視野に入れつつ)より高い省エネ性能への誘導を図るほか、既存住宅の省エネ改修についても、施策を総動員して取り組んでまいります。

自由民主党の回答

上画像が参照にすると「ZEH」は世界の省エネ基準と比較すると、まだまだ「寒い」仕様であることが分かりますね。

ZEHとは……Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味になります。 つまり、家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで創るエネルギーをバランスして、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家のことを言います。

公明党(対談は輿水恵一議員)の回答

対談の中での回答とさせていただきました。

●環境部会長に就任したばかりだが、国がすすめるZEHが等級5であること、等級5は断熱レベルがとても優れているわけではないことは認識している。
●いまは等級4ということだが、省エネ化住宅促進にも予算をつけていくよう、今後もしっかり取り組みを行っていく。
●建築物省エネ法の改正が、新築への適用であり、既存住宅への取り組みが非常に重要である。
●欧州からみて断熱レベルが低いことで、健康面にも被害が出る
電力不足が叫ばれる今だからこそ、省エネは重要。いわば土台のようなもので、最終的に大きな結果がうまれる。






➡対談の後、公明党・山口代表が、10/7の代表質問で「既存住宅」への省エネに言及していました。

以下、動画抜粋です。

(公明党は)さいたま市浦和美園地区へ行き、政府の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」の採択を受けた住宅街区を視察した。各家庭で発電した再生可能エネルギーを地域内で共有し、効率良く利用しており、エネルギー自給率は6割を超えている。このような先進的で質の高いモデルを全国に波及させるべきだ。
 また、政府は現在、子育て世帯などに対し、高い省エネ性能を有する新築住宅の取得について「こどもみらい住宅支援事業」を実施しているが、同事業はニーズが高く、住宅価格が高騰していることも踏まえ、引き続き支援を行うべきだ。同時に、省エネが進んでいない既存住宅への対策として、断熱リフォームなどへの支援も重要だ。

と質問されていました。

国民民主党(今回対談はかないませんでした)の回答

カーボンニュートラル社会に向けては、電力部門に限ることなく、あらゆる部門における省エネ化や電化の促進をはじめとする技術革新と社会実装によるイノベーションを推進します。

国民民主党の回答

さらなる断熱等級への展開や、既存住宅の省エネに対する見解をお聞きしたかったので……残念です。

日本維新の会(対談は小野泰輔議員)の回答

これまでの国の断熱性能は等級4が最高等級でしたが、今年4月よりいわゆるZEH水準に相当する等級 5、そして 10 月よりさらに上位の等級 6 および 7 が遅まきながら導入されることとなりました。
➢ 気候変動問題に対処するためには、温暖化ガス排出の大きい住宅分野でのさらなる排出抑制が重要だと考えており、今後もより断熱性の高い高性能住宅の普及促進のための性能表示の充実を図っていくべく、国会でも積極的な議論を進めてまいります。
➢ また、目下の景気対策としても、等級 4 の基準を満たしていない 8 割以上の既存の建物への断熱改修工事への助成など、省エネルギー化に大きく貢献する政策を大胆に進めてまいります。

日本維新の会の回答

要望書に対して、概ね合意頂いたと思います。今後の動きに注目していきたいと思います。

立憲民主党(対談は山崎誠議員)の回答

建物の断熱化は即効性のあるCO2排出削減策でありエネルギー価格高騰対策としても有効であるにもかかわらず、日本では極めて遅れています。立憲民主党は、新築住宅に対する断熱化の強化等を推進することでエネルギー消費量の低減、CO2排出削減を実現します。(家庭部門の省エネシナリオについては表の通り)以下のような政策を提案しています。

●地域の工務店、電器店を応援し建物の断熱化や省エネ機器への切り替えを進める支援制度を創設します。省エネの初期投資の負担軽減のための融資制度を創設します。地域の雇用と産業育成を実現します

立憲民主党の回答
立憲民主党の回答から
立憲民主党の回答から

計算根拠(2つ目の画像)の中で、“ヨーロッパと同程度の断熱性能”を基準とすることや、ストック(既存住宅)の省エネ化について言及されていますね。またそれ以外にも、建築物に関連した省エネシナリオが検討されています。
どれくらい効果があるのか、についても検討されている
ようですね…!

NewENE的には“公営住宅の断熱化推進、低所得世帯向けに省エネ家電製品への買い換えを公費によって行う、福祉的エネルギー転換施策を創設します”という文章も非常に印象的だと思いました。「福祉的エネルギー転換施策」というのは、是非進めていただきたいです…。


日本共産党(回答は笠井亮議員)の回答

<回答>日本の住宅・建物の断熱性能が、欧米に比べてずっと低いままできたことは、鳥取県の資料でも明確です。日本はこの分野でも大きくたち遅れました。断熱性能の悪い建物では、熱の流出入が大きく、エネルギーの浪費が止まりません。ようやく前国会で新築住宅での断熱性能遵守の義務化が導入されましたが、すでに新築物件の7割程度がクリアしている水準であり、この断熱基準の引き上げとともに、大量に存在する既存住宅・建物の断熱性を高める改修推進などが必要です。
 住宅関係の改修は、工務店、電気、設備など幅広い業種に仕事が回り、経済にとっても重要です。先例として、かつてバリアフリー・リフォームが盛んだった時、岩手県宮古市で創設した制度では、市内事業者に限定して20万円以上の対象工事に10万円補助し、総世帯の15%以上が活用しました。2年間で4億円弱の補助費が、その4.75倍の約19億円もの工事費を生み出しました。市の担当者は、経済波及効果は非常に大きかったとしています。
 2030年度までに温室効果ガス60%削減(2010年度比)を掲げる長野県では、熱や冷気の60~70%が屋内に侵入する窓のリフォーム支援制度を設け、好評を博しています。
これからEV普及も日本国内で進んでいくなかで、住宅・マンション・建築物への充電設備の整備も、重要な仕事になってきています。太陽光発電とEVの蓄電機能を結びつけた再生可能エネルギー導入・普及も、大きな可能性を持っています。これらも含め、大いに議論を加速していきたいと思います。

日本共産党の回答

日本共産党の回答も、現在断熱等級の課題を認識し、対策が必要であるというものですので、要望書の内容を同意していただいたと思います。
地域で先行している長野県の例や、バリアフリー・リフォームの例から、実際に転換していくイメージが見えてきます。

社民党(社民党政策審議会)からの回答

日本の住宅は欧州各国等と比べて断熱性能が劣っており、住宅の省エネ化は急務である。省エネ法などの制度の強化にあわせ、地域事情にあわせた十分な助成制度の整備が求められる。

社民党の回答

社民党の回答も、要望書で求めた方向性と概ね同意であると思われます。

れいわ新選組(対談は櫛渕万里議員)の回答



いかがでしたか?

今年、気候危機界隈を賑わせた(?)「建築物省エネ法の改正」(国会で通らないと考えられていたものが、市民の後押しでどんでん返しとなり、改正に)ですが、さらに踏み込んだ議論を加速させていくことについて
自民党・国民民主党以外の政党は概ね同意か同意であることが伺えますね。

また、立憲民主党の回答では「計算根拠」があることに驚きました。

ということは、建築物省エネに関する議論は、もっと進めることができるはず……!
是非、建築物省エネについて国会などで議論した議員さんをご存知でしたら、教えてください♪

次回はいよいよ最終回!要望書で求めたポイント❺「再生可能エネルギーおよび省エネ拡大議論の加速」について、各政党の考えがどのようなものであるか、見ていきましょう!


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