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アメリカを中心とした近現代史でもある(百田尚樹著)

地上最強の男(百田尚樹)を読みました。
どうやらあまりnoteでは読まれていないようです……

600ページ超

この本は、ボクシングの「ヘビー級」に焦点をあててその歴史を紹介した本ですが、本を手に取った瞬間、
「こりゃボクシングファンじゃなきゃ読まんだろ」
と思いました。

ぶ厚い。

600ページを超えています。文庫本ですが。
しかも紹介しているのは、モハメドアリがジョージフォアマンを破った「キンシャサの奇跡」(1974年)まで。マイクタイソンやラリーホームズあたりは出て来ません。もしそこまで書いてしまったら1冊には出来ない厚さになっているでしょう(もしかして「下巻」出すのかな?)。

アメリカというのはボクシングに対する地位がものすごく高く、報酬はとんでもない高額です。社会的にも地位が高いのかな、と感じさせられたのは、その後のオリンピックでの聖火リレーの時でした。ヘビー級チャンピオンとなったイベンダー・ホリフィールドからジャネットエヴァンス(水泳のスーパースター)を挟んで最後にモハメドアリに聖火が渡され、アリが点灯をしたのです。

https://www.youtube.com/watch?v=4n0a-yNO8fE

これの3時間35分あたりです。アリがボクサーとして残したものは、聖火の点灯者にふさわしいものだったのでしょう。

歴史的背景、ボクサーのその後、涙

この本はボクシング史ではありますが、同時にアメリカを中心とした近・現代史でもあります。二度の大戦やブラックマンデー、マフィアの暗躍などが背景にある中、ボクサーもその歴史に振り回されてしまいます。何よりこの時のアメリカの象徴だったのが、有色人種への差別。それがスポーツの世界にもモロに反映されています。ボクサーは、その時の政治にかなりの影響を受けている事が分かります。それだけ注目されてきたスポーツだった、とも言えるのでしょう。
ただ、ボクシングで名声を得た人物の「引退後」が結構ツラい末路になっていたり涙が出そうな内容です。これはウィキペディアでは出て来ません。
世界史の学習にもなる一冊ですが、ボクシングファンじゃないと読み切れないでしょう。それにしてもこれは膨大な資料を読み込んでなければここまでデータを詰め込む事はできません。書くときは徹底する、はしょっちゃダメ、という執念さえ見えます。百田さんのボクシング熱と歴史好きを感じます。

最後に、作者はアリについて。

その闘いはリングの上だけではなく、国家と大衆を相手にしたものだった。そしてアリはこの二つの闘いに勝利した。自らの信念を曲げることなく堂々と主張を貫き、裁判闘争によって無罪を勝ち取ったばかりか、ついには彼を罵倒し非難していた大衆さえも味方につけたのだ。

614ページ

感想


ボクシングは危険なスポーツです。だからこそ、勝者は「地上最強」の称号を与えられてきました。しかしスポーツが多様化した今「地上最強の男」と呼べるかどうか、明確には言えなくなったのかもしれません。試合の数もめっきり減り、大衆が映像で見る機会も激減しました。
しかし、少なくとも彼らが過ごした当時は、国をも動かしてしまう力を彼らは持っていました。
だから私もボクシングが子どもの頃から好きだったし、今も変わりません。



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至ってごく普通のサラリーマンのつもりですが少し変わった体験もしています。