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中国小売最前線2019年10月号~新たな商圏構築に臨むOMOの動き~

こんにちは。中国インターネット研究所です。

・中国で消費者向けにビジネスを展開されている
・そのような事業会社を支援する日系企業で勤務していて中国の最新情報を仕入れたい
・日本で中国の情報を仕入れたいと思っている事業開発や起業家の方

を主に対象にし、以下の内容を毎月発信しています。

発信内容

A:中国小売最前線(この記事の内容)
AlibabaとTencentを中心に動く、中国小売業界の最新情報を毎月1回発信

B:中国スタートアップ最前線
Alibaba&Ant Finacial、Tencent、IDG&SequiaCapitalの投資先を一行で紹介し(3ヶ月分を各社まとめて配信)、いくつか気になるスタートアップをピックアップ。中国スタートアップの最新企業を知りたい方におすすめ。
C:中国最前線トレンド
中国現地のレポートやホットなトピックを毎月1つ厳選してお届け。

中国最前線トレンドの過去トピック

・コンビニ:イノベーションのジレンマによりコンビニチェーンが進出できない地域(2-3級都市)でAlibabaが勝つのでは?
・ミニソー:単純な個別事例紹介ではなく、中国特有の新たな業界(洗練された商品を扱う総合新小売業態)として紹介
・生鮮食品Hema:単純なスーパー業態としての面白さではなく、会員化率100%の経営を行うデジタル経営の事例として紹介・団地向け共同購入
:日本ではただの安売りとして拼多多が捉えられていが、共同購入のさらに進んでモデルの可能性(コープのオンライン版)として紹介
・小売向けクラウドサービス:TencentやAlibabaが単純に小売業に進出しているわけではなく、小売業向けへのSaaSを出していることを紹介

筆者紹介

大学時代に上海に2年間在住し中国スタートアップに特化したメディアを立ち上げ、中国市場のリサーチャーとしてVCで働く。
卒業後はメルカリにてアプリのPdMとして1.5年間、中国での新規事業開発のために半年、メルペイに出向し創業時のマーケティングの戦略立案などに約1年従事。
2019年1月より小売・メーカーのデジタル化を支援する上海の企業にてエンタープライズ向け営業をしながら、部門の統括。

メディア記事
中国で「決済革命」の次は「OMO」だ 
・NewsPicks中国特集~【メルペイ家田】僕が、中国ビジネスを学んできた理由
・月刊MD特別寄稿~中国「新小売」のいまとその次に来るもの


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2019年10月の中国小売の動きを紹介しています。1つの記事に平均数百文字前後のコメントをしています。10のニュースを紹介しています。

※最初の3つのニュースは無料で読めます。

新たなドラッグストアのユニコーンが登場

10月23日に、一般輸入貿易品をメインに扱う「KK館」が1億ドルの資金調達を実施したと発表した。企業価値は10億ドルに達し、ユニコーンになったとのこと。同時に2019年小売領域における最大の投資となった。

2019年5月以降、続けて「KKV(家具、生活雑貨)」と「THE COLORIST调色师(化粧領域)」という2つの新ブランドもすでに展開している。

2017年に現在の型となる店舗を作り、300店舗を出店している。(KK館の成り立ちは別の記事で特集します)3000SKUで、毎年5000SKUが入れ替わる。毎月300-400SKUの新商品が並ぶ。標準店舗は300平米。

別の記事によると、平均店舗売上(月)は60万元(1100万円)に達している。日本のドラックストアのような位置づけで、化粧品や食品がメインで、14-35歳の女性が85%を占めている。店内の陳列を簡素に、また自動化や機会化を徹底しており、それらを全て価格に反映し、新しい海外の商品を安く提供することに成功している。

今まで中国でこのような少し高価格帯の商品を扱う小売業態を展開しようとすると、ショールーミングー>Taobaoで購入されてしまうので、実店舗では成り立たないと言われることが多かったが、見事それを打ち破っている。

別の記事で特集を組もうと思う。

画像5

店内の様子。簡素な陳列であることがわかる。

Tmallがスーパーマーケットの商圏をデリバリーで抑えに行く戦略を発表

2019年10月11日にAlibabaがTmallSupermarketの戦略を発表し、全国100都市に20km内の立体的な生活圏を作っていくと宣言した。

2019年4月に5km以内の消費者に生鮮食品を1時間以内で届けるCloser Fulfillment Centerをスーパーマーケットと連携して設立し、そのアップデートとなる。

今回の20kmの商圏で対応するのは、水や油などの商品。注文から半日内に届けるのを目標にしている。SKUは数万単位を想定しているようで、日本だとスーパーマーケットぐらいの規模感になる。

既に蘇州でこのモデルを実験済みで、そのフィードバックを踏まえて全国展開する意思決定をしたとのこと。

スマートコンビニ大手の便利蜂が野菜デリバリーに事業を拡大

中国の経済メディアLinkShopによるとスマートコンビニを提供する便利蜂が野菜のデリバリー事業を始めたと伝えた。

便利蜂はセルフレジを搭載したコンビニで、PBにも創業当初から力を入れており、新興コンビニの中では一目置かれている。(元セブンイレブンの人たちが主力と聞いている)

Tmallが20km以内の商圏を取りにきたと述べたところだ。日本だと商圏毎に実店舗の業態(例えばミニスーパーのまいばすけっとなど)を展開するが、中国では実店舗の「アプリ」に集まった「トラフィック」をベースに、アプリ上で他のデリバリーを軸に「業態」を展開する。

実店舗よりも低コストで展開できるのが強みだろう。しかし既存の他社の実店舗アセットを使っているだけなので、次第に自社で店舗網を構築し、オペレーションを作るところに競争領域が移っていくはずだ。

そのための資金を継続して調達できるか、もしくは既存事業の儲けを新規事業に投入できるかが、今後の戦い方に大きく影響する。便利蜂はスタートアップでコンビニ以外に別の事業がない。資金調達環境がまだ良好なうちに、いかに1つでもこのような周辺事業を軌道に乗せられるかが勝負になる。

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