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6.15 暑中見舞いの日

暑い夏が来る前に

僕は彼女に手紙を書くことにした

郵便局の前を通ったら涼しげなのぼり旗が

ひらひらとはためいていて僕を呼んだので

暑中見舞いのハガキを売っていると

眩しくもない日差しのなかでひらひらと

手招くように僕を呼んだので

三枚セットの一枚

青い海とひまわりの組み合わせは

夏休みの田舎町の風景を思い出した

お久しぶりです

元気ですか

夏休みになったらまた遊びに行くね

今年もばあちゃんの作ったトウモロコシ

楽しみにしています

迷ったわりには別に普通の文章で

孫から祖母に送る手紙の定型文みたいだった

曲がらぬように気を使いながら

宛名を書き込む

ばあちゃんの名前を書くことなんて

人生で何回もあることじゃないから

ちょっと恥ずかしいしうまく書けなかった

僕はアイスを買いに行くついでに

その暑中見舞いを出しに行って

赤いポストにコトンと落ちたそれは

遅くても明後日にはあの田舎町に着くのだろう

その旅路を思いながら

僕は気恥ずかしくてすぐにその場を後にした

それでも何か少しどこか

ほんとに申し訳ないのだけれど

少しだけ良いことをしたような気持ちで

勝手に得意げな足音が梅雨空の下に響いた

6.15 暑中見舞いの日

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