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うまく説明できないけど説得力のあるコンテンツの魅力〜ジャニーズ舞台とマヂカルラブリーの漫才に寄せて〜

先日Twitterで見かけた作家の川崎昌平さんのツイート。個人的に共感深度が高くて感動した。

この感覚を共有するのってとても難しいと思うんだけど、川崎さんのイラストと素直な言葉選びがとても分かりやすい!


テニプリに関しては私もミリしらなので分からない(汗)けど、こういう感覚を私も何度か経験した。

川崎先生のテニプリに対する感覚とは全く違うかもしれないけど、「文脈(リテラシー)」に依存していないと思う、特に好きなコンテンツ2つに寄せて語らせてほしい。


ジャニーズ舞台

ジャニーズの舞台は、ジャニーズのファンでないとなかなか触れる機会がないのでは。

Amazon Primeに「少年たち」というかなり昔からある伝統的なジャニーズミュージカルの映画版があるので一応紹介。

あまり馴染みのない人には覚悟して観てほしい一作。

やあ、映画 少年たちを観ているよ。Prime Videoを今すぐチェックする https://watch.amazon.co.jp/detail?gti=amzn1.dv.gti.8cb75f92-5952-2051-d556-6c2d70a698e8&territory=JP&ref_=share_ios_movie&r=web


(今知ったけどアマプラの共有リンク勝手に陽気だな)



ジャニーズ舞台といえばとにかく派手な演出が多い。

身体能力の高いジャニーズJr.(比較的若い、CDデビューしてない人たち)が縦横無尽に動く。


特にミュージカルにおいては、よくよく人が死ぬというのも特徴的。

人が死んであんまり泣けないコンテンツはジャニーズミュージカルくらいじゃないか。

「死」によってジャニーズミュージカルが欲しているのは客の涙じゃないと思っている。

そういった物語はあくまでド派手パフォーマンスをするための口実トリガーなのではないか。


とにかくジャニーズの舞台は、客を楽しませるための身体パフォーマンスに抜かりがない。
パフォーマンスのために物語が存在しているかのよう。



例えば有名どころでいうと、堂本光一さんが演出を手掛け座長も務めるEndless SHOCKの「階段落ち」なんかがある。


劇中の劇団でコウイチを敵視するライバルが「何があってもショーは続けなくてはならない」というコウイチの強気な姿勢を試すため、本番中に使う模擬刀をホンモノとすり替える。

本番中、それに気づかない演者から刀を渡されたコウイチはホンモノの刀であることに気付くが、"Show must go on"を貫くためショーを止めず死を受け入れてしまう。

という流れ。

仲間から刺されたあと、血塗れで階段から落ちる光一さんのド迫力たるや。

とはいえEndless SHOCKはジャニーズミュージカルの中でもかなり文脈がしっかりしてて、階段落ちもフライングも受け止めやすい。

ジャニーズ舞台に馴染みがない人でも楽しめると思う。


冒頭で触れた「少年たち」は、ポスターから見てもわかる通り、牢獄の中で派閥が二分化する囚人たちの敵対関係が特徴的。


ちなみにこちら最新公演のポスター。

少年たちのポスター、ダサいで有名だったのにオシャレになったじゃないか。。

この作品も、敵対する構図を描きたいがために牢獄というシチュエーションが用意されたんでは?と思わざるを得ないキャスティングが定番。

ABC-Z vs Kis-My-Ft2
Snow Man vs SixTONES   など。


喧嘩シーンも脱獄で手を取り合うところも良いけど、「ライバル」という曲をチームのトップ同士が歌い合うシーンを楽しみにしてる人も多いんでは。


ジャニーズタレント内の縦横の関係性が大衆に共有されているというジャニーズエンタメの旨みを存分に味わうために物語が用意されてるかのようである。

もちろん関係性を知らなくても見応えバツグン。


整合性のないパフォーマンスは純粋に受け入れづらくなる。だから物語をあてがえる。
そういう、魅せたいものを魅せるために物語という名の説得力で寄り添う姿勢がとても好きだ。


ジャニーズエンタメはよく「トンチキ」と表現されるが、その代表格に滝沢歌舞伎があると思う。滝沢歌舞伎は、演者に好きな人がいないジャニーズファンからの評価が二分化している印象。

私はSnow Manが好きなので、滝沢歌舞伎ZEROというタッキーが引退した後の作品が好きだ。

滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie (DVD2枚組)(通常盤) https://www.amazon.co.jp/dp/B08WSMBPYQ/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_YQWH80XN0DKW9HCS3P65?_encoding=UTF8&psc=1

映画もあるよ↑


滝沢歌舞伎は、まずもって構成が一風変わっている。

一部では楽曲や歌舞伎などのパフォーマンスが複数披露され、二部では江戸が舞台の演劇が行われる。


二部は大衆演劇チックで、導入部分は「お江戸でござる」みたいな感じ。

途中から、戦いシーンで犬が悪役を水攻めにして圧勝したり、悪役が主人公側の正義派に寝返って梯子からイナバウアーしたり、しまいには大量の小判が降ってきて急にハッピーエンドが訪れたりする。最高?

これも言わずもがな物語には必ずしも要らないパフォーマンスで、ひたすらに見応えだけがある。物語の内容は二の次な感じである。


特に好きなのが一部。

一部はもう説明ができない。雰囲気を無理やり例えるなら宝塚のレビューとかが近いのかな?宝塚に無知すぎるので怒られそう。忘れて下さい。


よそのジャニーズソングをコンテンポラリーダンスを添えて披露する場面があったかと思いきや、急にステージ上の全員が何かを探してさまよい始めて大雨の中踊り狂い始めたり。

アニソンみたいな女性歌手のオリジナル楽曲に合わせて、現代チックな衣装でパワーダンスを披露していたかと思ったら、時代劇のセットが現れて弁慶と牛若丸が登場。

気付いたら歌舞伎が始まっている。

といった内容。・・・内容とは?


言葉にするとやっぱりちんぷんかんぷんで、まさに「トンチキ」。

ただ、Snow Manの身体能力と、アイドルを見に来た客に対して正しく圧倒的な表現力が理屈や論理を黙らせてしまうのだ。

説明できない。言語化しても意味がない。

でもパフォーマンス力と迫力あるそのステージに果てしない説得力があるから、永遠に見れてしまう。ないはずの世界に飲まれてしまう。


このように一見するとその突飛さで客を突き放しているようで、最大限魅せるための説得力をもたせることに抜かりがないもののひとつに、マヂカルラブリーの漫才がある。


マヂカルラブリーの漫才

昨年チャンピオンに輝くまで、2017年のM-1はマヂカルラブリーの黒歴史として語られることが多かったように思う。

私にとってはひたすら衝撃だった「野田ミュージカル」と呼ばれる例の漫才。

ボケの野田さんが野田ミュージカルを開催する様を村上氏が見ている。が、なかなか本編が始まらず野田さんがミュージカルに見せかけた客役ばかり演じる。
みたいな感じ。

こうやって言語化すると単純になるけど、実際にネタを見たとき腹を抱えて笑ったし、すぐにもう一度見たらさらに面白くて涙が出た。

でもうまく説明できない。面白い理屈が。

マヂカルラブリーのネタは「漫才論争」を起こしたことからも察せられるように、少なくとも言葉遣いやワードセンスといった言語で笑わせる漫才ではない。

ストーリーも伏線もない。綺麗なオチとかもあんまない。
文脈が存在しないのだ。

なのに笑ってしまう。どうしても泣くほど爆笑してしまう。なんで笑ってるのかよく分からない。

笑うときの姿勢というか種類というか、笑い方も他の漫才師とはどこか違う。

敢えて説明しようとするなら、共感に依存していないのに感覚を共有するのが上手い、ような気がする。


最近のハライチのターンで岩井さんが挙げていた「あるある」理論でまさに語られていたけど、こうした共感は多くの人が共有できる日常的なものでありながらニッチであればあるほど面白い。

この笑いは説明がつくから発見しやすい。ネタを作る時の指針にもしやすそうだし、どうして笑っているのか自覚できる。


しかしマヂカルラブリーのネタでは、奇抜なシチュエーションや存在しない生物、目に見えない概念が、野田さんのマイムを通じて表現される。

日常から逸脱した共感とは程遠いものを提示しながら、しかしマイムと村上さんの補足的なツッコミによって全員が見たことのないそれを共有する。

少なくとも「あるある」ではないのに、共感のようで共感でない、彼らの世界を突き放すようで突き放せない感覚で笑ってしまう。

野田さんのマイムと村上さんのツッコミは、マヂカルラブリーの奇抜なネタを笑うための説得力だ。


マヂカルラブリーの漫才では、野田さんのマイムの上手さも、野田さんの創る世界を補完する村上さんのツッコミも、そして小道具やセットのない漫才の強みも味わえてしまうのだ。


どちらかというとコントが大好きだけど、「野田ミュージカル」を見て、コントよりも無限の世界を広げる人がいることに驚いた。


それからそういう漫才師を探し続けてるけど、マヂカルラブリーほど突飛でありながら説得力と大衆性のある芸人さんをまだ見つけられてない。


どなたか知っていたら教えてください(笑)


ちなみに漫才じゃないけど、マヂラブの魅力がたっぷり詰まったこちらが本日中で購入できなくなってしまいます。一見の価値ありですのでぜひ!!!





ジャニーズ舞台とマヂカルラブリーの漫才に寄せて、文脈に依存しない説得力のある大好きなコンテンツの魅力をつらつらとお送りました。

こういうコンテンツは賛否両論生まれやすいように感じるけど、魅力でいっぱいなんだよということが伝わったら嬉しいなーと思う私でした。




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