6.10 ミルクキャラメルの日・時の記念日
甘くて四角いミルクキャラメルが熱いコンクリートの地面に落ちた
落とし主はそのまま立ち去ってしまって置き去りのミルクキャラメルは夏日の熱に溶かされて
角が溶けて丸くなる
近づけばむせ返るほど甘く濃厚な匂いが
固体が液体になるまでの時間で透明な観察者は秘密の呪文を唱えた
五度唱えれば時は止まる
ミルクキャラメルだけが溶け続けて
全て液体になって流れた頃に
また時が動き出したけれど
あたりに甘いミルクキャラメルの香りが漂い続けていたことも
一瞬前までその液体が固体であったことも
ミルクキャラメル自身と観察者しか知らない
人はみんなビデオテープの一時停止の間のことを知るすべがない
それと同じことだ
溶けたミルクキャラメルは熱いコンクリートの上で黒い染みになって消えた
観察者は瞬きをするとどこかへ消えた
人々が行き交う町の中の夏の間の出来事だった
6.10 時の記念日、ミルクキャラメルの日
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