久しぶりの運動
通勤で乗り換える駅にはクソ長い階段がある。
クソ長いくせにエスカレーターはない。
本当に東京か?ここは。
今日も仕方なくそのホームに上がる階段を登っていると、ホームに電車が着いたようで、周りの大人が全員ダッシュで階段を駆け上がり出す。
さすが駅。
高確率で良い大人が必死になる滑稽な様が見れる聖地。
私は、まあ1本くらいなら見送れる余裕あるなと思いゆっくり階段を登っていた。
すると前を歩いている人のポケットから定期入れが落ちる。
本人は必死に駆け上がっているため気づかず、近くの大人たちも電車のことしか見てない。
やばい。
あんな急いでるのに駅着いたら定期なくて立ち往生するやつ!!と思い、急いで定期入れを拾って持ち主を追いかける。
私もよく物を落とすのでその痛みがよく分かるのだ。
しかし私は常時運動不足の小娘。
最近体重が5kgも増えて死ぬほど身体が重い。
全然追いつかない。
歩いても変わらんのでは?くらい距離が縮まらない。
「すいませーん!!落としましたよー!!」
声をかけても届かない。
なぜなら私はちょうど空気に溶ける音程かつ全く通らない声質の持ち主。
しかも照れを捨てきれない。
虚しく雑踏に消えてしまった。
ゼーハー言いながらなんとかクソ長い階段を登り切った瞬間、その人は駆け込み乗車に成功。
あーあ、立ち往生するやつ。
せっかく急いだのが仇となったやつ。
急がば回れは金言すぎる。
私の周りでは、駆け込み乗車に失敗した大人たちがゼーハー言いながら急激に速度を落とし、全く気にも留めてませんし別にみたいな顔して歩き出す。
仲間だと思われたくない。
私は全員に対してやれやれと思いながら長い階段を下って改札の駅員さんに定期入れを渡す。
そしてホームに戻ろうと振り返るとクソ長い階段。
この世の全てに対してやれやれと思いながら階段を登った。
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