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それは同じ土俵

そのお店に入った瞬間、なんとなく違和感があった。

隣の席との距離がやけに近い。

ここ苦手かも、と感じたけれど、休前日の飲食店はどこもいっぱいで、ほかに入れるお店を見つけるのは難しそうだった。

何より、看板メニューの餃子が美味しそう。まあいいか、と違和感を打ち消し、通された席についた。


隣の席とはメニュー立てのみで仕切られ、ほぼ相席のような形。

会話も丸聞こえで、どうも落ち着かない。

こんなときは飲んで感覚をマヒさせるしかない。

飲み放題の生ビールがぐいぐい進んだ。


しばらくして、空いていた隣の席に、若いサラリーマン風の男性二人組のお客さんが入ってきた。

それほど親しそうでもないけれど、たまたま帰りが同じ時間になったので飲みに来ましたみたいな雰囲気。最初のうちは、仕事の話をしているようだった。


時間がたつにつれ、私と友人もいい感じにアルコールがまわり、おしゃべりに夢中になっていたので、周りのことが気にならなくなっていたのだが、隣の席から時々聞こえてくる言葉をつい耳が拾ってしまった。

女性の容姿をさげすむ単語だった。

気になりだすと、ついつい聞き耳を立ててしまう。

すると、

「〇スのくせに××するな」とか、

「ブ〇は△△する資格はない」とか、

お隣の二人組、お酒が入って気が大きくなったのか、まぁ、出るわ出るわ、聞くに堪えない言葉の数々。


特定の誰かを指すというよりは、一般的な話をしているようだったが、それにしても気分は良くなかった。


一緒にいた友人にも彼らの話の内容が聞こえたようで、なんか勝手なこと言ってるよね、的な目配せを送り合う。

彼らの「女性の容姿論」が延々と続く中、腹が立った私はとうとう言ってしまった。


「その顔でよく言えんな」と。


直接顔を見て言ったわけではないので、彼らに聞こえたかどうかはわからない。


でも、その後ぱたりと容姿の話をしなくなった。

しばらくすると「そろそろ帰りますか」的な空気を醸しはじめ、お店を出てしまったので、もしかしたら聞こえていたのかもしれない。



あぁ、やってしまった…

なんと大人げないことよ。


何の関係もない、酔っ払いのくだらない話なんて、スルーすればよかったのに。

感情にまかせ、容姿いじりに容姿いじりで返すような真似をしてしまった自分にも、後味が悪かった。

これでは彼らと一緒じゃないか。

だから、全然スカッとしていない。



大人の対応。

スルースキル。



そんな言葉が頭の中をぐるぐる回る。

お店に入ったときの違和感は、この展開を察知していたのかと思った。


一夜明け、ゆうべの後味の悪さを引きずっている、この気分を今日は手放したい。




【今日の手放し】

 感情のままに相手の土俵にのっかることを手放す。

 大人の対応、カモン!!



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