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一冊の掘り出し物を巡る、人生劇場 『ブックオフ大学ぶらぶら学部』 #527

「みんな、ブックオフで大きくなった」

そんなキャッチコピーが付いている『ブックオフ大学ぶらぶら学部』は、思わず声を出して笑ってしまうくらいおもしろかった本でした。

ライターの武田砂鉄さんや、夏葉社代表の島田潤一郎さん、本屋さん店主の小国貴司さん、佐藤晋さん、馬場幸治さん、山下賢二さん、“せどらー”のZさんがそれぞれ「ブックオフ」にまつわるコラムを寄稿、大石トロンボさんによるブックオフ大好き青年のマンガが掲載されています。

そもそもは島田さんと、ブックデザイナーの横須賀拓さんとのおしゃべりから始まったという一冊です。

「BOOK・OFF」直営1号店がオープンしたのは、1990年5月のこと。今年はちょうど30周年にあたります。

わたしが当時住んでいた京都にはお店がなく、東京に来て初めて行ったように記憶しています。で、例に漏れず、わたしも毎週のように通うようになりました。

2000年代の中頃、新宿御苑と高田馬場と新橋と池袋に仕事の現場があったため、その周辺の「ブックオフ」に通っていたのですが。棚から本を出して積み上げ、携帯をカシャカシャしている人たちをよく見かけました。後で友人に聞いたところ、その人たちこそ“せどらー”と呼ばれる職業(?)の人たち。

“せどらー”とは。

「ブックオフ」で安値で並んでいる本を仕入れ、Amazonやヤフオクで高く売ること。いまでいう「転売ヤー」でしょうか。わたしがしょっちゅう古本屋に通うことを知っていた友人が、「副業のつもりでやってみれば?」とシステムを説明してくれたのでした。

でもわたしは本を「自分のもの」にしたい方だったので、とても「売る」ことはできない。しかもその売り方は、なんだか「本好き魂」に反するような気がしてしまったんです。

そんな“せどらー”の生態と、「ブックオフ」との闘い(?)について書かれたZさんのコラムは、特におもしろく読みました。

あの頃。携帯をカシャカシャしている人たちの真剣な眼差しは、今も覚えています。マグロの競りにも劣らないような、ガチのオーラ。いかに手早く本を読み込むかにかけるプロの手さばき。

いやー、やっぱりわたしにはムリだったねと、この本を読んで思いました。

郊外の「ブックオフ」巡りの旅や、105円でヘアヌード写真集を買った青春の日。どれも自分を見るような気がしてしまう。そして本を読み終えたいま。猛烈に、青と黄と赤の看板に向かいたくなっています。気になる本があったら、とりあえず「買え!」を教訓にしたいと思います。

本の裏表紙もまたステキです。思わず剥がしたくなってしまうけど、これは印刷なんです。笑

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