見出し画像

真っ黒

日本人の多くが髪を染めることを楽しんでるイメージがある。

中学時代とか,高校時代もなんとなくあった。「黒髪ダサい」みたいな感じ。

読者モデルさんの美容室代内訳にはカラーリングって大抵書かれていた。

大学生のステータスは派手な金髪かと思うほど,大学生の多くが鮮やかな髪の毛で町を闊歩していた。

誇り高く黒髪を維持してる人は少なかった。

おしゃれになりたい人ほど,染める。黒髪に別れを告げる。


私は七五三のときに髪を巻いてもらって以来,髪を化学的や物理的にいじったことがあんまり無かった。私の地毛は太く緩やかな波を打っているので,結ぶ,留めるだけではまとまらない。でもゴムとピンの力業で飛び跳ねる毛を押さえ込んで(収まりきってなんかいなかった)学校に行ってた。セットしたら相当時間がかかりそうだからやめといた。

そうやって地毛を大切にしていた(?)から,そう簡単に「気分的に,染めた~い」なんて言えなかった。砦は壊したら最後。


しかし大学生活を遊びながら,「髪を染めて遊んでられるのなんて大学生くらいじゃね?」と,今の時間の貴重さに気付いた。私はちょっとずつ,無垢な毛を自分の思い通りにいじることを計画し始めた。

そう。まだパーマをあてたことがなく,色もつけたことのない,生まれてからずっと純粋さを維持してきたこの髪に,垢をつけようと。

初めてやったのはストレートパーマだった。当時,何か変えて親にいろいろ言われることを一番気にしていた。「ストレートパーマなら,縮毛矯正ほど強くはない」と聞いていたので,かけてもバレないかもしれないと思ってかけた。親には特に何も言われなかった。

次に手を出したのは縮毛矯正だった。ストレートパーマから半年後くらい。縮毛矯正は,ストレートパーマのように薬剤で髪を伸ばした後,熱でさらにしっかりとまっすぐにする,らしい。熱を入れられるのが怖かった。

それ以降はまた何もしていなかったのだが,社会人という壁を目の前に,一度染めてみたい気持ちが大きくなってきた。

卒論が終わって,髪を切ろうと飛び込んだとある美容室で,美容師さんが「私もかなりの癖っ毛だけど,カラーリングしてるから軽く見えるんですよ」と仰った。確かにそうかも!「この方は,かなり癖っ毛のことや私の気持ちを分かっている!」と思った私は,美容師さんに一度お任せしてみようと初めてカラーをすることにした。

黒にも見える茶色。

ついに,砦を壊した。

見た目は,光を通さなければ黒髪。人前では陰側を歩くようにした。一番仲の良かった友人が「あれ?染めた?!」と言ってくれた。気付いてくれた。恥ずかしくて,嬉しかった。

あれから1年。まだ,若干毛先にその色が残っている。






p.s.

山内さんはいまだにトトロを見るという砦を壊していない。もったいないからそのまま行ってくれと思う一方,壊したときの身軽さを体験して欲しい気もする。でもやっぱり,山内さんには周りと同じことをして欲しくないなあとも思ってしまう。それが守り続けてきた個性みたいな気もしちゃう。自分はひとつ,守ってきたものをブレイクしてしまった。勿論視野は広がった。でも,周りと違う個性をなくしてしまうことが少し寂しい気もする。(笑)

いいことありますように!