筋肉痛について

毎年子供の運動会で張り切るパパと、翌日の筋肉痛はセットです。筋肉痛までが運動会です。それだけ頑張ってくれた証拠です。親の筋肉痛を子供が嬉しがるのです。全国のパパさん毎年ありがとうございます。早朝の場所取りからカメラマンまで幅広くこなし、筋肉痛になるほど走ってくれるパパさん達ありがとうございます(ママさん達もお弁当作りありがとうございます)。

さて今回は筋肉痛についてです。なぜ翌日に発生するのか、予防策や軽減策はないのか、どんな時になりやすいか、よくある誤解などを調べました。


遅発性筋痛

激しい運動や久しぶりの運動の翌日、あるいは2日後にあちこち痛い。これが筋肉痛です。遅れて来るので「遅発性筋痛」というそうです。遅発性があるということは「即発性筋痛」もあります。運動中や直後に痛くなる筋肉痛です。即発性には今回は触れません。起こるメカニズムも違います。


メカニズム

どうして筋肉痛が起こるのか、実は解明されていません。そもそも人体のことの多くは分かっていません。筋肉痛はおそらく傷ついた筋肉の繊維を修復しようとする時に何らかの理由で起こる痛みではないかと考えられています。

筋肉は何本もの細い繊維が束ねられています。そうめんの束のように何本も集まってある方向に並んでいる、というイメージが分かりやすいです。

筋肉痛の起こるメカニズムの有力な仮説としてあるのが以下の流れです。
⒈運動で筋線維が傷つく  ⒉修復のために白血球などの血液成分が集まってくる   ⒊一定のラインを超えると「炎症」が起き刺激物質(発痛物質)が生産される  ⒋刺激物質が「筋膜」を刺激して痛む

刺激物質(発痛物質)はヒスタミンやプロスタグランジンなど数種類があります。ひとつだけではありません。
筋線維そのものには痛みを感じる神経がないので「筋膜」に発痛物質が届くと痛みとして認知されると考えられています。
そして心臓の筋肉などに筋肉痛は起きません。筋肉痛が起こるのは自分で意識的に動かせる、いわゆる骨格筋です。

乳酸犯人説

かつては運動した時に生じる疲労物質「乳酸」の蓄積が痛みの原因と思われていましたが、いくつか矛盾点が指摘されています。血液中の乳酸値は運動後すぐに低下します。そして発生した乳酸はエネルギーとして再利用できることが分かっていますので、もはや「疲労物質」ではないと言われる所まで来ています。このようにして現時点で乳酸犯人説は下火になっています。代わってヒスタミンやプロスタグランジンなど数種類の物質の複数共犯説が盛り上がっています。しかし数年後にはこれも間違っているのかも知れません。

ちなみにヨーグルトなどでおなじみの乳酸菌は「生き物」です。乳酸は「物質」です。乳酸菌は代謝で乳酸を生成するので乳酸菌と呼ばれています。腸の中には多くの乳酸菌が生きています。筋肉で発生する乳酸がそのまま腸に届く事はありません。もちろん腸で生成された乳酸が筋肉に届いて筋肉痛の原因になる事もありません。もう筋肉痛と乳酸を結び付けて考えるのはやめましょう。

どうして遅れるのか

何故か翌日に来る筋肉痛。2日後に来ることもある。どうして遅れるのか。それは筋肉に炎症が広がって発痛物質が筋膜に届くようになるまで時間差があるから。という説明が多いです。やはりはっきりした事は言えません。あくまで仮説です。

普段からよく動かしている筋肉には毛細血管がよく発達しているので修復も早いと言われています。一方あまり使っていない筋肉では血液成分が十分に集まるのに時間がかかる。だから発痛物質が生産されるまでに時間がかかる。という事で筋肉痛はすぐには来ないのではないか。
当日が平気だったからといって油断してると翌日に痛い目にあう(文字通り痛い目に)。というのが最有力の説明です。とてもそれらしい説明ですね。しかしはっきりしてるわけではないようです。

歳をとると筋肉痛が遅く出る?

これもよく言われる事ですが、定かではありません。年齢による差はなかったとする調査報告があります。加齢現象のひとつとして、筋線維の修復に時間がかかるようになる!というそれっぽい説もありますが、はっきりしません。

ここまで読んで薄々感じてきましたね。そうです。筋肉痛に関してはっきりしていることは、もはや何もないと思ってください(それだけははっきりしています)。

筋肉痛になりやすい運動

筋肉は縮むと緩むを繰り返しています。普段あまり使われていない筋肉にはどのような運動も筋肉痛になりやすいのですが、その中でもエキセントリック運動という運動が筋肉痛になりやすいです。エキセントリック運動とは「縮んだ状態にある筋肉が伸びながら力を発揮する運動」です。固い日本語で言えば「伸張性収縮」です。伸張なのに収縮です。

具体的にイメージしてみましょう。あなたは筋トレ中で、重たいダンベルを持って腕を曲げているとします。力こぶは盛り上がっていますね。ここから重たいダンベルをゆっくり下ろすと、力こぶは伸びながらも力を発揮していますね。これがエキセントリック運動です。縮む運動より「伸びながら力を発揮している」運動の方が高負荷なので筋肉痛になりやすいのです。


筋肉痛の緩和

筋肉痛になってしまったらどうしたら良いのでしょうか。痛みにたえてじっとしているしかないのでしょうか。
実は筋肉痛は血行を良くすると早く治まります。少し温めたり、軽い運動をしたり、ストレッチをしたり、マッサージをしたり、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるなどが良いです。痛いからと言ってじっとしているのは血行が良くならず、回復が遅れます。

血行を良くすると言えば入浴ですが、あまり熱すぎるお湯に浸かるのは、かえって血行が悪くなるので、ほどほどのお湯に10~20分くらいが良いです。というのも血行が良くなると体温が上がりますが、入浴で体温があまり上がりすぎると、逆に血行を悪くして体温が上がりすぎないように調整するという働きがあるからです。人体はよくできています。

エネルギー代謝と疲労回復に効果のあるビタミンB1を摂ると筋肉痛が早く治るとも言われています。もちろん筋肉を作る元になるタンパク質も積極的に摂取しましょう。水分補給も重要です。出来れば運動中もこまめに水分をとりましょう。しかし甘いスポーツドリンクは糖分や人工甘味料がてんこ盛りなので注意して下さい。

睡眠中に分泌される成長ホルモンは筋肉を修復します。特に睡眠が深い時に分泌されます。しっかり睡眠をとる事は筋肉痛の緩和に役立ちます。


予防

筋肉痛の予防には運動の前後のウォーミングアップやクールダウンが効果的です。ウォーミングアップ無しでいきなり激しく動くと危険です。怪我にも繋がります。準備運動にはラジオ体操くらいの負荷がちょうど良いです。運動前には動的なストレッチ、運動後には反動を使わずゆっくり伸ばす静的なストレッチが良いでしょう。


冷やすか温めるか

よくスポーツ選手がやっているのを見ますが、運動後に熱を持っている時は冷却スプレーで冷やします。熱が引いたら今度は反対に温めて血行を促進します。日常でスポーツ選手ほどの運動をする人は少ないですが、スポーツ選手の真似をして、なんでもかんでも冷却スプレーで冷やそうとするおじさんは痛いです(色んな意味で)。

塗り薬や貼り薬には冷感タイプと温感タイプがありますが、どちらを使うか間違えないように注意して下さい。間違うと逆効果です。
中には「湿布は冷蔵庫で保管する冷たいもの」という認識の方がいらっしゃいます。温感タイプの湿布などは認めたくない人達です。効いてる感じがしないのでしょうか。冷たいほど効く、そして臭いほど効く、という認識とは今日でさよならしましょう。

筋肉痛の予防にベストなのは、日頃から鍛えておくことです。筋トレしましょう。でも筋トレすると筋肉痛になりますね。筋肉痛を予防するための行動で筋肉痛を呼んでいます。しかしこれがベストです。日頃から筋肉痛になるほどのトレーニングをしていると段々と筋肉痛になりにくくなります。何故でしょうか。

筋トレと筋肉痛

実は筋肉痛から回復する時の筋線維は、前より太く大きくパワーアップします!これを「超回復」といいます。筋トレをして筋肥大させるにはこの超回復を繰り返すしかありません。
そうめんの束を一本一本スパゲティに入れ替えていくと段々と束が太くなります。更に一本一本うどんに替えたらもっと太くなります。このように筋線維を傷つけたり超回復させたりを繰り返すとデカくなります。

ちょうど良くトレーニングできれば必ずしも筋肉痛になる必要はありませんが、筋肉痛になるほどトレーニングを繰り返していくとデカくなれます。簡単に言うとそういう事です。よって鍛えてる人には筋肉痛はむしろ喜ばしい嬉しい事です。嬉しい悲鳴です。かなり追い込んだつもりでも筋肉痛にならなかったら落ち込むものです。筋肉痛になりたくてトレーニングしていると言っても過言ではありません。

そして筋肉痛がある時はその部分のトレーニングはしないのが定石です。しかしじっとしている訳ではなく、前述の通りに軽い運動で回復を早めます。そして1年後の運動会では筋肉痛にならないパパさんになれるのです。そして子供が少し物足りない顔をするのです。翌日の筋肉痛までが運動会だからです。


さて今回のnoteは以上です。筋肉痛について新しい発見があったでしょうか。私は乳酸犯人説しか持っていなかったので調べながら驚きました。時代は進んでいますね。所々ふざけながら書きましたが、最後まで読んでくれてありがとうございます。次回も読んでくれたら嬉しいです。また次回お会いしましょう。

※筋線維か筋繊維か。表記が揺れているようです。今回は筋線維という表記にしました。

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