元教授がアメリカで30年前に出会った世界の味: 定年退職213日目
前回は留学中に初めて味わったベーグルや絶品アップルジュースについてお話ししました。今回は、アメリカで出会った世界各国の料理について綴ります。
驚いたステーキと鶏の丸焼き
アメリカを初めて訪れた際、食事で最初に驚いたのはステーキの大きさでした。単に大きいだけでなく、その厚みにも目を見張りました。また、食前に出された「ボトムレス・サラダ」にも驚かされました。それは、もちろん器に底がないわけではなく「好きなだけ食べて良いよ」という意味でしたが、その後に控える巨大ステーキを考えると、サラダを充分に楽しむ余裕はありませんでした。(下写真もどうぞ)
ちなみに、アメリカ人にも少食の方はおり、その方から「ドギーバッグ」という文化を教えてもらいました。これは表向きは「愛犬のために持ち帰る」という意味ですが、実際には本人や家族の翌日の食事用になることが多いようです。親しい仲間との会食では、最初にテーブル中央に大きな皿をドンと置き、食べる前にステーキを半分に切ってその皿に置き、帰り際にドギーバッグに詰めて持ち帰る光景もあり、思わず笑ってしまいました。
最も印象に残っているのは、ピッツバーグでのレストランでの出来事です。私は鶏料理を食べたいと思い、店員さんに勧められるまま、よく内容を知らずに注文しました。しばらくすると厨房から運ばれてくる料理に拍手や歓声が上がり、どこに行くのかと見ていると、私の前で止まりました。そうです、私の注文したのは鶏一羽の丸焼きでした。さすがにその量は想定を超えており、とてもおいしかったですがもちろんドギーバッグをお願いしました(価格は日本円で 2000 円ほどで、まさか一羽まるまるとは想像できませんでした)。
教授に連れて行ってもらったタイ料理
アメリカ滞在中、アメリカ独自の料理よりも世界各国の料理との出会いが印象に残っています。当時の日本では(少なくとも私の周りでは)中華、イタリアン、フレンチが一般的でしたが、アメリカではメキシコ料理を筆頭に、様々な国の料理を楽しむことができました。メキシコ料理では、私はタコスやチリコンカン(豆料理)がお気に入りでした。
初めて出会って最も好きになったのはタイ料理です。当時、日本ではまだそれほど一般的ではなかったので、「トムヤムクン」というスープの名前しか知りませんでした。研究室の教授に接待のお供として連れて行ってもらった際(最初は緊張していましたが)、接待どころではなく、その美味しさに夢中になってしまいました。特に初めて口にした「グリーンカレー」が絶品でした。タイ料理は辛いイメージがありましたが(もちろんとても辛い料理もありましたが)、その奥深い味わいにすっかり魅了されました。そのお店には、その後、奥様を連れて何度も通うことになりました。
友人に誘われたエチオピア料理
もうひとつ心に残っている海外の料理は、帰国する日にワシントンDC で食べたエチオピア料理です。なぜ最終日にエチオピア料理?と思いましたが、友人の希望に従って店に入りました(下写真)。ちなみに、ワシントンには私はアメリカ化学会の発表で訪れたのですが、通常の会議場ではなくホテルだったこともあり、友人の奥様がベビーカーを押して講演会場に入ってきました(日本では考えられませんが)。発表中、それを見て驚いたことを覚えています。
アフリカ料理は今まで全く経験がありませんでした。かろうじて「クスクス」は名前が面白いので知っていましたが、実際に食べるのは初めてでした。その時の写真が古いアルバムから出てきましたので掲載します。土佐料理の皿鉢料理のように、多種類の料理が大皿に盛られ、食べる前からワクワクしました。そして、手を使って食べることを勧められ、その食文化体験は今でも鮮明に覚えています。
アメリカでの食体験は、料理を通じて世界の文化に触れる貴重な機会となりました。現地の人々に勧められた店では、必ず素晴らしい味との出会いがありました。やはり実際に住んでいる人の情報は貴重ですね。