「加害者家族」本を読んだ感想

「加害者家族」 鈴木 伸元(著者) ☆4

加害者家族への取材や資料をもとに、これまで光を当てられることのなかった加害者家族の実態を中立的な立場でまとめた一冊。幸せな家庭がある日突然崩壊してしまった加害者家族の体験談、顚末、そして現代社会の問題点から、これからの時代に何が求められているのかが書かれている。もちろん被害者および被害者の家族(とりわけ命が失われてしまったケース)の方が辛い想いをしているのは重々承知しているが、何の罪もない加害者家族が僕ら犯罪者のせいでまともな生活をおくれないくらい辛い状況に追いこまれていると思うと申し訳ないという言葉では表現しきれないような想いになる。

 自分の裁判で情状証人として母が証言台に立ってくれたとき、元々体の小さかった母の姿が、心労や社会からの視線からか、より小さく見えたときには本当に涙が止まらなかったし、あの瞬間が記憶に焼きついて1年以上経った今でも夢に出てくるのだ。

 人というのは人と関わり合って生きていく以上、自分の人生は自分だけのものではなく、自分の行動一つで周りの人を幸せにも不幸にもする。僕は悪事に手を染める前にどうしてそんなことも理解できていなかったのかと後悔しかない。家族に後ろ指が差され、非難の言葉が飛んできていると考えると「やめてくれ、家族は悪くないんだ」と叫びたくなるが、僕ら犯罪者にはそんなこと言う資格はないと気づき、自分を殺してやりたい気持ちになる。

 本の内容に話を戻すが、この本ではアメリカ、イギリス、オーストラリアでは加害者家族への考え方が日本と違い、彼らを支援する制度ができていると紹介されている。もちろん被害者そしてその家族への支援体制が整っていない日本ではまずそちらの方を整備すべきだ。加害者家族への支援は辛い立場にいる家族を救うだけでなく、犯罪者本人が帰る場所を確保して孤立を防ぎ、それが再犯防止という社会的なメリットにもつながると思うので、両方の体制を整えることがより良い日本社会のためにも必要だと思う。

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