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ショートショート:デジタルバレンタイン

左手首につけた端末が振動して、何かの通知を知らせる。画面をタップすると、ぱっと光が広がり、見たことのない、花のようなものが映し出された。
花はゆっくり一回転するとさらさら消え、代わりにやはり見たことのない文字が浮かび上がる。文字は少しずつ、僕の使っている言語に変換されていった。

『あなたの星では、この日に大好きな相手へ花を送る文化があると知りました。アイラブ、ユウ』

しっかりと文章を読みこんでから、星空を見上げる。花じゃなくて、チョコが主流なんだけどな。いろんな文化があるし、遠い遠い場所に伝わるまでに少しずつ変わっていったのだろう。

『素敵な花を、ありがとう。とても嬉しいよ。アイラブ、ユウ』

僕が端末に打ち込んだ文章は、やはり少しずつ知らない言語に変換されて、すうっと空に飛んでいった。

ありがとう。
いつもメッセージを送ってくれて。
大好きだよ。

顔も知らない、住んでいる星も知らない、小さな端末で繫がっているだけの、誰かさん。



(410字)




※フィクションです。
たらはかに(田原にか)様の企画『毎週ショートショートnote』に参加いたしました。SFは苦手分野。いつかこんな時代が来る…かも。





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