見出し画像

【短編小説】深夜、ゆくりなく

徒歩圏内にコンビニはここしかない。だから、知人に会いやすい。今は誰とも話したくないから、1時過ぎに来た。


──無理だよな、俺たち。

とっくに同じ気持ちだった。遠距離なんて無理だった。

注がれるコーヒーを見ながら、「自分から言わないなんて、私だいぶ黒いな」と振り返る。



ベンチに座ってアイスコーヒーを飲む。涼しい。

トラックが止まり、運転席から女性が降りてきた。

「隣いい?」
「いいですよ」と慌てて返す。


お姉さんは缶コーヒーを飲みながら、スマホを見ている。

数分の沈黙の後、
「こんな時間に女の子が1人なんて珍しいね。彼氏と喧嘩でもした?」
と続く。

「実は…彼氏と今日別れたんです」
なぜか咄嗟に言えた。

「ま、人生そんなこともあるある。いつかさ、この人だ!って相手が見つかるよ」
「お姉さんは見つかったんですか?」
「見つかったけど、天国いっちゃった。半年前にね」


話し込み、2時。トラックに手を振った。

私も走ろう。私の人生を。



サポートしてくださった分は、4コマに必要な文房具(ペン・コピック等)やコーヒー代に使います。何より、noteを続けるモチベーションが急激に上がります。