「サウスバウンド」本を読んだ感想

「サウスバウンド」 奥田 英朗 

 東京中野に住む主人公二郎はどこにでもいるような普通の小学6年生…ではあるが、公安に目をつけられている伝説の元活動家である父の暴走に振り回されたり、同じ学区の不良中学生に因縁をつけられたりなど人一倍悩みを抱えている。

 そんな悩み多い毎日を送っていたところ、ひょんなことから父が西表島に移住すると言い出し、家族総出で移住するというあらすじの話。

 西表島の人々はみんなが優しく、「モノ」に対する所有欲がないのか、移住したばかりの二郎たち家族のために家、食べ物、農耕機など様々なものを分け与えてくれる。

 その光景は、資本主義、共産主義のどちらにも共通する唯物論的な思想に対して、「本当にそれが最善なのか、幸せなのか」という疑問を持たせてくれる。現代社会は豊かになりすぎたが故に何か大切なものを失ってしまっているのかもしれないと気づかせてくれる。あぁ、沖縄のおじぃ、おばぁたちに会いに行きたい。

 ただ、この小説はおもしろいんだけど、総合的には微妙というか、粗削りだと思ってしまった。というのも、移住までを上巻、移住後を下巻という構成になっていて、少年の苦悩、全共闘、西表のくらしなど色々な要素を入れたかったのかもしれないが、逆につめ込みすぎたが故に、それぞれが薄くぼやけてしまっている。何がテーマなのかがつかみにくくなっているのがもったいないと思った。

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