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3.19 カメラ発明記念日

シャッターを切るそれまでの間に
君がとびきりステキな顔で笑った
ぼくは
どうしてもう少し待ってくれないのと
君を責めたけど
君はただ
あははとおどけて笑ってみせた

春のはじまりは冬の終わり
乾いたシーツが風の匂い

ステキな顔はいつも
僕のシャッターのコンマ数秒前で
僕のカメラに収まらない
君の笑顔に恋をしている

恥ずかしいからもうやめてと
手をかざす君をなだめて
僕は何度でも君にカメラを向ける
ずっとずっと取っておきたい
今僕だけの君がいた証拠を

そんなことを言うと
いつだって君は不機嫌になるけど
ステキであればステキであるほどに
なんでこんな僕とと思って
オートマティックモードで
君が消える心の準備を始めるんだ

オーロラ色の光の粒と
甘いキャンディ
シャッター音で弾けて
僕をお腹いっぱいにさせる

ステキな笑顔をこのフィルムに
焼きつけて離したくない
一瞬でも僕のものだった君を
一番の笑顔を
僕はひとりで墓まで持っていくつもりだ

でもステキな顔はいつも
僕のシャッターのコンマ数秒前
僕のカメラには収まらない
君の笑顔にまた今日も
恋をしている

ただ
恋をしている

3.19 カメラ発明記念日
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