物語の構造論からみえる、ヒットの法則とは #167
1961年にスタートしたNHKの連続ドラマ小説。2019年度後期の「スカーレット」の平均視聴率は20%前後、「オリコン ドラマバリュー」のドラマ満足度調査の結果も上昇中だそうです。
一方で、民放の秋ドラマの全話平均視聴率はというと、
ドクターX ~外科医・大門未知子~(テレビ朝日系):18.4%
相棒 season18(テレビ朝日系):14.6%
グランメゾン東京(TBS系):12.4%
同期のサクラ(日本テレビ系):10.9%
こんな感じでした。
わたしの周囲では「グランメゾン東京」が話題だったのですが、それでもこの数字だったんですね……。
もちろんNHKの連続ドラマ小説にだって暗黒時代がありました。1970年代から80年代は常に視聴率40%前後でしたが、90年代は20%台へ、21世紀に入ってからは10%台へと落ち込みます。
それが「朝ドラ・ルネッサンス」によって、大健闘するようになったとメディアプランナーの指南役さんは指摘しています。その躍進の秘密を探った本が『「朝ドラ」一人勝ちの法則』です。
朝ドラの96作品を分析し、探り当てたヒットの法則が「朝ドラの基本法則“7つの大罪”」です。
<7つの大罪>
・能天気なオープニング
・無駄に前向き
・ぽっと出のヒロイン
・ノスタルジー狂
・夫殺し
・故郷を捨てる
・大阪に丸投げ
この法則と「戦争がドラマをつくる」の黄金法則を組み合わせ、回復の兆しを見せたドラマが「ゲゲゲの女房」だそう。上の黄金法則に当てはめるとこうなります。
・能天気なオープニング
→ いきものがかりの歌う明るい曲調のオープニング
・無駄に前向き
→ ヒロインがトボけた感じで常に前向き
・ノスタルジー狂
→ 舞台が昭和30年代
・夫殺し
→ 義理の父親が亡くなる
・故郷を捨てる
→ 物語が動き出すのは、ヒロインが結婚して上京してから
7つのうち、5つを満たしていたことから、「久しぶりに朝ドラらしいドラマだ!」と受け入れられたのではないかとのこと。
朝ドラの特徴のひとつが「習慣視聴」です。なぜかわたしはずっと朝ドラの放送時間とタイミングが合わず、ほとんど観たことがないのですよね。そこでずっと観ているという人に聞くと、
「ドラマが終わったところで身支度が終わってないと遅刻する」
という意見があり、なるほど、時計代わりになっているのだなーと納得しました。逆に、わたしのように時間帯が合わない人にとっては、永遠に観ることができない秘境だ……。笑
本には、この朝ドラの黄金法則を基にした、民放の連ドラについても解説があります。
90年代から今日までの連ドラで最も変化したもの。それは「芸能プロダクションの発言力」だそうです。ネット配信で制作された作品の中におもしろいものが増えているいま、連ドラは変われるのでしょうか?
フランスの批評家ジョルジュ・ポルティの「物語の36局面」など、物語論にも多くが割かれているので、そうした「構造論としてのドラマの見方」に興味がある方にもおすすめです!