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街路樹について学んでみた

書籍レビュー
『街路樹が都市を作る 東京五輪マラソンコースを歩いて」 藤井英二郎 
2019年 岩波書店



【新しい単語】

「樹冠」…緑の日傘。樹木が枝葉を広げている部分。

「樹高」…樹の高さ。同じ品種でも剪定方法によって低く抑えられることがある。

「透かし剪定」…樹本来の樹高や樹形を保ちながら、風通しや日当たりを改善し、障害物などを避けて育成する剪定方法

「自然生長仕立て」…街路樹の剪定を必要最低限にして、なるべく自然の生育に任せる育成方法

【学んだこと】

現代の課題

・日本はかつて透かし剪定などの丁寧で高度な造園技術を持って美しい街路樹を保ってきた

・しかし段々と街路樹の管理費が削減され丁寧な管理ができなくなっている

街路樹の管理

・街路樹の管理は道路管理者(国道なら国土交通省、都道府県道ならいくつかの市町村域を管轄する土木事務所、区道や市町村道は区役所や市町村役場の道路部局)

・街路樹の管理には高木剪定、低木の刈り込み、除草などの作業が存在する

・実際には各作業は異なる業者に発注されることが一般的(バラバラに作業)

負のサイクル

・委託業者は一般競争入札で最低価格の業者が受注する

・極端に低い価格の業者は採算割れ防止のため、一本当たりの剪定時間をかけられない

・枝の向きや位置を考え、残す枝を見極めて他を切るという丁寧な作業ができず、大事な幹もがっつりチェーンソーで切り落とす、切り込み過ぎ(強剪定)が横行する

・切り口からダメージを受けたり、「ぶつ切り」の歪な樹形が出来上がる、でも次のタイミングでも一番安い業者が請け負うのでまた再生剪定ができない→負のサイクル

・1999年「街路樹選定士」の資格認定制度が始まり、有資格者による作業がもとめられるようになったが、まだ状況は改善していない(特に東京都)


改善に向けた取り組み

・(仙台市)40年以上前から街路樹担当の技術職員、宮城県造園建設業協会、市内造園会社が一体となって、「剪定講習会」を行っている

・実際に技術職員が足袋を履いて樹に登って見本剪定をする講習によって技術が継承されている

・(東京都)東京五輪マラソンの暑さ対策に向けて2016年から樹形拡大計画が進んでいる

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【読後思ったこと】


東京五輪は延期(or 中止?)となっても、街路樹のメリット(街の景観、暑さ対策、災害対策など)の必要性は変わらない。

樹形拡大計画は知らなかったが、都民の一人として、できることならぜひ応援したい。

自然な森の樹々を観た後、都内の公園や街路樹の樹を見ると、ぶつぶつとぶった斬られた枝の気の毒な姿が目についていた。

そのような状況になる背景も今回理解することができてよかった。

緑のないコンクリートジャングルは殺風景で殺伐とした印象を与える。
住みやすい街づくりは簡単ではないし、一個人がどうにかできることではないけれど、今回新型ウイルスの蔓延によって、日本全国、世界全体で古来の人間の自然に近い生活が健康と免疫力維持に重要であるという意識が格段に上がったと思う。

緑や自然が身近にあるメリットに気づいた人が地方に移住する動きが加速するのでは、と思っている。自分自身、「多拠点移住」という言葉を知って、将来の設計図に入れ始めているところ。でも東京には東京の良いところがたくさんある。緑と都心らしさのバランスが日本全体で整うと良いな…と思った。

とりあえず税金の無駄遣いはやめて欲しい。ちゃんとこういう役に立つことに使って欲しい。行政への見方が変わりそう。

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