読んでいる“わたし”との「対話」をうながす 『ロバート・ツルッパゲとの対話』 #287
「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」
一年前に「ありがたやー」と覚えたTipsのうち、いまも役立っている、活用しているものってどれくらいあるのだろうと思います。特に、自宅で仕事をする人が増えた現在、重要度の高いTipsは様変わりしていますが、再び街に出られるようになった時には、また変わるかもしれない。
難しいことをカンタンに説明するハウツー本はたくさん出版されていますし、そうした本のお世話になったこともありますが、コピーライターの谷山雅計さんは「世の中、分かりやすさを求めすぎているのでは。それでは知性が衰退してしまう」と疑問を投げかけています。
確かに、わざわざ時間を捻出してでも「読みたい」と思う本は、ちょっと違うんですよね。なかでも骨太の話で、サラッと読み流しただけではよく分からない本。一文を何度も読み直して自分なりの考えを促す本。読めば読むほど良さがわかる本。
そうした本をわたしは「スルメ本」と呼んでおります。
今日は今年読んだ中で一番の「スルメ本」である『ロバート・ツルッパゲとの対話』について書いてみたいと思います。
著者のワタナベアニさんは、写真家でアートディレクターをされています。noteの更新が多いので、追いかけるのが大変。笑
アイコン写真が強面なので、さぞかしオラオラな方なんじゃ……と思ってしまうのですが(失礼)、本を読むとまったく印象が違います。
たぶん、今の時代、こういう「背中で語る大人」が必要なのではないかと思うのです。日常の所作について、美しさについて、仕事について、話は多岐にわたり、その中で「ロバートの名言」が紹介されています。
「利口とはバカが退化したものだということを忘れてはならない」
「日本人はルールを守る品行方正な国民なのではなく、ルールを破っている人を見つけたら責め立てて守らせるのが好きな国民である」
言ってはならないことをサラリと言ってしまう「ロバートって誰やねん!?」と思った方は、本で確認してね。
この本がいいなと感じた理由は、「対話」であることです。
「対話」と聞くと、ソクラテスとプラトンの『対話篇』を思い出します。ベストセラーとなった『嫌われる勇気』もやはり、青年と哲学者との対話形式でした。
『ロバート・ツルッパゲとの対話』は、実際には対話形式ではありません。著者であるワタナベアニさん自身が自分に問いかける「対話」であり、ロバートとの「対話」でもあり、そして読んでいる“わたし”との「対話」でもある。
だからあんまりサクサク読み進められる本ではないです。何度も何度も同じ文章を読みながら、自分に問いかけてみるのがおすすめ。
わたしが学んだコーチングもやはり、「対話」の技術を重視していました。相手と対話することを通して、相手の行動を支援するのがコーチングです。そのために必要なのが傾聴と想像力。
「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」
そう言われるまでもなく、手っ取り早く鍛えられるものでも、本を読めば解決する能力ではないわけです。
そこで今週の「#1000日チャレンジ」のテーマは、想像力を刺激してくれる本にしました。こういう「すぐに役に立たないけど、いつか役に立つ“かも”しれない」本の一文は、なぜかずっと心に残ります。
ワタナベアニさんの言葉は、軽いジャブから大砲級まで取りそろえて刺激してくれますよ。ププッという笑いと一緒に、ね。
現在、「#うちのツルッパゲさん フェス」を開催中だそうです。ようやく写真のネタを考える時間ができたので、近いうちに投稿しようと思います。表紙が強烈な本との楽しい日常。よかったらあなたもいかがですか?
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