ヒプマイについてダラダラ語るだけのnote

身内のSlackでダラダラとヒプマイ語りしてたら4000字くらいになってたのでそのままnoteに投げます。
私自身めちゃくちゃ熱心なヒプマイオタクというわけではないのですが、楽曲群を聴く中でかなりの発見と感動があったので、それをつらつらと綴っている次第です。映像とかサンプリングとか韻とかの話をしてます。
以下本編

ヒプマイって映像を作る上で素材がめちゃくちゃ少ないから必然的に立ち絵と文字をうまく組み合わさてやらないきゃいけないんだけど、その制約の中でカッコいい映像作ってる例が多くて感心する。

出だしから最高だったのはこれ。

全員分の映像が同じフォーマットの下で構成されてるんだけど(8小節目で顔のカットインが入るとか)、そのフォーマット中でキャラの個性が出ててサイコーという。モーションの引き出しも多くて飽きない。
あと良かったのはこれですね。

こっちはかなりシンプルなテキストアニメーションなんだけと、グラフィックとモーションが丁寧で感動した。
特にサビいいですよね。かっこいい。

『Break the wall』は西寺郷太のトラックがサイコーですね……そういえば西寺郷太率いるNONA REEVESは去年RHYMESTERとコラボしてラップ曲出してましたね。


パラッパラッパーの主題歌もNONA REEVESだったしラッパー以外の中ではHIPHOP文脈と近いアーティストかも。
『Break the wall』のリリックをやってる好良瓶太郎は山田一郎役の声優・木村昴の作詞名義なんだけれど、リリックを見ると木村昴のHIPHOP愛がかなり滲み出てるんですね。
例えばさっきのBreak the wallの動画の0:58、HOOK(サビ)の直前に「背を向けたらカスがのさばるから」って歌詞があるんですけれど、これは日本のHIPHOPクルーRHYMESTERの名曲『スタイルウォーズ』のリリックをサンプリングしている。


↑の1:00〜「黙ったまんまじゃカスがのさばるから
同じくHOOKの直前に似たフレーズが使われていますね。
たぶん木村昴RHYMESTERのことめちゃくちゃ好きで、これ以外にもRHYMESTER曲のサンプリングが見られる。
例えば、『IKEBUKURO WEST GATE PARK』の3:20あたり。

見てるよ君が生き証人」というリリックは、おそらくRHYMESTER『人間交差点』の「見逃すなキミが生き証人」というリリックを意識している。

↑の0:30〜あたりですね。
というわけで、ヒプマイというコンテンツはHIPHOP文化へのリスペクトの上に成り立っていて、これはめちゃくちゃ偉いし、HIPHOPの大御所が楽曲提供に参加してくれる理由にもなっていると思う。

大御所の参加という話ならCreepy Nutsがリリックとビートを手がけたこれは欠かせない。ここでもサンプリングの技法は使われている。
天谷奴零のバース
「炎天下すら凍らす ゲレンデすら溶かす」は暑さ/寒さの対比を押韻でまとめていてめちゃくちゃ綺麗なんだけれど、その後「手練手管の数」は、Creepy Nutsの楽曲『手練手管』をセルフサンプリングする形になっている。「ゲレンデすら溶かす(EE_EUAOAU)」と「手練手管の数(EE_EUAOAU)」は母音が完全一致してて本当に美しい。

ついでにこの曲の押韻についてもう少ししゃべると、フルバージョンの最後、躑躅森盧笙のバースが押韻的に本当にすごい!
基本は簓と盧笙の掛け合いで構成されてるのだけど、ラストスパートでの畳み掛けに注目。
チョーク、スリッパ(学校にあるもの)」→「チョークスリーパー(子音完全一致!)」→「降伏しない(チョークスリーパーに関して)」→「往復ビンタ(しつけとして)」→「教育し直す恐怖の一夜(しつけ/教育文脈)」→「(人間以下)動物未満」→「トップブリーダー(教育&動物未満の縁語)」

と、「OUUIA(オウウイア)」を軸にした押韻で最後まで畳み掛けている。しかも文脈を丁寧に拾いながら!これは超絶技巧です。R-指定の言葉遊びの粋が惜しみ無く使われている。
もともとHIPHOP的に、大阪は遊び心のある韻を得意とするというイメージが強いのでなおさらこの曲には痺れた。簓のソロ曲は大阪のレジェンド「韻踏合組合」のHIDADDYが手がけてるのでこちらもぜひ。遊び心のある韻満載。

Creepy NutsリスナーやR-指定ファンはすぐに気づくんですが、『あゝオオサカdreamin' night』の簓の歌い方や緩急の付け方はめちゃくちゃR指定のフロウを想起させる。おそらく声優の方が意識的に研究されたのだと思います。こういうさりげないリスペクトも嬉しいところ。

Creepy NutsのR-指定がラップを知ったきっかけがSOUL'd OUTってHIPHOPグループなんですが、そのリーダーだったDiggy-MO'がナゴヤに提供した曲なんかはもう完全にDiggy-MO'全開の曲でしたね。笑っちゃう。声優が楽曲提供者のスタイルを徹底的に踏襲するという意味ではこれがいちばんすごい。

DiggyのはHIPHOPと言いつつも普通のラッパーのスタイルとは完全に一線を画しているので、『そうぎゃらんBAM』と下の『COZMIC TRAVEL』なんか聴き比べてみればなんかいろいろ納得していただけると思います。無二すぎる。

韻の話をするならやはりこの曲を挙げぬわけにはいくまい。

SF的世界観を展開しつつもタイトに、かつ長く丁寧な押韻を終始徹底している衝撃的な曲。ホントに衝撃ですよ。このポエジーな感じを保ちつつハードライムを連発する強靭な語彙力。あっぱれとしか言いようがない。
終始すごいんですが、1:54辺がわかりやすくすごいかも。
「プリーストた(IUOA)ちが描くジグソーパ(IUOA)ズル
理由もな(IUOA)く貧富の差(IUOA)で死ぬような(IUOA)
ヒプノタ(IUOA)イズされたイストワ(IUOA)ール」
このタイトさ!!!短い歌詞の中に「IUOA(イウオア)」という母音の連なりが7回も登場する。しかもしっかり世界観を守ったリリシズム。
このリリックを担当してるのは生楽器HIPHOPクルー「AFRO PARKER」のラッパー弥之助で、ラッパーとしての活動でもタイトなライムを展開している。

0:25〜から
片手間(AAEA)と言われちゃ(IAEA)仕方ねぇが(IAAEA)今タラレバ(IAAAEA)を話せば(AAEA)下らねぇな(AAEA)」
AAEA/IAEAを軸とした韻の連打が気持ちいい。このスタイルがstellaでも活かされているわけです。
そしてそんな弥之助のもう一つの提供曲が「チグリジア」。


0:51〜
逆さの(AAAO)頭と(AAAO
)高さを(AAAO)競って絡まろう(AAAO)とする朝顔(AAAO)」
ここでもタイトなライムの連打が展開されている。最高。
さっき貼ったAFRO PARKERの「Get on the mic」で「月火水木金はサラリーマンそんなラッパーがなんか悪ィか」と歌ってるように、弥之助はラッパーにして現役のサラリーマン。だからこそ観音坂独歩のリアルな心情を描けてるわけですね!!!!!
この、詩的な文体で韻を踏みまくるという一般に想像される「HIPHOP」から若干距離のあるスタイルは、間違いなく志人の影響下にあると言ってよい。

これとか聴けば一発でそれとわかる。
0:58〜
あらましき災いにやかましい阿唐獅子
風上に抗いし山並みに逆らいては花は散り
ひたすら「AAAII」で押韻している。『stella』や『チグリジア』はこの系譜を引き継いだ楽曲なわけです。


というわけで、ヒプノシスマイクはHIPHOP文化のうわべだけトレースした二次元コンテンツというわけではなく、HIPHOPの歴史に大きなリスペクトを払いその上で新しい表現を模索してるコンテンツなわけですね!!サイコー!!!!!

おわりです。

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