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映画「モーリス」雑感 (ネタバレ有)

もう散々っくら、ツイッターでも呟き、感想も書き、それでもなお私の頭から消えない映画「モーリス」
まったく同じだ、30年前と。人は変わらないし、成長しない。

どちらかというと、クライヴ演じるヒュー・グラントの妖しい美しさが取り立たされやすいのか、ポスターもチラシも、ヒュー推しだ。
確かに、これヒュー様級の美青年で無かったら成り立たない話ではあろう。
でも私は、主人公モーリスを演じるジェームズ・ウィルビーの、英国紳士然とし、良い所のおぼっちゃんが悪ぶった時にもにじみ出てしまう、その素直な感情表現の仕方に心奪われた。
そして何と言っても雄弁な「ウェーブかかった金髪」が時に心の葛藤を、嘆きを、憂鬱を、語っているのに目が釘付けだった。
たぶん昔観た時は「二人(アレックが入ると三人)かっこいい」という、誰が好みだ、というのは無かった気もする。
というか、内容がこれだから、美青年観れてよかったよかった、では無くて、クライヴ酷い!!何だよ!!(ぷんすか)がたぶん感想だったと思う。
それもまた、今回見返して変わった訳だが…(この辺りはこの前の感想に書きました)

身長もあるし、途中ボクシングをする場面も出るので(スポーツで欲発散ですな)がたいも良く、まあ仕立ての良いツィードのスーツやコートが良く似合う。
クライヴとつい外で抱擁しちゃった時の、セーター姿もさすが英国紳士という感じ。
俳優さんはこの時の役を生きていればいいので、あまりその後を検索しない私だが(まあヒュー様はちょいちょいいろんな所で見かけたし、アレックのルパート・グレイヴスはシャーロックに出てたよね)、
つい検索して、あまり顔変わってないのにびっくりした。老けないのねえ。
着実に自分は老けたわ…(だから、俳優を老けたの何だの言う人は、自分は老けてないのか、と思ってしまう)

最初はほんと、良家の一人息子大事に育てられてきたんだろうなあ…感が出まくり、素直な故、クライヴへの愛を友情と思い込み(なんせ同性愛は罪なのだ、ダメだっつったらダメなのだ)、
クライヴから告白されてからの、驚き、苦悩、でもやはり友情ではない自分の気持ちに気付き、だがしかし身体を交わすことは拒否され、だんだんと病んでいく様は実に見事であった。
催眠療法は当時の精神科だろうし、クライヴからの会話からも心労性の頭痛が頻出している様子が伺われた。
それを観ながら、(この時代精神科にかかってるなんてバレたら最後だったんだろうなあ…、自分の薬あげたい位←ダメです)
と、どう考えてもお薬必要なモーリスを案じていた。

クライヴから愛の告白が無ければ、おそらく自分の性的嗜好に気付くことは無く、母親からの紹介か何かでなんの疑問も持たないまま結婚し、そのままクライヴと友人としてお付き合いしていたのかもしれない。あくまで友人として。
いみじくも幼きモーリスが「僕は、結婚しない」と言ったとおりになってしまった。
罪作りな男だ、クライヴは。
というか、クライヴは自分の性的嗜好に元々気付いていたのか、はたまたバイなのか、その辺りは詳しくは分からなかった。
下世話な話だが、妻と仲むつまじくしていてもそのような場面はなかったし、クライヴが着替える場面で妻があわてて目を逸らしていたので、あまりそういう行為も無かったのかは謎だ。

そして、アレック演じるルパート・グレイヴス、「眺めのいい部屋」にも出てたっけ??という位の記憶力なので、それもまた見直さなければならない。
あの、黒く濡れた様な瞳は、単にお仲間見つけた良かったー!だけではない、野卑だが魅力あふれる青年であった。
襲ったり、脅迫してみせたり、試してみたり、でも素直になってみたり、最後は全て投げ打って眠そうな顔で迎えてくれたり、もう自分を曝け出しまくり、身分違いの恋をゲットだ。狙いを付けたら絶対に逃さないタイプなのだろう。

そして、モーリスももう疲れたんではないか?自分の性的嗜好に背くことを、禁欲であることを。
悪魔が憑いているわけでも、病気な訳でもないのだ(精神的なお薬は若干必要だったかもしれないが)
そこに、自分を好いてくれる同性が現れたのだ。
全て投げ打ってでも、自分を否定しない方に行ったのではないだろうか。
クライヴといれば、心が擦り減っていくのだ、それもあってのすべてを投げ出してのアレックと一緒になることにしたのではないだろうか。
気がかりなのは、モーリスの家一人息子だからお母さん悲しむんだろうなあ…、という点だろうか。
映画はここで終わっているので、実際どうなったのかは分からない。
もしかしたら、身分も違うことで喧嘩してモーリスとアレックが別れているのかもしれないし。
んー、でもアレックの性格上それは無いか、絶対離さないぞ感があったから。
アレックと付き合って、モーリスの心労性の頭痛は治まったのか、それだけは知りたい。

※ツイッターでは呟いたが、一番好きなシーンは、クライヴと会ったばかりのモーリスが、ピアノを弾き、クライヴが食べていたりんごをさりげにモーリスがかじり、それをまたクライヴが…、という何でもないが、これからを暗示しているようなシーンである。
食べている果物がリンゴであるから。禁断の果実だから。


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