身近にあふれるやさしさは、世界を救う。

有名なキャッチコピー『バファリンの半分はやさしさでできている』。未だに思い出せる人は多いはず。

バファリンのように、やさしさは商品や企業、サービスに見て取れる。


身近にはやさしさがあふれ、いつの間にか囲まれている。昨年から今年にかけて、「やさしいなあ」と思うことが度々あった。

たとえば、Nintendo Switchはその1つだ。


Nintendo Switchから伝わるやさしさ

私はコントローラーを使うゲームが苦手だ。特に、ボタンをたくさん使うゲームが苦手。ボタンの位置を覚えるのに必死で、ゲームどころではない。

そんな私が唯一楽しめるのが、任天堂のスーパーファミコンで遊ぶゲームだった。方向キー、Bボタン、Yボタンを押せば何とかなる。決して上手ではないが、とっても楽しい。

そんな私の前に昨年あらわれたのが、Nintendo Switchだ。


Switchにふれたとき、なんとやさしいんだろう!と感動した。ホーム画面がもうやさしい。ゲーム初心者をそばで見守っているかのように、何のボタンを押せばいいのか分かりやすく書いてある。さらに、音もふわっとやさしい。


夫はゲームが好きで、得意。難しそうなゲームでもサラッとできる(ように見える)。これまで、時々2人でゲームをするときもあった。しかし、たいていは私が挫折し、やめてしまう。


Switchにはスーパーファミコンほどのボタンで遊べるゲームが多々あり、私でも充分楽しめる。

Switchにはコントローラー(Joy-Con)が2つ付き、片方をおすそわけできる。夫とおすそわけし、2人でゲームする時間が格段に増えた。

公式サイトには2人以上で楽しめるゲームが並び、『楽しいをおすそわけ』とある。「楽しい」を「おすそわけ」!!紅葉に見惚れるが如く、この言葉をながめてしまう。

「おすそわけ」という言葉がなんともやさしい。おすそわけ…ですよ?おすそわけ!やさしい…。全てひらがな表記なのも素敵。やさしさが伝わる。


2018年には「#任天堂を許すな」というタグがTwitterで流行った。決して怒っているわけではなく、任天堂のやさしさ、任天堂への感謝が並んでいる。私は今読んでも泣いてしまう。


ズボラな人もやさしく包み込むキユーピー

キユーピーにも日常茶飯事でやさしくされている。

私は無類の麺好きで、少なくとも週5回、多いときは週14回麺類を食べている。パスタは手軽に作れるので、よく食べる。

なお、私はズボラな麺好きだ。パスタはレンジで茹でるし、ソースは市販のものをかけるだけ。


お気に入りのソースは『キユーピー あえるパスタソース』。パスタソースはお鍋かレンジで温めるものが多かったが、これは温める必要がない。かけるだけ!なんとズボラにやさしいのだろう。

中でも『ミートソース フォン・ド・ヴォー仕立て』が群を抜いて好きだ。お肉がゴロゴロ入っているし、何よりソースが濃厚で美味しい。かけるだけでこんなに美味しいなんて、え…いいの?いいんですか……?



マヨネーズやドレッシングで有名なキユーピー。公式サイトを見ると、めざす姿として「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」と書かれている。

フォン・ド・ヴォーを食べながら、まさにその通りだなあと思った。美味しいし、ズボラな私にもやさしいし、『かけるだけ』もユニークだ。


パスタソースの他、野菜もお肉にも合うドレッシング『野菜もお肉もこれ1本』、トーストに塗って焼くだけの『ヴェルデ トーストスプレッド』など、キユーピーはめざす姿をこれでもかと商品化している。

また、ユーザーの声を活かし、卵を使っていないマヨネーズ、イスラム教徒でも食べられるマヨネーズなどを販売。どんな人も置いてけぼりにせず、人を真摯に思う姿勢が商品から伝わってくる。


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──人を真摯に思う。

私は「相手を受け入れ、真摯に思う」がやさしさの正体だと考えている。


相手といっても、世の中にはいろんな人がいる。「相手を受け入れる」のはやさしさの第一歩だと思う。前述の任天堂ならゲーム初心者、キユーピーならズボラな人を受け入れている。

受け入れた相手のことを「真摯に思う」のも欠かせない。真面目に相手のことを考えて考えて考える。真摯に思った上での行動は、やさしい。


この1年間、お笑いや音楽、漫画などのエンターテインメントでも「相手を受け入れ、真摯に思う」を感じた。


2019年のM-1に見たやさしさ

昨年のM-1グランプリは強く印象に残っている。


ミルクボーイとぺこぱは「やさしい笑い」とも称された。賛否両論あるようだが、もちろん面白いから決勝に残ったのはいうまでもない。

2組とも漫才中に強く怒ったり、罵倒したりはしなかった。

私が考えるやさしさ=相手を受け入れ、真摯に思う。ミルクボーイとぺこぱから、このやさしさをまざまざと見せつけられた。


ミルクボーイはおかんが名前を忘れたものについて2人で考え、「コーンフレークやないか」「ほなコーンフレークと違うかー」のように漫才を繰り広げた。

この構図そのものが、
相手(=おかんが名前を忘れたという悩み)を受け入れ、
真摯に思う(名前のヒントを聞き、考える)
につながっている。

一緒に名前を思い出そうとする流れは、面白いだけじゃなくて、やさしい。
(ただし、コーンフレークやもなかの悪口も言っている。)


ぺこぱは、相手をけなすようなツッコミをしないのが衝撃だった。
たとえば、タクシーにぶつけられて「どこ見て運転してんだよ!」とツッコミそうなところを、「どこ見て運転してんだよ…って言えてる時点で無事でよかった」とツッコむ。

やさしさを兼ねたツッコミは斬新だった。笑いながら、こんな考え方で生きられたらもっとやさしくなれるなあとも思った。


髭男とKing Gnuに感じるやさしさ

2019年といえば、Official髭男dism(通称:髭男,ヒゲダン)とKing Gnu(キングヌー)も話題に上がった。2組とも昨年の紅白に初出場。

遅ればせながら、私は今年に入って2組の曲をちゃんと聴いた。耳や感情を揺さぶられ、一気にファンになった。昨年の紅白をじっくり見なかったことを未だに悔やんでいる。


8月にはKing Gnu、9月には髭男のライブが配信された。イントロで数曲分かるほどにハマり、初ライブはとことん堪能できた。

2組ともランキング上位の常連で、曲も演奏も歌詞も素晴らしいのは周知のとおり。


髭男もKing Gnuもこれだけ支持されているのは、メンバーのやさしさが関係していると思うのだ。


髭男のメンバー4人はいかにもやさしそうな雰囲気。実際、ライブ配信後のオーディオコメンタリーや楽曲制作のドキュメンタリーで、根っからやさしいのだろうと思えた。笑顔にも言葉にも、端々にやさしさがにじみ出ている。

全員が対等でいるため、髭男にはリーダーがいない。つまり、誰が上で誰が下などという関係性はないのだ。上から目線なんてない、やさしい時間を過ごしているのだろう。


King Gnuのメンバー4人は、知れば知るほどやさしいと感じる。オーディオコメンタリーで見た素顔には4人の仲の良さ、やさしさが垣間見えた。

ライブ配信を見ながら、お互いに「ここよかった」「いいねー」と褒め合っていたのが印象に残っている。そして、予想だにしない発言を馬鹿にしたり、嫌味に笑ったりもしなかった。お互いのあらゆる姿を受け入れる懐の深さ、見習いたい。


髭男、King Gnuの曲を聴き

曲や声にやさしさが自然と染み込み、多くの人に響いたのではないか?
寄り添う歌詞に、やさしさを感じるのではないか?
背中をそっと押してくれるやさしさに、惹かれるのではないか?
ダメな自分も受け入れてくれるやさしさに、心打たれるのではないか?

と考えながら曲に酔いしれる日もある。


鬼滅の刃に漂うやさしさ

今年、もはや社会現象になっている『鬼滅の刃』。
(※ネタバレは一切ないので、安心してお読みください。)

私は1ヶ月半ほど前、初めてアニメを見たばかり。見事にハマり、映画を観ないわけにはいかず、久しぶりに映画館へ足を運んだ。漫画も少しずつ買っている。


こんなにハマった理由はいくつもある。
惹かれる1番の理由は、作品や作者に漂うやさしさだ。


まず、主人公がとにかくやさしい。家族にも、仲間にも、さらには敵である鬼にもやさしい。相手を受け入れ、真摯に思い、困難を乗り越え、強くあろうとする姿。そんな主人公に惹かれた人は少なくないだろう。

そして、辛い過去を抱えているキャラクターが多い。戦いを経て、自分の弱さに凹むキャラクターもいる。架空の話だけど、昔の自分にどこか重なる。あらゆる人を包み込むやさしさを、自然と感じてしまう。

また、原作の漫画を読み、作者のやさしさにもふれた。コメントには感謝の言葉が並べられ、真摯で、ああだから作品がやさしいのだと納得した。


鬼滅の刃を読む/見ると、やさしいとは何か考えさせられる。


世界の問題解決に欠かせないやさしさ

やさしさはお茶の間をこえ、国際問題にも感じる。

2015年に国連で採択された『SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)』では、2030年までに達成する目標を掲げた。

貧困や飢餓、教育、産業、環境などの国際問題を解決するための目標は計17個。目標に向かってさまざまな取り組みを進め、持続可能な世界を目指す。


たとえば、プラスチック削減のため、スターバックスは今年から紙製のストローを導入した。さらに今年11月からは冷たいドリンクの一部を、紙製のカップで提供する。

プラスチックは自然分解されないので、ポイ捨てや放置で海に流れると、海岸に溜まる一方だ。これは「海洋プラスチック問題」と呼ばれ、大問題になっている。
海洋汚染の他、生物がプラスチック製品にからまったり、誤飲したりと命にも影響を及ぼす。

スターバックスの他にも、前述したキユーピーユニクロ無印良品など複数の企業がプラスチック削減の対策を行なっている。


「自分の国や会社だけが栄えればいい」という考えでは持続可能な世界は遠い。

環境や途上国の誰かを犠牲にし、便利さだけを追求していると、巡り巡って自分の生活が脅かされるかもしれないのだ。

たとえば、好き勝手に二酸化炭素を排出しまくって温暖化が進み、最高気温がさらに上昇すれば、作物が育たず、食料が減る。そんな未来もあり得るだろう。


私が考えるやさしさ、「相手を受け入れ、真摯に思う」。

SDGsの場合、相手は自然や国、世界中の人々。とてつもなく多く、大きい。国際問題を解決しようとしている今、やさしさは非常に重要ではないか?

海にやさしい
生き物にやさしい
社会にやさしい
女性にやさしい
労働者にやさしい
子どもにやさしい

やさしいは今後、世界に欠かせないだろう。


「やさしい」が当たり前になる世の中へ

やさしさは食べ物やゲーム、音楽、映画など、お茶の間から世界まで、いろんなところにあふれている。作った人のやさしさが染み込んだ商品やサービスにふれると、こちらもやさしくなれる。

そして、環境や貧困、労働などの問題解決にはやさしさが欠かせない。生態系、生活を持続させるためには、人や自然を真摯に思うことが大切だ。


これからはきっと、やさしいが当たり前の時代になるだろう。いや、そんな時代になってほしい。


海に住む生き物も、
男性を好きな男性も、
子育てしながら働きたい人も、
コーヒー農家も、
病を抱えている人も、

みんなが今よりもずっとずーっと過ごしやすいように、やさしさが満ちあふれる世界になってほしい。


どうか、

転売する人も、
ペットを捨てる人も、
労働者の健康を脅かす会社も、
ゴミを放置する人も、
生徒を大事にしない学校も、

少しでも早く減ってほしい。「やさしくないはダサい」が根付いてほしい。


世界のいろんなことを、やさしさが支えている。やさしさが詰まっている商品やサービスを選び、日々たくさんのやさしさにふれて、やさしく生きていたい。



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