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文豪の愛したお店にGO 『散歩のとき何か食べたくなって』 #251

文豪には食通が多いと思いませんか? 池波正太郎や檀一雄、谷崎潤一郎ら、名だたる作家は食に関するエッセイを書いています。もちろん、食い道楽でもあったのでしょうけれど。

なにげない素朴な食べ物に感動する心。それを表す言葉。

それがあったから、食通という印象ができあがったのかもしれないなと思います。

池波正太郎の時代小説『鬼平犯科帳』や『剣客商売』には、いかにもおいしそうな食べ物が多数登場します。それらの中には池波自身が食べ歩いて出会ったお店をモデルにしたものもあるそうです。

本で紹介されているお店は、いくつか回ったことがありました。

まずは「駒形どぜう 本店」。1801年創業の浅草名物「どぜう鍋」のお店。建物が歴史博物館のようで威厳があります。

そして「並木藪蕎麦」では鴨南蛮を。しょう油だしに鴨の脂が溶けていて、おだしにパンチがありました。

あと、忘れちゃいけない甘いもの。「甘味処 竹むら」は、1930(昭和5)年創業当時の建物そのままなのだそう。ここでは「粟ぜんざい」を食べました。

池波先生も「粟ぜんざい」が好きだったそうで、『ずっしり、あんこ』というエッセイ集にも出てきます。『鬼平犯科帳』に登場する「汁粉屋」は、このお店がモデルといわれているそうです。

軽やかでユーモラスな筆致は、料理の味そのものを云々するより、そのお店に行くまでのシチュエーションや、料理にまつわる思い出話の方が多い。

情報<<<情景

なんですよね。おいしいものにまつわるすべてのことへの愛着が、読む人をお店へ向かわせるのかもしれません。

アンジャッシュの渡部建さんが「食事内容をメモしてアウトプットすることで、自分の味覚は少しずつ研ぎ澄まされていく」と語っている記事を読んで、しばらく友人と「食事メモ」を書いていました。

<食事メモのやり方>
朝昼晩の食事について、何を食べたか・食べてどうだったか程度をメモする。食材の分析や隠し味について書けるレベルではまったくないので、そこは無理をせずに書ける範囲でやります。

食事の内容をメモして分かったのは。

友人:接客が気になる→食事の雰囲気が大事
わたし:食感が気になる→飽きずに食べられることが大事

それぞれの気になるポイントにもう少し集中してみたら、愛着のある書き方ができるようになっていくのかも。そしてわたしが読みたいものは、情報よりも情景からにじみ出る愛着なのだなと気がつきました。たぶん、わたしに一番ないものだから。

池波正太郎は若いころ、株式仲買の会社で使い走りをしていたそうです。チップを貯めて自分でも投資。なかなかの収益を上げて、観劇に行ったり、吉原に行ったりしたのだとか。自分に投資して得た体験こそ、創作の力になるんですね。

本には、古きよき江戸の風情が根こそぎ消えていき、「経済成長という名の破壊」が正当化されることに対する嘆きもあります。3月14日に開業した高輪ゲートウェイ駅とか新国立競技場なんて見たら、なんて仰ったかな。


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