“制服”の下にある喜びと悲しみ ドラマ「ライブ~君こそが生きる理由~」 #491
正義感だけが理由じゃない。警官だって人間だ。
そんな当たり前のことに気がついて、ハッとさせられたドラマが「ライブ~君こそが生きる理由~」でした。
就活に失敗した者、勤め先の会社が起こした事件に巻き込まれてしまった者、さまざまな事情を抱えた若者たち。熾烈な競争を経てようやく警察官になったものの、毎日酔っ払いの相手をさせられるばかり。
一方、管理職世代は「組織の論理」に振り回され、家族の問題にアタマを悩ませる日々。
韓国で最も忙しいといわれるホンイル分署(日本でいう交番)を舞台にしたストーリーです。
AmazonプライムやNetflixで配信されていますが、Netflixだと、なぜか各話のタイトルの和訳が出ないのでAmazonプライムの方がいいかも。
主演のチョン・ユミは、パニック障害の母を支えながら働く女性です。過去に痛ましい事件を経験していて、その時助けてくれたのがペ・ジョンオク演じるアン・ジャンミチーム長。
彼女は夫のヤンチョンに離婚を切り出すのですが、そのスキを狙って元彼ギョンモが接近してきてやきもき。ヤンチョンは、強行班のレジェンドと呼ばれていますが、事件の責任をとらされて降格……と、みんななかなかにハードな人生を生きています。
これまでの警察ドラマでは、ストーリーの中心が「事件」でした。でもこのドラマは、交番で働く警官たちの人間ドラマがメインです。訓練を受け、警官になったとはいえ、人間です。血の海に震えることもあれば、酔っ払いに暴力を振るわれることもある。また、凶悪な事件を追っているからといって、家族の問題は待っていてくれません。
「制服」に隠された喜びや悲しみ、痛みという人間的な姿がとても胸に迫ってくるドラマなんです。
ぶっちゃけ、韓国ドラマは導入部がゆっくりしているか、ラストがドタバタしているか、どちらかのパターンが多いんですよね。大人気のドラマ「愛の不時着」だって、第1話はほぼ森の中を走り回っているだけです。笑
でも「ライブ」は、後半にいけばいくほど、じんわりと沁みてきた。
特に、妻から離婚を切り出され、父とも対立し、子どもにはバカにされ、同僚を死なせた警官として処分を受け、身も心もズタボロのヤンチョンを演じたペ・ソンウがよかったです。
映画「ベテラン」などでは、ちょっとマヌケな役を演じていますが、こんなに深い悲しみの表現ができる俳優だったなんて。
チョン・ユミは、「82年生まれ、キム・ジヨン」の主演を務め、韓国のアカデミー賞とも称される「大鐘賞映画祭」で主演女優賞を受賞した俳優です。
彼女に恋しつつ、ヤンチョンにしごかれてヘロヘロのサンスを演じるのは、イ・グァンス。バラエティでも活躍する俳優で、「探偵なふたり リターンズ」という映画でもコミカルな姿を見せてくれています。
演技派俳優が勢揃いしたところに加えて、「人間ドラマの旗手」ノ・ヒギョン脚本家の作品です。これは何度も観たくなるドラマでした。
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