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大人のコミュニケーション問題の根っこには子どものころの“呪縛”があるのかも 『これからの男の子たちへ』 #608

わたしの生きている社会は、なんと「呪いの言葉」に満ちているのか。

「女らしさ」「男らしさ」は、押しつけないように気を付けていても、社会の中で発せられるメッセージの中に含まれていることが多いんですよね。暗にすり込まれた“らしさ”は、いつしか自分を縛るものになってしまうのではないでしょうか。

弁護士である太田啓子さんの著書『これからの男の子たちへ:「男らしさ」から自由になるためのレッスン』で繰り返し語られているのは、弁護士として見聞きしたことや、ふたりの息子さんの子育てから感じた「呪縛」について。エッセイストの小島慶子さん、桃山商事代表の清田隆之さん、小学校教師の星野俊樹さんとの対談も収録されています。

わたしには弟がひとりいますが、子どものころは言葉が遅くて、どんくさくて、なのにとても無邪気で乱暴でした。わたしが活発な方だったこともあって、親戚からはよく、

「あんた(わたしのこと)が男の子やったらよかったのになー」

と言われておりました。

姉・わたし・弟の3人きょうだいの中で、自他共に認める「弟だけ特別扱い」を受けて大人になったわけですが。本を読みながら「大人のコミュニケーション問題って、けっきょく子どものころにどんな“呪縛”をインストールされたかにあるのかも」と感じました。

本の中で太田さんは、「男の子の子育てで引っかかる三大問題」について提起しておられます。

・男子ってバカだよね問題
・カンチョー放置問題
・意地悪は好意の裏返し問題

「男の子だから、こうなんだ」と問題をスルーしてしまうことで、後々、自分や相手の身体を粗末にしたり、相手の気持ちを慮れなくなったりする可能性があるのではという指摘です。

「男っていつまでも少年みたいなもんだから」を言い訳にしない世の中へ。ホモソーシャルな同調圧力から逃れる勇気と教育も必要だとしています。

本の中でも触れられているジレットの啓発動画「Is this the best a man can get?(これが男ができるベストなのか?)」に、日本語字幕が付いているものを見つけたので、ぜひ観てみてください。

かつて武勇伝のように語られた「スカートめくり」が廃れていったように、性暴力を「笑い」や「やんちゃ」で片付けてはいけない。そして女の子だって、人の目を気にして「バカなフリ」をしてはいけない。

「女らしさ」「男らしさ」と、いつのまにか押しつけられる規範から、もっと自由であっていいという言葉は、とても勇気づけられるものでした。それと気づけば、少しずつ、ひとつずつ、脱ぎ捨てられるものなのですよね。

このところ、続けてフェミニズム関連の本を読んでいたのですが、この本で紹介されていた「有害な男らしさ」の説明が、とても分かりやすかったです(元は『男らしさの終焉』という本から)。

社会心理学者が定義した「男性性の4要素」による圧力=有害な男らしさが、男性も女性も苦しめる原因になっているのかもしれません。

①意気地なしはダメ
②大物感
③動じない強さ
④ぶちのめせ

子育て中の方はもちろん、「有害な男らしさ」にピンとこない人ほどおすすめの本です。女性の不安や悩みについて、「気づかずにすむ」「知らずにすむ」「傷つかずにすむ」ことは、やっぱり「特権」なのだから。

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