メディア「オワコン説」は本当か? 『メディアの苦悩――28人の証言』 #169
平成という時代を振り返る本を読むと、やはり「インターネット」の影響の大きさを感じます。
日本では2000年12月にNTTが「フレッツADSL」の提供を開始し、手ごろな値段で大容量のインターネット接続ができると爆発的に普及しました。
これによってオールドメディアである新聞・テレビは苦境に陥り、一方で台頭してきたネットメディアは信頼性を何度も指摘されています。
じゃあ、メディアはもうオワコンなのか?
そんな質問をメディアに関わる人たちに聞いた本が『メディアの苦悩――28人の証言』です。
朝日新聞社や読売新聞の社長もいれば、徳力基彦さん、中川淳一郎さんといったネットメディアで活躍している人たちもいます。
その中でわたしが気になったのは、日本経済新聞社のデジタル事業担当という野村裕知さんの発言でした。日経が電子版に舵を切ったことを受けての発言です。
ページビューを編集局の記者に見せるのかどうかは、かなり議論しました。ただ、ページビュー主義に走るから数字を見せないというのは、マイナス思考ですよね。ページビューがどうであれ、書くべきことはきちんと書くのが本来の姿。(中略)自分たちの判断や編集方針を貫けば、数字に踊らされることはない。
この本の出版は2014年なので、およそ5年前の発言です。釣りタイトル、ミスリード、フェイクニュースとPV稼ぎの時代があったことを考えると、この頃からネットを取り巻く環境は大きく3回転くらいしているんじゃないでしょうか。笑
それでも日経新聞は電子版をスタートさせるにあたって「数字に踊らされることはない」と考えていたんですよね。
新聞社なのでライターというよりも「ジャーナリスト」という気持ちが強いのだと思いますが、数字に踊らない「書き手」っているのだろうか?
おもしろいのは、この本の著者である長澤秀行さんが元・電通の広告マンなことです。
「ネットメディアって、メディアというより広告置き場やん?」
と感じていたわたしには、
「メディアがなければ、広告とは生活者にとって雑音に過ぎない」
という長澤さんの発言を読んで、なんだか納得してしまいました。だから、「こうすればPV稼げる→儲かる」式のTIPSばかりが流行るのだなー。
もっと浄化作用が働いて、ネットが本来期待されていた「集合知」となることはあるんでしょうか。