大好きすぎて
チーかまにはまっていた時期がある。
20代前半から30代にかけて、365日のうち300日は食べていた。
チーかまのチーズは、かまぼこの中に点のように散りばめられている。
そのひとつひとつが濃厚で、噛むとかまぼこ部分からはみ出して口の中に広がる。ほんのちょっとの量なのにインパクトは抜群で、大好きなビールにもよく合い、やめられなかった。
濃厚なチーズはたくさん食べたら飽きてしまうが、チーかまのほんのちょっと具合は、絶妙に後を引く量だった。
5本くらいの束で売っているチーかまに、まとめてかぶりつきたいくらい好きだったが、放っておくと食べ過ぎてしまうので、「一日一本まで」のルールを決めてぐっと踏みとどまった。
とはいえ、ルールは気まぐれで、疲れたり、がんばった日にはもう一本おまけ、なんて遊びも持たせていた。
海苔を巻いて食べるのも気に入っていた。
仕事から帰ったら、ビールとチーかまでまずは乾杯。
チーかま愛の日々は10年ほど続いた。
終わりは突然やってきた。
いつものようにチーかまを買おうと売り場でパッケージを見たとき、
「見ただけで味が分かる」
と、ふと思ってしまったのだ。
晩酌のお供にしたところで、きっと想像通りの味がくる。
それは確信に近かった。
毎日のように食べ過ぎて、瞬間的に口の中で味を再現できるようになってしまったのだ。
もしかしたら、一生分のチーかまを食べてしまったのかもしれない。
ひとが人生で食べるチーかまの許容量を超えてしまい、身体のほうからハイ終了、ってことなんだろう。
大好きだったのに、突然ぱったりと食べられなくなるなんて。
それは初めての体験だった。
以来、チーかまは一本も食べていない。
でも、今でもパッケージを見ただけで口の中で味を再現できる。
唯一のエアおつまみだ。
履歴書には書けない、取るに足らない私の特技。
【おまけ】
ピリ辛とか、濃厚チーズとか色々あるけれど、やっぱりコレ ↓
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