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独白(多数決なんて、ロクな結果を生まない)

多数決なんて、ロクな結果を生まない。

今のこの国の政治を見てもそう思う。単に同じ政党だから同じ意見に従う。
そんなのは「民主主義」じゃなくて全体主義です。


急成長した企業のトップは、全然部下の言う事なんか聞かずに真逆の事をやって来た。そういう本もたくさん読んだ。だから多数決は決して最善の方法ではないと思っている。(部下の言う事なんか聞かずに真逆の事をやって業績を悪化させた方もいるのかもしれないけどそれは本には残らないので私はその事例をあまり知らない)

「多数決は最善ではない」。それは自分の体験でも感じたことだ。

部活動の幹部決め

高校2年の5月はじめ。
顧問は、「多数決で決めるのが民主主義だ」と言って、部の幹部を投票で決めるシステムにしていた。
当時としては珍しい発想だと思う。周りの部活動は顧問が決めるケースが大半だった。
私はただただ、剣道をやることがおもしろかっただけで毎日部活動に出ていたが、それで「真面目そう」に見えたのか、部長の投票で上位にランクされた。

おいおい勘弁してくれよ。オレがやってもロクな事にならんぞ。そもそも、オレがそういう器じゃないって事は、オレがいちばんよくわかってる! 絶対空中分解するぞ。
そう言いたかったが、言ったところで「役員逃げ」の言い訳だろうと思われるだけだ。

今もそうだが、私は前に立たず、前に立つ人の後ろでそれを支えるほうが向いている人間だ。

ひとり、人間的にもおだやかな人がいたので、彼を強く推薦した。
たしかものすごく票が競り合ったからだったと思うが、「決戦投票」が行われた。
結果、私が選出された。

誰だよ。
人を見る目がなさすぎる。
ホントに疑問しかなかった。

まぁ、「重くて面倒くせえ仕事はあいつに押しつけとけ」という事なのかもしれない。

翌日から翌年まで

「明日、各部の係を決めるので、明日もここに集まってください」と言って解散した。
前年もそうだったので、それにならった。
反対意見もなかった。
ところが、同級生の男子が、ひとりも来なかった。
時間になっても来なかったから、係を決めるミーティングを始めた。
終わりごろになって彼らが全員来た。そして、「お前が勝手にミーティングの日を決めるんじゃねえよ」と息巻かれた。

はぁ?
そう思うなら昨日言えよ!

まったく意味がわからなかった。

その意味不明な言葉以上にショックだったのは、剣道がうまくて影ではリーダーシップを取れるヤツに、ほかの同級生の男子がみんな従った、という事実。

同級生がそいつ側に付いている。
つまりオレは困っても相談する人間がいないって事か。
その事実に愕然とした。
まぁそいつのほうが話もおもしろくてケンカも強いしモテるしな。オレはただただバカまじめに勉強やってバカまじめに剣道をしに学校へ来ているだけ。

「人望の差」である。

当時は顧問に何かを相談するなんて事は考えられなかったし、相談したところで「お前らが多数決で決めた事だろう。お前らでなんとかしろ」で終わりだろう。

他部活動との交渉ごとは全部私一人で参加。
ほかの部は大概2人(部長とマネージャー)だ。
デカくて口の上手い女子2人の早口に詰め寄られて何も言い返せない。
同級生にも頼んでみたが、
「お前部長だろ」
と言われてひとりで参加し続け、他部活動に押し切られて交渉ごとが不調に終われば「お前何やってんだよ」と来る。

お前らのためにがんばる気になるか。

それでも、下級生がいるから投げだすわけにはいかないという意志はあったし、そもそも部をやめてしまえば学校に居場所はない。

半年後、同級生の女子が大量に退部し新たにダンス部を設立した。
さらに数カ月後、「戦友」と思っていた女子がやめた。初心者で始めて努力でメキメキ力をつけていた人だった。
顧問は、多忙を理由にまったく部活動に来なかったから、教えたのはわれわれだった。彼女の運動能力も高かったのかもしれないが、努力をしていたのがよく見えた。
その人の離脱を止めることが出来なかった。同級生だが人間的にも尊敬出来た人の離脱を止める事が出来なかった。
たぶん同期の女子とソリが合わなかったのだろう。

孤立した。
練習場所が取れない時はトレーニングの時間になったが、ひとりで外をランニングした。終わりの時間だけは終わりのあいさつだけする事にしていたが、ある時期からは、私がランニングから帰って来たら誰もいなくなっていた。

少なくとも、同級生の男子全員に裏切られたことは確かだった。

部活動は空中分解していた。

その1年、毎日が長かった。

死にたかった。しかし、

死んだら親が悲しむよな。
ラクな死に方はなさそうだなぁ。
来年の4月の試合が終われば、この苦しみは終わる。

それだけを思い、なんとなく日々が過ぎて行った。

今なら定時制とか通信制の学校も充実しているが、当時はそんな発想もなかった。

最後

2年生の4月末、団体戦に出場した。この大会で2・3勝すれば、翌月の大会に出場できる。しかし、私が全然まともに動けずに負けた。そしてチームも負けた。翌日、幹部の引き継ぎがあって、3年生はそれで「引退」、受験勉強に入った。
「上級生の試合を、自分が終わらせてしまった」
試合終了後、号泣した。

3年生の4月末、やっぱり団体戦で私が負け、チームも負けた。
まったく泣くことはなかった。
「やっと終わった」
それだけだった。この試合で勝ってもう1ヶ月「引退」が延びるのがイヤだったから、負けて清々した。

翌日、幹部の引き継ぎのミーティングがあった。
去年と同じく、「明日、細かい係を決めるんでもう一度教室に集合」と部長が言い、その後、3年生がひと言あいさつを述べた。
私が最後にしゃべった後、同級生が言った。

「お前、泣くかと思ったけど泣かなかったな」

は? 誰がお前たちの前で泣くか! やっと終わった、解放されたって気持ちだけだ。

剣道部は今もまだ同校に存続している。OB会が学校であればたまに行く。で、時折仲のあまり良くない代もあると聞く。そういう時はその高校生に向かって言う。
「オレたちが歴代でいちばん仲が悪い代だった。なにせ幹部引き継ぎの翌日から365日ずっと仲が悪い状態だったからなぁ。それより長い日数、仲が悪いことはないだろ? だから大丈夫だ」

結局、「重い仕事はあいつにやらせておけばいいんだ」ということだったんだろう。

多数決は、ネガティブな要素が入り込む可能性が大きい、と私は思っている。

ネガティブバイアス

仕事の決め事でも、ネガティブな要素が入ってそっちが多数派に流れる事も少なくない。「『今は』やめておこう」という採決も多々発生し、時期を逃す。「あの時やっておけばよかった」は私自身、多々経験している。
私がいた会社が破産したときも、社長はいっさい何も決めず、われわれが何気なくものごとを「ゆるく」決め続け、結局何も変えず、負債が増え続けて行った。社長が終盤に決めたのは、「黒い影」への身売りだけだった。

アメリカは、大統領制を敷いている。大統領にはかなり強い権限があって、議会が(多数決で)決めたこともひっくり返してしまう力があると聞いている。そして、強いメッセージを発信できる。
大統領がロクでもない人間だったら身も蓋もないが、アメリカはこの大統領制があったから強大な国になっていると思う。ロシアや中国もとんでもない強力なリーダーシップが取られている。決してありがたい状況にはないが、「強国」には違いない。日本の弱体化も、この、多数決=善という「民主主義」が要因ではないかと思っている。

だから私は、多数決はロクな結果を生まないと思っている。


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