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レストランを舞台に繰り広げられるお料理と人間模様 『タルト・タタンの夢』 #595

我が家で料理をするのは、わたしだけです。在宅勤務となる前は、ダンナは皿洗いさえしたことがない人でした。なので料理なんて。

そんな「ワンオペ家事」のため、料理は、いかに手早く、いかにおいしくつくるかを一番に考えてしまいます。だからレストランで食べる食事には感激してしまうこともしばしば。いかにも「手がかかってます」っていうお寿司を食べた日には、尊敬のまなざしで見てしまう。

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でも、料理人の方からも「見られている」んですよね。近藤史恵さんの小説『タルト・タタンの夢』は、町の小さなビストロが舞台です。お客さまの悩みや小さな事件を解決するのは、シェフの鮮やかな観察眼と洞察力なんです。

<あらすじ>
商店街の小さなフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」。シェフ三舟の料理は、気取らない、本当のフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。常連の西田さんが体調を崩したわけは? フランス人の恋人は、なぜ最低のカスレをつくったのか?

子どものころから読書が好きだったという近藤史恵さん。江戸川乱歩の「少年探偵団」のシリーズや、エラリイ・クイーンの『Yの悲劇』など、ミステリや怪談も読んでいたそう。

そして、最後に何かがひっくり返る「どんでん返し」が好きと語っておられます。

『タルト・タタンの夢』もまさに「どんでん返し」が楽しめるミステリーで、いままで見えていた世界が、シェフのひと言でひっくり返ってしまうんです。といっても、シェフの料理同様、やさしい口当たりなんですが。

毎回、ビストロの看板メニューが登場するので、読んでいるとお腹が空いてしまいます。デザートが魅惑的で、ヤバいです……。

無愛想な三舟シェフに対して、営業スマイルがステキな副料理長の志村さん。町内会の俳句サークルで活躍するソムリエの金子さん、そして新米ギャルソンの高築という4人で切り盛りしている小さなビストロ。

フランス料理のレストランにひとりで入るって勇気がいるけれど。ここならぜひ行ってみたいと思う。そして、三舟シェフを間近でガン見したい。

何を、どこを見れば、おいしさを引き出す瞬間が分かるのか。その観察眼は、人間相手にも発揮されているから。

「ビストロ・パ・マル」シリーズとして、3巻まで刊行されています。一気読みする方のために(したくなる!)、読む順番を載せておきます。

① 『タルト・タタンの夢』
② 『ヴァン・ショーをあなたに』
③ 『マカロンはマカロン』


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