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探究とこれからの学び

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元家庭科教師が在職中に取り組んだ探究学習や探究をメインとしたマイクロスクール(オルタナティブスクール)でインターンを経験した時の経験、これからの子供の学びなどの記事を中心にまとめ…
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記事一覧

灘でもらった宝物:身近な暮らしにあふれる探究学習のテーマ

1 家庭科での探究的な取り組み「うわあ、すごい!」灘高や灘中で家庭科を担当していた時、夏休みの課題として自由なテーマで探究的な活動に取り組んでもらうと2学期の最初の授業で提出されるレポートの中には、こちらの想定をはるかに超えた素晴らしい内容に出会う事がありました。 そんな時は次の家庭科の時間に、そのレポートの内容やまとめ方、考察等、どこがすごいと感じたか、それをこれからどう展開出来るかなど、その時々に合わせたフィードバックをするようにしていましたが、もっと広く「中高生はこん

「探究学習を進化させる9つのアプローチ」を家庭科での実践を例として思考法で分析

1 はじめに「もっと面白い授業をしてください。」家庭科教師として在職中、一番頭を抱えたのは生徒達からの面白い授業のリクエストでした。 在職していた学校は灘中学という超進学校で、そこの男子中学生が面白いと感じる授業というのはハードルがとても高く、ましてや家庭科という生徒達にとって特に関心が低い科目では何をすれば興味を持ってくれるのかさえ分からず試行錯誤を重ねる日々でした。 その状況の中で生徒達が主体的に関わる事が出来、興味を持って取り組める内容はと考え探究学習を取り入れる事

自分の興味・関心から考える「探究のテーマ」:テーマ決めに悩む生徒のためのアイデア例

1 テーマ決めの難しさ「どんなテーマにしたらいいか分かりません。」在職中、探究学習に取り組んでいた時、生徒達から言われて一番悩んだ質問です。学校などで探究学習を入れようとするとき、最も難しいのがテーマ決めではないでしょうか? 短時間で決まる子もいれば、とても時間がかかかる子もいます。かかった時間の長短とは関係なく探究学習が子どもにとっての成長につながるためには自分で決めたテーマが自分事に出来て探究を深めていける事です。 そこで「テーマが決まらない」「どんなテーマにしていい

探究におすすめの思考法:視点やまとめ方のアイデア

1 はじめに① 探究学習の導入 「この子達にとって一体どんな授業が将来役に立つのだろう?」超進学校の男子校で家庭科を受け持っていた時にずっと考えていた課題です。受験科目でない家庭科は生徒達の関心が低く、加えて生活経験も乏しい生徒達にとっては面白さを感じる要素が少ない科目でした。 「これかもしれない!」一つの大きな転機となったのは〈アクティブラーニング〉という言葉を初めて聞いた時です。"生徒参加型授業”という内容に惹かれ授業に取り入れる事を決めました。 最初に導入したのは

「これからのAI時代 好きなことに没頭する子どもの育て方」講座から知った子どもを取り巻く社会の変化 ~進む親の二極化?~

1 講座を受けた理由は?AI時代、AR/VRなども含めたICT教育、GIGAスクール構想など子ども達の学びの場を取り巻く環境や社会の変化は目を見張るものがあります。その状況の中で子どもと少しでも関わりのある立場にいると「聞いた事はあるけど、よく分からない」「何となくイメージ出来るけど実情は見えて来ない」というもどかしさを感じる事がありました。 そして今、マイクロスクールにインターンとして子ども達と関わるようになると彼らの”未来”の事が気になります。個人でも「10代の子の安

超進学校の家庭科で挑んだ生徒の「ポテンシャル」を引き出す探究学習:取り組みと実践から見えた可能性

1 はじめに3月まで勤めていた超進学校での 家庭科教師の仕事は他校とは大きく違い 家庭科そのものの意味や 学びと生徒達の成長のつながり等 多くの事を深く考える大切な経験となりました。 特に最後の年に取り組んだ探究学習は コロナ禍での特別な実践となり 深く心に残るものとなりました。 その探究学習の導入に至るまでの経緯、 生徒のポテンシャルを引き出す 探究学習にするための準備、 学習の実践と実際の生徒達の様子や成果、 そこから見えて来た事をまとめました。 この探究学習は

昨日から始まった 神戸のマイクロスクール 「ラーンネットエッジ」 でのインターン 今春 家庭科教師を退職した後 久しぶりに 子ども達のいる場に 戻らせていただきました きれいな緑の窓景色 教室のぬくもりのある白木の机 ここでの経験を noteでお伝え出来ればと 思います

変化する”子どもの学び”をどう家庭でサポートしていく?①:学びの変化の渦にいた日々と退職後のサポート活動

1 目の当たりにした変化 「これは大変な事になる!」昨年一斉休校中に学校での授業のオンライン化が推奨され、実際にオンライン授業を体験出来る研修に初めて参加した時に受けた衝撃は忘れる事が出来ません。 まず、今では一般的になったgoogle classroomを紹介してもらい入室の仕方を習い、そのネット上の教室で体験をしたのが次のプラットホームやソフトウエアを使った授業です。 当時初めて知ったgoogle classroom。 ネットの教室内の授業で体験したクイズ形式で楽

受験で変わる親子関係「進路決めでズレる子供と親の想い」と「その後の人生」~受験生ママのサポートを決めた訳~

コロナ禍に翻弄されたこの一年。 突然の一斉休校から始まった 迷走は思わぬ着地点に たどり着きました。 ここでまとめる これまでの学校の変化と これからやろうと思っている 取り組みを通して 受験期の過ごし方や進路選びの 参考にしていただけると うれしく思います。 1 これからの進路選びは?「これからどうなるんだろう?」 多分誰もが思っている事だと思います。 特に”未来ある子供達”が これから進んでいく方向は 「どう決めていけば?」と 悩む親御さんも多い事と思います。 親

変化する”子どもの学び”をどう家庭でサポートしていく?③:まとめ

1 記事を投稿した理由 コロナでの想定外の連続の日々が始まった頃、多くの人は「いつか以前のような日常が戻ってくる」と思っていたのではないでしょうか? そしてポストコロナの社会ではコロナ禍で一般化したオンラインでの教育という新しい学びの場や方法を得て子ども達の学びはより豊かなものになると感じた人もいたかもしれません。 昨年の私は実際に「来年はそうなるだろう」と思っていました。ところが事態は更に変化し子どもの学びについての状況は昨年以上に不安定で、学校に行くかどうかを含め、各

変化する”子どもの学び”をどう家庭でサポートしていく?②:学校現場で感じた学びの現状と辞めたから見えて来た事

1 肌で感じた学びの激変 「どれだけ学び続ければいいのだろう?」絶望的に思える程、2020年は学校で家庭科の講師をしていた私にとって新しい知識や技術を学び、その導入に伴うセキュリティ対策や感染対策に追われた一年でした。その中で子どもの学びに焦点を当てると次のような変化がありました。(私個人の考えです) 【学びの場】 昨年の一斉休校から学校が再開された後、一番大きく変わったと感じたのは”出席”についての捉え方でした。それまでは学校というリアルの場での勉強が当たり前で、特に高

子どもの未来を拓く”学びのタネ”を信じる勇気:変わる学校での取り組みで感じた事

1 はじめに 「今の子ども達が、これほどの可能性を持っているなんて!」学校での実践内容を読んで思わず涙ぐんでしまう程、胸があつくなったのは久しぶりの事でした。 タイトルにも載せた「RITA」という冊子の15号では、私自身が灘中で取り組んでいた家庭科での”探究学習”の内容も最終ページに掲載していただいています。その関係で冊子をいただいたのですが、そこに載っていた他の高校の取り組みがあまりにすごい内容でショックを受けました。 (内容は全てこちらから、ご覧いただけます。)

子ども達が自分らしく未来を「生きる力」とはどんな力?

1子ども達への社会の期待 お読みいただきありがとうございます。 2021年の3月まで学校で家庭科を担当し ずっと取り組んで来たのが 子ども達の「生きる力」を 育むという事でした。 26年間の在職期間中 学校卒業後に社会に出る 生徒達の「生活力」をつける事に加え その時々の時代に流れに合わせて ”社会で必要とされる力”の育成を 心がけて来ました。 退職した今、コロナ禍という事もあり オンラインで様々なセミナーを 受けていると学校現場以外の いろいろな方々が 今の教育現場を

中学受験のなれの果て:その先に見えたものは

以前ライティング講座を受講した時に書いた 「子供の中学受験」をテーマにした文章です。 よろしければ、子育ての参考にしていただければと思います。 【中学受験のなれの果て その先に見えたものは】 雨上がりの夕方、職場からの帰り道。 消防署の前を通る時、いつも思い出す光景がある。 その時、私は走っていた。 携帯を握りしめ必死だった。 何度電話をしても出ない息子の事が心配でたまらなかったから……。  「布村さんの所は、受験させるの?」 この一言から息子と私の中学受験は始ま